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企業における知的財産管理技能検定の位置付け

[2009/05/25]

 企業が知的財産管理技能士に期待するものは「成果の創出」と「経営への貢献」。日経BP知財Awarenessが,グローバルに活動する各業界の大手企業に対して行ったアンケートの結果から判明した。企業アンケートは,「企業が求める知財人材像」,「評価指標」,「知的財産管理技能検定の企業への浸透度」などを計る目的で実施したものである。本記事は企業アンケートの結果を分析したものである。
(日経BP知財Awareness編集)


知財人材に求めるグローバル化対応
 企業アンケートに協力した企業は,日産自動車,富士フイルム,帝人,住友重機械工業,パナソニック,NEC,ブリヂストンの7社である。
 質問1では,知財人材に必要な能力と開発すべき能力について尋ねた(表1)。その結果,能力に関しては,各社がほぼ共通していることが分かった。(1)知財関連法(国内外)の理解,(2)語学力,(3)コミュニケーション力,(4)技術の理解,(5)調査力,(6)知財ポートフォリオの設計・構築力,などである。
 (1),(2),(3)に関しては,企業活動のグローバル化に対応するための能力といえる。活動範囲が広がれば,現地での特許出願や権利化,特許権侵害への対応などで仕事量が増えるだけでなく,現地の法制度に則った活動が必要になる。これらは,事業をグローバル化させている企業の知財部員にとって必須の能力といえる。NECは,グローバル標準化活動を重視しており,知財人材に必要な能力として「標準化についての理解」を挙げている。グローバル標準の獲得は,グローバル化を目指す電気・通信業界にとって重要な事業活動である。そこへの対応力は,同業界の知財人材にとって必要な能力となる(参考記事)。
 (4),(5),(6)は“研究開発など他部門への積極的な関与”という知財部門の命題に取り組むための能力である。富士フイルムや帝人は,これ以外に「他部門の理解・センス」を挙げている。
 このほかに住友重機械は知財人材が身につけておくべき事項として「コスト意識」を挙げている。部門単独で利益を生み出すことが少ないといわれる知的財産部門にとって,コスト意識を持って活動することは,重要である。

表1


社内外の研修によって能力を研鑽
 質問2では,知財人材の能力を向上させるための施策について尋ねた(表2)。その結果,回答を得たすべての企業が,社内で研修したり,知的財産協会(知財協)など外部の研修を活用していることが分かった。
 そのほかには他部門へのジョブ・ローテーションや海外法律・特許事務所への派遣などを挙げた。ジョブ・ローテーションは,他部門の活動を理解することによって知財活動を効率化させ,事業に貢献するための施策である。海外法律事務所などへの派遣は(1)知財関連法の理解,(2)語学力,の向上に結び付く。事業のグルーバル化に対応するための施策である。
 日産は,弁理士資格を重視しており,弁理士ゼミの受講費用を援助している。

表2
表2


業務の質と量によって評価
 質問3では,知財人材の評価指標に関して尋ねた(表3)。各社ともに独自の評価指標によって知財人材を評価している。指標にはライセンスや中間処理,研究開発活動へのアドバイスなど知財実務の質と量などの成果が含まれる。パナソニックやNECでは個人別に目標を設定し,達成できたかを評価項目に加えている。質問1の知財人材が開発すべき能力として「事業企画など他部門のセンス」を挙げた帝人は,他部門への関与である「研究活動へのアドバイスの質」を評価項目して挙げている。住友重機械は,弁理士や知的財産管理技能士の取得(知的財産管理技能検定の合格)を人事考課に含めている。
 本検定は,知財実務に関する能力測定,目標設定の目的で受検者が増えている。本検定は,主に企業の知財人材を対象としてスタートした。前身である「知的財産検定」のスタートから5年が経過し,2008年には国家検定になった。受検者は累計4万人を超えた。学生など初学者を対象とした3級も新設された。1級は高度な実務能力と法律の知識が要求される。1級の試験には米国や中国,韓国など海外知財関連法も含まれる。たとえ弁理士であっても簡単には合格できない。

表3
表3


技能士には報奨金や受検費用援助も
 質問4では,本検定について社内での位置付けについて尋ねた(表4)。富士フイルム,帝人,住友重機械,パナソニックの4社は,実務能力の確認や目標設定などに本検定を活用しており,知財人材などへ受検を推奨している。NECとブリヂストンは,今後本検定の活用を検討するとしている。

表4
表4


 質問5では,技能士に対して業務や待遇面で変化があるかを尋ねた(表5)。富士フイルム,帝人,住友重機械の3社は受検費用を援助している。帝人は合格者に報奨金も出している。住友重機械は,知財人材に最低限技能士2級を取得するように推奨しており,弁理士を除くほとんどの知財人材が1級または2級を取得している。
 技能士の取得が昇給や昇格に影響することは少ないが,日産では技能士取得によって業務範囲を拡大させている。住友重機械は,知財人材のほとんどが技能士であるので資格に基づく業務の拡大はない。

表5
表5


 質問6では,技能士への期待について尋ねた(表6)。これに関しては,富士フイルム,帝人,パナソニックの3社から回答を得た。回答からは,企業が技能士に対して,「知財実務のプロとして深い専門知識を活用して成果を創出,事業活動へ貢献する」ことを期待していることが明らかになった。

表6
表6


 企業アンケートに回答した7社中4社がすでに本検定を積極的に導入しており,2社が導入を検討するという。技能士が事業活動で成果を上げれば,今後も本検定を人材育成や指標として活用する企業は増えていくと見られる。



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