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知財は事業を優位に進めるために存在する
グループ全体の知財戦略を構築する帝人知的財産センター
[2008/09/19]

帝人知的財産センター代表取締役社長 三原秀子氏
帝人知的財産センター
代表取締役社長
三原秀子氏

帝人は,繊維・フィルム・樹脂・医薬医療など幅広いビジネスを展開する企業グループである。同社は成長が見込まれる「自動車・航空機」,「情報・エレクトロニクス」,「ヘルスケア」,「環境・水・エネルギー」,の4分野を注力市場と位置付けており,研究開発活動を活発化させている。帝人知的財産センターは帝人グループの1社であり,グループ全体の知財戦略を策定・実行している。注力市場の事業運営に関して,知的財産センターが果たした役割を見ていく。
(まとめは品田 茂=日経BP知財Awareness編集)




事業を優位に進めるために知財を活用
 帝人は,2003年4月に持株会社化した。これに伴い,各事業部門を事業会社化して7つの事業グループに編成,同時にスタッフ部門も個別管理会社化した。知的財産部門は「帝人知的財産センター」として独立した。
 各事業グループは,それぞれの事業分野に関する技術を研究開発している。これらに加え,持株会社である帝人には「新事業開発グループ」があり,5〜10年先を見越したテーマを研究している。知財センターは,これら8つのグループと連携し,知的財産戦略を策定・実行している。
 知財センターでは各グループに対応させて知財の担当者を配置し,この知財担当者と各グループの研究所担当者などとが一緒になって,定期的に“特許検討会”を開催している。特許検討会では,他者特許の侵害,権利の確保,権利範囲の拡大,などを議論し,自社特許ポートフォリオの充実に努めている。特許検討会以外に,研究開発責任者の下で知財責任者が参加し,マーケティングのニーズ゙を反映しつつ,定期的に開催する“特許委員会/商標委員会”で知財の方針を検討し実行策を確定する。
 さらに重要度が高い技術テーマについては,グループCTO(Chief Technology Officer)の下,帝人の研究戦略,知財戦略,研究人財戦略,技術マーケティング戦略を策定する“グループ技術戦略会議”において,事業戦略・研究戦略と整合する知的財産戦略の点から定期的にレビューして,知財対応の見直しを図っている。これらの活動の結果,2007年の国際特許出願数が,2006年と比べて約1.2倍に増加した。
 知財センター代表取締役社長の三原秀子氏は,センターの活動について「知財で事業を優位に進めることを重視している」とポリシーを語る。知財センターは,研究開発ロードマップの策定段階でも,特許マップなどの情報を提供している。

重点研究・開発分野は優先的に対応
 グループでは重点的に研究開発に取り組む“重点研究・開発分野”を設定している。これは注力市場の4分野に加えて「高熱伝導材料」,「バイオプラスチック」,「高機能電子材料」,「水処理分野」が該当する。知財センターは,当該分野に関しては優先的に対応する。当該分野は,製品化に近いものから基礎研究段階のものまで,さまざまなステージが存在する。製品化が間近な分野で障害を発見した場合,速やかに障害を取り除く必要がある。「スピードを要求される場合は,外部のリソースを活用するなど柔軟に対応し,最善を尽くす」(三原氏)。

総合的に知財を評価
 知財センターでは,グループの担当部署とともに,“知財で事業を優位に運営する”の視点で,定期的にグループの知財を評価している。主な評価項目は,(1)実施・未実施,(2)他社へのインパクト,(3)ライセンスの可能性,である。(1)に関しては,実際に使用しているかを見る。未使用であっても(2)のように他社の参入障壁として機能している場合もある。(3)に関しては,他社から特許侵害警告を受けた場合,クロス・ライセンスなど交渉の道具として使えるかどうか,などを評価する。「将来的には,国内外の事業の状況や社会の趨勢を含めた総合的な評価をしていきたい」(三原氏)。

海外での有事に備えて知財情報を収集
 同グループは,海外へ積極的に事業展開していることもあり,近年は,海外事業を円滑に進めるための特許出願が増えている。自社の主力製品が素材で,さらにBto Bということもあり,今のところ模倣品の被害はほとんどない。しかし,今後は事業の拡大に伴って警告や訴訟を起こす(受ける)可能性もある。こういった事態に対処するために,知財センターでは,出願地での知財情報の収集に尽力している。「国によっては特許公報などが正しく公開されなかったり,オンライン検索ができない場合もある。その場合は,現地の信頼できる調査会社を利用して情報を収集する」(三原氏)。

知財ライセンスによって自社事業の拡大を図る
 2008年7月にグループ企業である帝人ファイバーが,アジア最大規模のポリエステル・メーカーに対して重金属をまったく含まないポリエステルポリマーに関する製造技術をライセンス供与した。今回は,PETボトル用樹脂に関する技術ライセンス契約を結んだ。ポリエステル繊維用ポリマーについても,当該技術ライセンスを供与する基本的な合意がなされている。また,将来的にはPETボトル用樹脂,ポリエステル繊維のOEM生産も視野に入れている。今回のライセンス契約を機に,さらにアジア・欧米の企業へもライセンス供与を広げ,世界的に自社技術・製品の普及を図る。「“稼ぐ”ことではなく,事業を拡大することが知財の第1の目的」と三原氏は知財の存在価値を強調した。

社員が担当分野に関する知財業務を一貫して行う
 知財センターには約40名の社員がいる。その内,弁理士資格を持つ社員は6名(三原氏を除く)である。「技術系社員に占める弁理士の割合は多い」(三原氏)。帝人グループには“資格取得援助制度”があり,社員は資格の取得に積極的である。
 特許明細書の作成にあたっては,各グループの研究者が第1稿を作成する。これをベースに知財センターの技術系社員が内容を精査し,完成度を高めていく。技術系社員の前歴は,研究職であることが多く,研究開発の内容を熟知している。特許出願,中間処理,権利化,国際出願,訴訟対応なども1人の社員が一貫して担当する。
 知財センターでは,各グループの研究者に対して明細書の書き方や先行事例調査などを教育する講習を年1回〜複数回開催している。講習は内容がレベルアップするように設計し,グループの研究者の知財に対する意識を高めるために,活動している。




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