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――融合アライアンスの枠組みはどのように決まっていったのでしょうか。 折戸氏: 2001年11月に京大と三菱化学,ロームなどが中心になって融合アライアンスの枠組みをつくる準備委員会となる異業種連携チームを設けました。当初はいくつかの企業に異業種・垂直連携型の大型共同研究計画を提案し,約20社の企業が参加を検討しました。2002年3月時点では,参加を検討している20社にも大型共同研究の考え方などを公表し,いろいろな情報を共有していました。情報は共有していましたが,この時点では京大と各企業は“紳士協約”の下にお互いに枠組みや研究テーマなどの中身を詰めていました。 その3月末の時点で融合アライアンスに参加する企業はNTT(日本電信電話),パイオニア,日立製作所,三菱化学,ロームの企業5社に絞られました。材料という川上から最終製品の川下までの企業の垂直連携を基本に,同一業種は1社とする企業の垂直連携の枠組みを重視した結果でした。 もちろん,共同研究費を1社当たり1年間に5,000万円出資するという共同研究費の負担が大きいと判断して参加を取り止めた企業もありました。また,共同研究テーマを京大の教員に公募し,その中から優れた提案を選ぶというやり方に違和感を持って参加をやめた企業もありました。大学教員に研究テーマを公募するやり方は,当時はかなり先進的だったからです。こうした新しい産学連携の枠組みづくりでは,参加する企業の経営陣の意志決定の早さも重要でした。 ――企業5社に絞った時点で,融合アライアンスをどのように具現化したのでしょうか。 折戸氏: 3月に京大と参加企業5社は融合アライアンスを始める準備として,“趣意書”をお互いに交わしました。本来ならば,代表者が合意のサインをするものでしたが,実際には研究テーマが具体的に決まらないとサインできないので,互いに趣旨を尊重する“紳士協定”になりました。 融合アライアンスの京大側の窓口となった組織は,国際融合創造センター(IIC)でした。現在の,産官学連携センター(ICC)の前身組織です(注)。京大は産学連携を推進するために,2001年4月に国際融合創造センターを設置し,ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー施設長・教授の松重和美氏がセンター長に就任しました。この国際融合創造センターが融合アライアンスを推進する担当組織となり,2001年11月から融合アライアンスの準備委員会である異業種連携チームの京大側組織となりました。そして,融合アライアンスを実際に運営するために,京大内から人材を集めました。この結果,工学研究科から年光昭夫氏(現,産官学連携センター副センター長・教授)が2002年4月に着任し,異業種連携チームの主要メンバーになりました。2002年4月に実施した研究テーマの公募では,年光教授が中心となって作業を進めました。
――研究テーマの公募はどのように進んだのでしょうか。 折戸氏: 2004年4月に「有機系エレクトロニクス・デバイス」を産学連携で共同研究する融合アライアンスを実施する計画を京大の教員に公募し,その共同研究のキーワードとして「ナノテクノロジー」「有機系および有機・無機複合新材料」「次世代デバイス」「新規プロセス」などを提示しました。 研究テーマは「新材料,新デバイスの研究開発とその製造を実施するプロジェクト研究」と「萌芽的・探索的基礎研究」の2つの枠組みを提示し,10件採用しました。プロジェクト研究は期間が3年程度,基礎研究が約1年を想定し,研究開発費として企業5社から毎年2億5000万円が5年間提供されると提示しました。これを原資に各共同研究が運営されると説明しました。 この公募に対して,京大教員から約50件の研究テーマの応募がありました。当初,提案がいくつ集まるか不安でしたが杞憂に終わりました。この背景には,年光氏が京大の教員に,企業と共同研究する意義を的確に丁寧に説明した功績が大きかったと思います。当時の大学教員からすれば,企業との共同研究は企業から頼まれてするもので,企業が共同研究案を選ぶという仕組みは教員のプライドを逆なでしたかもしれません。日本では,研究開発目標を定め,その目標達成をマネジメントする産学連携はまだほとんど無かった時代でした。 年光氏は,京大の教員に企業との共同研究によって学術的な研究成果が得られると,新しい可能性などを説明したと聞いています。京大の教員にとって研究テーマ案というアイデアは学術的なオリジナリティーに関係するため,企業に公表することに抵抗があったと思います。 ――研究テーマの選定結果は。 折戸氏: 京大の教員がA4用紙1枚に研究計画概要を記入した提案書を企業5社が選考しました。企業5社各社の開発ニーズや将来の事業構想など,社内の“引き”がある研究テーマが選ばれました。企業側が選んだ研究計画概要の提案を出した教員に,詳細な研究計画を提出してもらい,その教員と企業側担当者と議論することで選定しました。 この結果は,7件のプロジェクト研究と9件の萌芽的・探索的基礎研究の合計16件を選びました。採用された16件は「世界を先導できる可能性がある」「将来,新産業,新事業を創出できる」という視点で選びました。「高機能フレキシブルディスプレイの基盤技術と開発研究」「有機太陽電池と高効率有機光電変換材料の開発技術」「有機系超大容量メモリデバイスの基盤技術と高機能光学材料の開発」「機能性ナノ複合体材料の開発とデバイス応用」「その他の有機系エレクトロニクス・デバイス開発」の5分野を共同研究することになりました。 京大大学院の工学研究科,化学研究所,エネルギー理工学研究所,木質科学研究所(現,生存圏研究所),ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーなどの教員が共同研究に参加することになりました。京大の教員が約80人,企業の研究者などが約70人参加することになりました。 研究テーマが決まった結果,2002年8月1日に京大と企業5社が「包括的産学連携融合アライアンス」を5年間実施すると発表しました。 (聞き手は丸山正明=日経BP社産学連携事務局プロデューサー)
注 京大は産学官連携を担う組織として,2001年4月に国際融合創造センター(IIC)を設置した。その後,全学組織として2005年4月に国際イノベーション機構(IIO)を設置し,2007年7月に現在の産官学連携本部と産官学連携センター(ICC)に改組した。 |
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