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今まではどちらかと言えば“科学技術振興”,“オープン・イノベーション”,“大学の社会貢献”といった文脈の中で捉えられることが多かった産学連携であるが,大学の重要な経営課題という認識が徐々に強くなってきた。背景には将来に対する懸念がある。大学の産学連携に対する姿勢に大きな変化が生まれている。 (技術&事業インキュベーションフォーラム小泉孝朗 日経BP知財Awareness品田 茂)
産学連携は大学経営上の重要課題 表1は,平成20(2008)年9月11日に文部科学省が発表した,平成19(2007)年度の全86の国立大学法人および4大学共同利用機関法人の財務データを合算した損益計算書である。
一般的に大学は,教育や研究,附属病院での診療といった活動に関する経費の約半分を,学費や附属病院からの収益といった“自己収入”で賄う。残りは,国が支給する補助金である“運営費交付金”で賄っている。この運営費交付金は,政府が定める“骨太の方針”によって,毎年定率で逓減している。「運営費交付金が減る,教職員が減る,研究の質が落ちる,学生が集まらない,という負の連鎖が怖い」と多くの大学関係者はいう(グラフ1)。実際,2008年には私立大学の半数弱が定員を割った。国公立大学でも,2002年10月以降,19件の大学が統合している。現在,統合を検討している国公立大学も多い。大学の淘汰は確実に進んでいる。
研究の質を維持・向上させることは大学にとって最重要課題の1つである。“受託研究費等”や“寄付金”などの収益を,産学連携活動で得た収入を研究費や人件費などに充当する。大学は研究者の定員が決まっており,大学の裁量で増員することはできないが,産学連携によって得た収入で研究者を“任期付き”で雇用することはできる。企業などからの受託研究収入は,大学経営全体の中でまだ数%の位置付けであるが,昨年度に比べて約15%近く増えている。「見かけ以上に重要性は高い」(大学関係者)のだ。 研究の質を維持・向上させることは大学にとって最重要課題の1つである。“受託研究費等”や“寄付金”などの収益を,産学連携活動で得た収入を研究費や人件費などに充当する。大学は研究者の定員が決まっており,大学の裁量で増員することはできないが,産学連携によって得た収入で研究者を“任期付き”で雇用することはできる。企業などからの受託研究収入は,大学経営全体の中でまだ数%の位置付けであるが,昨年度に比べて約15%近く増えている。「見かけ以上に重要性は高い」(大学関係者)のだ。 こうした理由もあって,大学側の産学連携への取組はより本格化してきている。知的財産マネジメント体制や利益相反ポリシー,職務発明規程といった各種のルールや運用体制が整備されてきたことも背景にある(参考記事)。また,以前は「産・学ともに,産学連携のルールが横並び,様子見という感じがあった」(企業の大学関係者)が,大学ごとに,個性や戦略の違いを打ち出し始めている。例えば,産学連携の妨げの一因として話題になった“不実施補償”問題であるが,現在では,不実施補償を求めない大学もある。連携戦略についても,個性や特徴が出始めている。キーワードは“海外”“地域深耕(振興)”“融合”である。 国際化する産学連携 第1は“海外”である。大規模大学などが,独法化直後の2004年頃から中国などに現地事務所を設置してきていたが,それが今,海外企業や大学と包括提携契約を結び,共同研究の開始といった形で実を結びつつある。全ライセンス収入の約37%が海外(企業・団体など)から得ているとする奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)のような大学も出始めた。NAIST知的財産本部長の久保浩三氏は「海外との産学連携は,日本では入手できない試料などを扱うこともできるなど,参加する研究者や学生にとって非常によい刺激になる」と海外連携のメリットを指摘する。 収支にも影響がある。主に欧米の大学との連携を長年担当してきた日本の企業関係者は,「海外の大学との産学連携の期待の1つは,その地域市場や地域有力企業の先進技術動向についての調査目的である。結果、海外大学と契約する際の費用対効果の感度が国内に比べて甘くなる傾向があった。その結果,国内と海外とで契約金額で1桁以上違うことが多い」と語る。日本には,多くの基幹産業に有力企業が存在している。アジア諸国などから見てを始め,フロントランナーである日本の技術動向を知りたい国は多い。もちろん,海外との連携には,語学力だけでなく相手国の文化や商習慣などの熟知,交渉力などが要求される。当事者である研究者以外にも,それを支える知的財産本部やTLO,職員など大学のスタッフ部門なども含めた全体に大きな負荷が掛かる。レベルアップのための職員研修などを積極化し,他大学に先駆けて差別化を図る大学が出てきている(参考記事)。 地域連携は地方大学の重要な使命の1つ 第2は“地域深耕(振興)”である。地域を振興する事は特に地方大学の重要な使命の1つである。地域と密接に連携し,地場産業を盛り立てる。例えば,三重県鳥羽市は人口の約2割が離島の住民という特徴を持つ。三重大学教育学部・医学部が共同して鳥羽市と同市の旅行会社と共同で“離島の郷土料理の特徴や栄養価”,“離島をウォーキングした際の消費熱量や生理機能”,の2つのテーマを研究した。この結果から,3者は糖尿病患者とその予備軍を対象にした“島人がもてなす「ウェルネスの旅」”ツアーを作り上げた。ツアーの内容は,教育学部の研究者が参加者に対し糖尿病の運動療法のための歩き方を教示する。参加者はその歩き方を実践しながら島を散策する。離島は高低差が激しく運動に適している。その後,医学部の研究者が栄養管理した郷土料理を食べる。また,医学部,教育学部の研究者によるセミナーを開催する。この共同研究をコーディネートした三重大学産学官連携コーディネータの松井純氏は「地域を活かす,地域に生きる大学をアピールできる」と地域連携の地方大学にとってのメリットを語る。こうした地域の特徴を活かしたり,地場企業との繋がりを重視したりと,地元に密着し,地場を深く耕す「深耕」の動きは今後もさらに活発化する。 文理融合,異分野融合 第3は“融合”である。例えば早稲田大学は,早稲田総研という100%子会社を企業との窓口にして「文理融合・面対応連携」を志向している。1つ1つの技術テーマについて個々の企業と技術連携する“点”対応が原点であるが,その成果を活用して実際に事業化する際には,法制度や諸規制の課題確認など,文系的なアプローチも必要になる。早稲田総研は,「技術をコアにした新しい事業を開発しようとする企業に対し,早稲田大学の知を幅広く“面”で提供するシンクタンク」(同社社長 渡辺純一氏)を標榜する。 一方で,医工連携に代表されるような分野融合はますます盛んである。企業側でも,分野外の先進的な研究成果を探索するニーズは強い(参考記事)。分野を超えた産学連携を促進するための官の支援も始まっている。例えば,独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO 総合技術開発機構)は,2008今年度から,助成している大学や研究機関の若手研究者に対する,「助成技術の異分野への適用可能性調査」の支援を開始した(参考記事)。「大学研究者の研究成果の潜在能力を最大限に引き出し,大きなイノベーションに繋がる,そうした産学連携のキッカケにできれば」と,NEDO研究開発推進部プログラムディレクター佐々木義之氏は言う。 “海外”,“地域深耕(振興)”,“融合”。基本的戦略を選択し,具体的な戦術に落とし込んで,連携開拓を実行する。企業行動に非常に近い“本気”の産学連携が始まった。 |
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