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――先端・基盤共同研究機構を設けた経緯は。 内田氏: 企業をイコールパートナー(Equal Partner:対等な関係)として本格的な共同研究を実施するために,工学研究科内に先端・基盤共同研究機構を設けました。これまでの教授・研究室単位での共同研究は,大学の教員と1企業の一対一の共同研究でした。相手企業の希望を聞きながらも,やはりシーズ志向のために教員がリードするものになりがちでした。これに対して,先端・基盤共同研究機構の枠内に設ける企業の共同研究拠点は企業にニーズに応え,共同研究の成果を確実に上げるように工夫するものです。このため,企業ニーズを基に共同研究テーマを定め,研究期間を3年間から5年間と比較的長期間継続して推進します。また,企業が新規事業起こしを目指す場合には,工学研究科が最適な大学教員の技術シーズをまず発掘し,独創的な新規の共同研究を企画して展開することも可能です。企業の基盤研究の一部を大学が担うとの考え方です。 大学のキャンパス内に企業との共同研究拠点を設ける利点は,大学と企業の担当者同士が日常的に情報交換できるため,大学の技術シーズと企業の技術ニーズを高度にマッチングさせることが可能になるからです。こうした大学教員と企業の研究者の人材交流・情報交換によって企業の基盤研究を拡充させることが可能と考えています。同時に,企業の社内教育・人材教育向けに大学の機能を活用することもできると思います。共同研究期間が3年〜5年と比較的長く,大学側はポスドク研究者などの専任の研究者を雇ったり,研究設備の提供するなどの協力を実施します。簡単にいえば,各企業の研究所の「出島」を大学キャンパス内に設けてもらうとの考え方です。 このため,従来の寄附講座などを基にした共同研究費用は数100万円程度でしたが,今回の大型共同研究の費用は1桁上の数1,000万円程度をお願いしています。その分,大学側はしっかり研究成果を出すように務めます。そして,大学と企業は対等のイコールパートナーであることを強く意識し,研究成果を上げるように精力的に努力します。また,必要ならば複数の教員がプロジェクトチームを組んで,当該企業の技術ニーズに応える大型の共同研究も実施します。 ――既に5社の企業と基盤共同研究室・センターが設けているそうですが。 内田氏: 既に設けられた企業の拠点は,住友金属イノベーションラボ(住友金属工業,平成20年9月4日〜23年3月31日),JFEスチールコラボレーション(JFEスチール,平成20年9月4日〜23年3月31日),光学機能性素子研究室(リンテック,平成20年10月1日〜23年9月30日),新日鉄オープンイノベション研究室(新日本製鉄,平成20年10月1日〜23年9月30日)の4拠点に,企業名をまだ公表していない1拠点が設置されています。さらに,もう1社とも協議中です。企業のニーズに応えるイコールパートナーとしての共同研究の姿勢を評価していただいた結果です。 ――さらに,新しい制度も企画中とのことですが。 内田氏: 最近の世界同時不況の影響で,地域活性化を担うことが大学に強く求められています。このため,大学院の通称,電子情報システム・応用物理系専攻(電気・通信工学専攻,電子工学専攻など)では,仮称「情報知能システム研究センター」というアプリケーション創出プラットフォームの設置を議論しています。 我々の周囲の教員たちの研究テーマを考えると,これからの電機業界で重要になるデジタル信号処理(DPS)を共通基盤にする横断型研究開発のプロジェクトチームが組めることが分かったからです。 具体的には「組み込みシステム」というハードウエアとソフトウエアの共通基盤の上に,それぞれ「組み込み情報セキュリティー」「生体・医療」「ワイヤレスシステム」「モビリティー・ロボティクス」などの9グループを編成する企画を立てています。すべての分野の教員がそろっていることが,東北大大学院の電子情報システム・応用物理系専攻の強みです。 研究開発を重視する企業とは新機能開発を共同研究する一方,宮城県・仙台市の地元企業には事業化支援を行います。研究開発を重視する企業との研究開発では新技術を盛り込んだ試作や実装が必要になります。この試作や実装を地元の中堅・中小企業に担当してもらうことで,地域の活性化を進めます。地元企業の技術力を高め,これからの新事業に参入する機会を提供します。こうしたことを実行することが本当の産学官連携態勢と考えています。 ――東北大大学院の電気系グローバルCOEとの連携は。 内田氏: 平成19年度〜23年度まで運営する電気系グローバルCOE(正式には「情報エレクトロニクスシステム教育研究拠点」)が設けたNT・IT融合教育研究センターとは当然,密接に連携します。同センター内に設けた若手研究者を育成する「v-QIスクール」と連携するなどのやり方で,インターンシップなどを拡充していきたいと考えています。当然,研究面では強く連携します。 最近は独創的な研究成果を上げても,実際に実用化されないと。その真価が分かりません。大学と企業が互いにイコールパートナーとして連携することが世界最高水準の研究(大学院)と事業化(企業)を実現します。 (丸山正明=日経BPプロデューサー)
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