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ALAの新機能を発見し事業へと育成 コスモ石油は,1980年代後半から新規事業を模索しており,その中で5-アミノレブリン酸(5-AminoLevulinic Acid:ALA)注1を用いた植物の除草剤製造・販売を新事業の候補の1つとし研究を進めていた。同社の研究開発活動を担当する研究所では,当初除草剤として研究を進めていたALAに,量を減らして植物に投与すると逆に生長を促進する作用があることを発見した。研究所はこの作用に着目し,植物生長促進剤としての事業の可能性を見出した。同社の知的財産部門である研究開発部知的財産グループは,研究所で検討した用途や形態に基づき,生長促進剤として特許出願した。「ALAを事業化する前に特許化したことによって特許権の存続期間中,他社の参入を阻止できる事業領域を作ることができた」と同グループ長の岩井孝氏は当時を振り返る。 ALA量産技術に関する多数の特許権を取得 同社は,ALAを含有した生長促進剤の開発と並行して,生産コストを低く抑えることができるALAの新しい量産技術の開発を進めた。その結果,光合成細菌が持つALAの合成能をさらに高める技術を開発し,発酵法によるALAの量産技術を確立した。この量産技術や確立過程で見出したALA合成酵素遺伝子,周辺技術,改良技術などに関する多くの特許を1991年から出願しており,1998年に最初の特許が登録となった。「事業を進めるにあたりこの量産技術は極めて重要なものであった。基盤技術については,可能な限り複数の権利を得るために活動している」(岩井氏)。 ALA量産技術の改良や応用分野を開拓 1990年代に入ると海外でもALAのガンの診断などへの応用研究が盛んになってきた。同社では,1990年代後半にALAに育毛効果があることを発見した。 同社は2004年,ALAの用途開発の第1歩として,宇都宮大学や施設園芸メーカーである誠和と共同でALAを含有する液体の高機能性肥料「ペンタキープ」を開発した。同大学の研究者は,ALAが植物に与える影響について研究していた。産学連携を進めるにあたり,「当社が学会発表をする際に,同大学の研究者にALAの作用や機能の裏づけをいただいた」(岩井氏)。 一方で同社は,ALAのさらに効率のよい量産技術を検討していた。その1つが,協和発酵工業との共同研究開発である。協和発酵は高度な遺伝子組み換え技術を持っており,工業規模での発酵生産に関して世界有数の技術を保有している。「当社が特許権を保有しているALAの合成酵素の遺伝子と組み合わせることで新たな技術が生まれるのではないかという発想だった」(岩井氏)。この共同開発から生まれた形質転換体注2とALAの量産技術を2004年5月に協和発酵工業と共同で特許出願した。 同社は2004年7月にALAの応用分野を開拓し,事業を推進するためのALA事業センターを設立した。「われわれは同センターの設立前から参入障壁の有無や特許マップなど,事業に影響すると予想される他社知財情報を提供した」(岩井氏)。この業務は事業の進ちょくに合わせて定期的に行っている。同社が研究を続けるガンの診断薬などの医薬品原材料,飼料用アミノ酸,サプリメントなど,ALAの応用分野は多岐に渡る。これらに関しては,単独,もしくは産学連携などで研究開発を進めながら,事業化を検討している段階である。 農業事業を海外展開するために海外の大学と共同研究を実施 同社は現在,ALA事業を海外展開するために活動している。その例として(1)中東欧諸国での農業大学との農業生産試験(2)中国やアラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE)の大学との沙漠地域の緑化に関する共同研究がある。 (1)に関してはポズナニ農業大学(ポーランド),ニトラ農業大学(スロバキア),ハンガリー土壌研究所をはじめとした多くの大学や研究機関と評価試験を行い,高い実用性能と経済性を確認した。 (2)に関しては,西北農林科技大学との共同研究で,耐塩性や耐アルカリ性の特性を持つALAを現地の沙漠化対策植物に対して与えたところ,通常に比べて高い苗木の育成効果を確認した。また,UAE大学との共同研究では,酷暑,塩害などの極めて厳しい生活環境においても植物の生育促進効果を確認した。 知財担当者が発明者と連携し知財の拡充をコーディネート 同グループは研究開発活動を管理する研究開発部に属している。同グループと研究所の知財担当を合わせても,他業種と比較し少人数の人員構成となっている。弁理士資格を所有している者は現時点ではいないが,発明者と連携しながら事業に有効な特許となるように,特許明細書案をまとめる。担当者の能力は非常に高いが,さらに特許事務所などの外部機関も活用し効率的に業務を推進している。 研究所や事業部門に対しては,研究開発や事業運営に際して知財に関する問題を未然に防ぐために,他社知財情報を提供し見解を提示している。「障壁が見つかった場合,ライセンスやクロス・ライセンス,知財の買い取り交渉といった選択肢を提案するなど,研究開発や事業の継続に関する判断材料を提供している」(岩井氏)。 同社は,ALA事業を始めとする研究開発業務の拡大に応じて新規出願・権利化対象特許の増加が想定している。「現状の業務の質を維持していくためには,要員の増強も視野に入れて検討していく必要があると考えている。」(岩井氏)。
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