 |



タイ王国・中央知的財産国際貿易裁判所の現役判事が講演
早稲田大学知的財産法研究センターが東アジアの知財制度を調査・報告
[2005/10/14]
タイ王国・中央知的財産国際貿易裁判所長官のSuvicha Nakvachara氏など4名の現役判事が,早稲田大学知的財産法研究センター(RCLIP)が主催した「第1回アジアセミナー/東アジアにおける産業財産権関連紛争の裁判上の処理(タイ王国編)」(2005年10月12日)において,タイにおける知的財産権制度の全容と権利保護のエンフォースメント(執行)を解説し,関連判例を紹介した。タイは日本にとってアジア最大の直接投資先(2004年時点)であり,この9月には経済連携協定(EPA)の主要点に合意した。海外進出を進める日本企業にとっては,「ポスト中国」の有力候補として注目を集めている。タイは自動車を中心とする機械産業などが急成長しており,知財権の重要性が高まっている。近年は,貿易関連の知的財産権の側面に関する協定(TRIPs協定)に基づいた関係各法の整備,1997年の中央知的財産国際貿易裁判所の設立などに注力してきた。
タイにおける知財法制と訴訟の動向
タイにおける知財関連の法律は,表1の通り。意匠権に関する独立した法がなく,特許法が工業意匠に関する規定を包含している。日本の実用新案権に類似した制度して,簡易な発明には特許法に基づく「小特許」が認められている。
タイ国内における知財関連の訴訟において,中央知的財産国際貿易裁判所は民事と刑事の両方の事件に対する権限を持つ。ただし,国際貿易に関しては民事のみを管轄する。先述の法律に加え,技術移転契約,権利実施許諾契約など関する紛争処理を管轄する。裁判では,テレビによる法廷外での証人尋問,英語表記による証拠書類の提出を認めている。
タイにおける知財訴訟の特徴について,中央知的財産国際貿易裁判所・前長官で現在は控訴裁判所判事であるPhattarasak Vannasaeng氏は,(1)主に商標や著作権の侵害による小売商などが告発される場合が主であること,(2)民事による訴訟が少なく刑事訴訟が多いこと,を挙げ,(2)については是正する必要性を指摘した。
タイ政府は「情報技術(IT)の進展や経済のグローバル化を踏まえ,知財法制を恒常的に見直す方向性である」(中央知的財産国際貿易裁判所判事のRungsit Tankarnjananuruk氏)。直近では著作権法の改正を進めており,2005年10月の時点で内閣が改正法案を検討している。同裁判所判事のSripibool Visit氏は,(a)侵害時に徴収した罰金の半額を権利者に支払う現行制度を廃止すること,(b)著作権使用料の徴収団体設置を認可すること,(c)訴訟時の和解に関する取り扱いの変更,(d)デジタル化に対応した著作権保護の強化,(e)音楽著作権の保護に関する特別法の設置,を主な改正点として示した。
表1:タイ王国の知的財産権関連法
・著作権法
・商標法
・特許法
・営業秘密法
・地理的表示保護法
|
・植物品種保護法
・半導体集積回路配置図保護法
・タイ式医療に関する知恵の保護
・奨励法
・CD製造保護法
|
出所:第1回東アジアセミナーで配布された資料に基づき,
日経BP知財Awareness編集部が作成。 |
2006年1月に第2回セミナー《中国編》の開催を予定
RCLIPは,東アジア各国における知財権制度に関する研究活動として,知財訴訟に関する重要判例を収録したデータベースの構築を2003年から進めてきた(関連記事)。データベース化が完了したことを受け,「今後は第2段階として各国の司法制度,裁判制度,訴訟に関する問題を検討していく」(RCLIP所長で早稲田大学大学院・法学研究科教授の高林龍氏)。この活動は特許庁の研究事業(2005年度)に採択されており,RCLIPは研究成果についてセミナーの開催や報告書の発行を通じた公表を計画している。
次回のセミナーは,中国の知財権制度を取り上げ,2006年1月(予定)に開催される。
|
 |

Suvicha Nakvachara氏

Phattarasak Vannasaeng氏

Rungsit Tankarnjananuruk氏

Sripibool Visit氏 |
(河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

|
 |





<過去の連載>

|