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経営参画へと進む日本の知財部門
一丸ファルコスは技術マーケティングを実践
[2008/12/26]


 化粧品の原料メーカーとして日本有数の企業であり,国内外の多くの化粧品メーカーに原料を供給している一丸ファルコスと,知財のコンサルティングと特許の競争力分析・評価を行うSBIインテクストラを招き,“企業における知財部門の役割り”に関する座談会を開催した。知財部門に求められる役割と原料メーカーにおける知財活動の注意点2つのテーマについて議論した。この議論から,日本における知財経営への流れと,その先進企業としての一丸ファルコスの姿が浮き彫りになった。

参加者
一丸ファルコス 常務取締役 安藤一彦氏
一丸ファルコス 常務取締役開発部長 岩田敏宏氏
一丸ファルコス 開発部知財管理課主査 川合 悟氏
SBIインテクストラ 取締役 久保田茂夫氏
日経BP知財Awareness編集部長 高野一郎




経営が知財部門に求める技術マーケティングの機能

高野:近年,多くの企業で知財を経営資源の1つとして積極的に活用しようという動きが生まれている。これに応じて知財部門の役割にも変化が起きているように感じるが,現場ではどうか。

久保田氏:企業の中では,研究開発部門と知財部門は研究開発の成果を特許化するという面で,近い関係にあった。その中で,知財部門は研究開発部門の活動をフォローするのが一般的だった。このような意味で,知財部門は他部門を助ける役割だった。しかし,最近では知財部門が特許情報から先行技術や他社技術開発動向などを分析し,研究開発部門に提供するようになってきた。“技術マーケティング”ともいえる活動を活発化させている企業が増えている。こういった活動によって知財部門の重要性が他部門と同等になってきた。

安藤氏:わが社は,創業当時から知財を重視してきた。知財情報を分析し,わが社の分析ではビジネスの可能性があるのに他社が狙っていない分野に向けて集中的に研究開発してきた。わが社にとって知財はビジネスの根幹である。
 久保田氏が指摘した技術マーケティングの機能は,わが社の経営層が知財管理課に求める最大の機能である。知財管理課は他社の技術開発動向に一番詳しい立場にある。その情報を開発部に示し,開発を効率化させることはとても重要である。知財管理課は開発部に属しており,技術マーケティングを数年前から開始している。従来から部内で密にコミュニケーションしているが,人材不足を感じている。

久保田氏:知財戦略を強化するには人材(能力)の強化が必須であるが,知財管理課ではどのように人材を育成しているのか。

川合氏:開発経験者が知財を担当するのが理想的であるが,現時点で開発経験者の知財管理課への異動はない。OJTの一環として知財管理課員を原料開発課へ異動させるなどして他部門の状況を理解するようにしている。わが社は,人材育成によって知財戦略を強化させる方針である。

高野:近年では,このような取り組みをさらに進め,知財を経営に積極的に活用する“知財経営”という概念を打ち出す企業が出てきた。従来の知財部門は,特許出願から権利化,他社対応などを事務的にこなし,“研究開発⇒製造⇒販売”といった企業の通常プロセス(業務フロー)には入らないイメージがあった。「上記プロセスに知財部の機能が関与しないのは問題ではないか」という議論が日本国内で起こっている。研究開発テーマの決定にはどのような枠組みがあり,知財管理課はどのように関与しているのか。

岩田氏:わが社では,知財管理課は開発部に知財情報を提供しているが,方針決定には直接関与していない。今後は,知財管理課が開発部の活動に大きな影響を与えられるように体制を整えていきたい。
わが社における方針決定の流れには大きく分けて2つある。(1)学会での情報収集から,(2)化粧品メーカー(顧客)の要望から,である。  (1)に関しては,開発部員が国内外の学会で情報収集する。そこから研究開発動向をつかみ,市場のニーズを予想することでテーマを決定する。
 (2)に関しては,顧客から“特定用途の商品を開発するために必要な原料を開発して欲しい”という要望がくる。これらに関しては,先行技術などを調査して他社の特許に抵触していないことを確認し,開発に入る。必要に応じて顧客や大学と共同開発する場合もある。わが社が持つ原料だけでは新原料を作れない場合もあるからだ。
 最近では,(2)が増えている。わが社は膨大な数の植物性原料の機能を解析しており,ライブラリを所有している。顧客からの要望に対し,ライブラリから適切と思われる原料を選び出し,組み合わせて新しい原料を作る。機能性を証明した上で特許を出願し,顧客に供給する。

化粧品メーカーが危惧する他社特許侵害を可能な限り排除

高野:原料メーカーの知財部門として気を使っていることは何か。

安藤氏:わが社は,顧客にとって使いやすい知財を取得するように心がけている。例えば,植物から抽出した原料A,B,Cを組み合わせることによって効果を出す化粧品用新原料Dを作り出した場合を考える。Dは新しい“物”の発明であり,“組み合わせ特許”などと呼ばれる。わが社は,これを特許出願・権利化して顧客に供給する。しかし,ごくまれに組み合わせを制限されるような他社特許が存在する場合がある。この場合,顧客から「当該原料に関連する特許のライセンスを受けてほしい」と要望される。これに関しては,ライセンスを受けるなどして対応している。したがって,他社の特許を侵害することはほとんどない。まれに他社から特許侵害警告書を受けることもあるが,交渉の段階で解決している。
 化粧品の規制緩和に伴って,2001年4月から,医薬部外品を除くすべての化粧品について,原料の「全成分表示」が義務付けられた。全成分表示に変わってから,顧客が原料に関する特許の安全性に関して気を使うようになった。大手の顧客は,供給される原料に関する自社特許の概要,他社特許出願状況,他社特許取得状況などを調査した「特許報告書」の提出を求める場合が多い。中小規模の顧客の場合,自社内で知財を調査する体制がないことがある。特許報告書によって原料の調達を決定する企業もある。原料に関する特許の安全性を完全に保証することはできないが,開発前段階から綿密な特許調査をしており,危険性をできる限り排除して顧客からの信頼を高めている。

久保田氏:一丸ファルコスは,知財管理課が事業や研究開発をよく理解していると感じる。その点で,素晴らしい知財経営を実践している企業といえるだろう。同様に知財を経営に活かしそうと努力している企業が増えている。今後も企業経営における知財部門の役割が高まっていくだろう。




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