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先日,2007年春に“ニセ・ディズニーランド”という不名誉なレッテルを張られ,一躍名を馳せた北京市石景山遊楽園に行ってみた。5月下旬の週末,絶好の行楽シーズン,絶好の行楽日和にもかかわらず,園内はご覧のとおりガラガラであった(写真1)。遊戯施設の半数以上が,利用客もなく,静かに停止したままで,しかも園内も雑草が伸び放題(写真2)。中には建物外壁が雑草に覆われ,まるでお化け屋敷のような状態のものまであった(写真3)。
今回のお目当ては,世界中のアニメ・キャラクタに似ている「着ぐるみキャラクタ」だったのだが,残念ながら見事に全員が失踪。影も形も見当たらなかった(当時,日本のマスコミ各社はこぞってその映像を流し過剰に報道していたが,ディズニー本家の米国では,まったくといってよいほど無関心だったと聞いている。日本のマスコミ各社に何らかの意図があっての過剰報道だったのかは知らないが,何かにつけて大騒ぎする報道姿勢には疑問もある。そもそも日本のマスコミは,「ニセ・ディズニーランド」と大きく報じていたが,実際には北京でもそれほど人気施設ではない)。 全員失踪という予想外の展開に意気消沈しながらさらに園内を探索していると・・・ありました!ハンバーガー・ショップ「麦肯基」(写真4,5)。この「麦肯基」の何がおかしいのかというと,中国語表記のマクドナルド(麦当労)とケンタッキーフライドチキン(肯徳基)を足して2で割ったハイブリッド名,まさに中国式パロディ模倣の典型例なのである。
その後も園内を徘徊してみたものの,大騒ぎするほど目立ったニセキャラやニセモノは無かった。それでも,売店やゲームコーナーを注意深く観察してみると,こちらの期待を裏切ることなく,やっぱりそれなりにあったりする(写真6,7,8)。
アジアの巨人は今,再び中華(世界の中心)を目指して躍進している。私は,経済成長が本格化した2001年4月から2004年3月までの3年間,北京に駐在した。そこでよく耳にしたのは,「没問題(メイウェンティ)」「没関係(メイグワンシィ)」,すなわち「問題ない。大丈夫。大したことではない」という意味の中国語である。わずか20年ほど前までの中国は,社会主義国家らしくどこに行ってもモノが無く,店員に尋ねても返ってくる言葉は,つっけんどんに「没有!(メイヨウ)」(日本語で「無いよ」の意味)ばかりだったらしいが,あらゆるモノで溢れかえり凄まじい勢いで発展する現在は,何事にも「没問題!」とささいなことにこだわっている暇はないのであろう。 一見華やかに見える中国の発展ぶりの裏には,複雑で解決困難なさまざまな問題が山積みしている。数多くの問題を抱える中国にあって人民の不満はすでに臨界点に達しており,先進各国が指摘する知的財産権問題は,国内的にはささいなことであり,「大したことではない」のであろう。中国は,その長い歴史における各王朝時代の骨董品にもさまざまな贋作・コピー品があり,市場には常に本物とニセモノがあるというのは中国人にとっての常識でもある。そのため,賢い消費者はいかにしてニセモノを掴まされないようにするかに注意を払ってきた。 今回のシリーズでは,さまざまな問題が存在する中国の現実を踏まえながら,知的財産権とは何かを改めて見つめ直してみたい。(つづく)
日高賢治氏プロフィール
京都大学農学部卒業後,通商産業省(現経済産業省)特許庁に入庁。審査官,通商産 業省大臣官房企画室企画主任補佐,特許庁総務部総務課課長補佐,技術審査委員,審判部審判官などを経て2001年日本貿易振興会北京センター知財室長,2004年に特許庁に戻り総務部特許戦略企画調整官,2005年特許庁退職。 同年弁理士登録,日高東亜国際特許事務所所長(現在に至る)。 現在は,政策研究大学院大学客員教授,九州工業大学客員教授,早稲田大学外部講師も併任している。 |
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