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米国CAFC,Seagate判決, 被告保護の視点で特許の故意侵害基準を厳格化 今後の日本企業の米国での活動に有利な方向に [2007/09/14]
特許侵害訴訟に関する米国司法の判断がここにきて被告に対して有利になっている。2007年4月の「KSR裁判」では米国最高裁が,特許の要件の1つである非自明性の判断基準を厳しく運用すべきであるとの判断を示した(関連記事)。これは自明な特許を排除すると同時に既存の特許の効力を弱める結果になる。これに続き,2007年8月20日,連邦巡回控訴裁判所(CAFC)が「Seagate裁判」において特許権の故意侵害に関し,侵害立証責任を被告から原告である特許権者に移行させるなど,認定要件を厳格化する判断を示した(In re Seagate Technology, LLC Fed. Cir. Aug. 20, 2007)。これらの判決により,米国での知財侵害訴訟において被告になることが多かった日本企業は,米国事業をより推進しやすくなる可能性が高い。 以下では,今回のSeagate裁判におけるCAFCによる変更点の概要と今回のCAFCの判断に沿った訴訟対策を実施する際の留意点を示す。これらは,日本企業の米国知財コンサルタントとして多くの鑑定業務を行ってきたDavid G. Posz氏(特許弁護士,Posz Law Group代表パートナ)と,所属スタッフで米国知財実務の実践と研究を行っている吉田 哲氏の分析結果である。 故意侵害の判断基準の変更点 CAFCは,これまでの故意侵害の認定基準を低すぎたと判断し,その認定基準を厳格化する方向に変更しました。その趣旨は,常に故意侵害と主張される被告を保護する点(特許権者の濫用を防止)にあります。故意侵害認定の主要な変更は次の点となります。 ・立証責任は特許権者側へ ・認定基準を高くすることで,故意侵害の認定を難しく ・鑑定(Opinion)が存在しなくても,直ちに故意侵害とは判断しない 【Seagate判決による変更点】
故意侵害を回避するための対策例(Possible Safeguards) 今後,故意侵害の判断は,特許侵害者の行為が「無謀(Reckless)」であったか否かとなります。特許侵害者が理性的(Reasonable Company),もしくは,無謀や非難されるべき対象でないと判断した場合,裁判所は,たとえ鑑定を提出しなくても特許侵害ではあるが故意侵害ではないという判決をすると思われます。そして,そのような判決の割合は増加すると考えられます。ただし,他社特許に対して何の検討もしていないようでは,無謀であると判断されかねません。以下は,故意侵害を回避するための対策例です。
今後の留意事項 以上の対策は,被告(侵害者側)の「無謀さ」を否定する上で効果ある対策例といえます。しかし,常に十分な証拠になると断言することはできません。故意侵害の認定を回避するための対策については,技術分野,個々の案件の事情(特に,特許発明の自社製品との類似性)を考慮して考える必要があるといえます。今回,CAFCは故意侵害の認定基準を変更しましたが,その詳細な判断基準,運用指針まで定めたわけではありません。この点は,今後の判決により明らかになっていくものと思われます。 特許訴訟前に作成される鑑定は,ビジネス戦略の立案,ライセンス交渉での資料,他社特許との差別化を提案する場面などで,今でも重要な役割を担います。決して,鑑定が不要になったわけではありません。 今回のSeagate判決は,故意侵害の認定基準を変更したものの,そのガイドラインまで明確にしたわけではありません。しかしながら,確実といえるポイントは,CAFCは,故意侵害を主張する特許権者に対して,より高いハードルを課し,故意の認定要件について旧来の基準に移行しているということです。 吉田メモ1:日本企業の米国での訴訟提起について 日本企業の米国での訴訟提起について近年の日本企業の知財紛争の中心は米国企業からアジア企業にシフトしてきたとの報告があります(関連資料1)。そして,デジタル家電業界では日本企業が韓国・台湾企業などを米国で提訴するシーンが急増したともいわています(関連資料2)。その理由としては,米国が世界で最大のマーケットであり,また特許侵害に対して日本よりも大きな損害額が認定された判決が蓄積されていることなどが挙げられます。それ以外にも,米国民事訴訟手続におけるディスカバリー制度,今回の対象となった故意侵害による3倍賠償なども考慮事項と思われます。特に,3倍賠償の可能性は特許権者にとって有利な交渉材料といわれてきました。今回の判決は,知財訴訟を米国で進めるデジタル家電業界からも注目されるものと思われます。 吉田メモ2:鑑定の必要性について 米国特許弁護士が作成した鑑定の役割は今後も重要であることに疑いはありません。しかし,社内で検討した他社特許について,すべてが訴訟になるわけではありません。たとえ,訴訟になっても非侵害であれば故意侵害に対する対策(そのための鑑定)は不要といえます。これまでのほとんどの鑑定は実際に裁判で活用されるよりもむしろ保険として活用されていたと思います。今後の故意侵害の認定基準を見極めることで鑑定の必要性がより明確になるものと思われます。今後の米国知財業務の一つのポイントといえるのではないでしょうか。 今後もCAFC判決をモニターしてまいります。上記内容についてご質問があれば,いつでもご相談ください。お待ち申し上げます。
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