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柴田英寿のアントレプレナーシップ論 オープンスクール


アントレプレナーシップ論オープンスクール〜第1回〜
開講にあたって――アントレプレナーシップは誰にでも必要――

[2009/06/15]


8年間の経験
 このWEB講座は,主に理系の学生,若手社会人を対象に開催してきた講座のWEB上での再現を目指しているものです。講座は「知的財産権による事業創造」「産学連携の理論と実践」などいくつかの名称を経て現在は「アントレプレナーシップ論」として開講しています。関係者は「アントレ」と呼んでいます。

「アントレ」は「エンター」

 「Entrepreneurship」は一般に「起業家精神」と訳されています。起業というと一般的には会社を始めることと捉えられます。この講座では「Entrepreneurship」をもう少し広く捉えています。この講座では,「Entrepreneurship」を同じ語源と考えられる「Enter」にたとえて理解しています。起業することだけでなく,身の回りにある「『これはおかしい』と思ったことに自ら踏み込んで直していく」というイメージです。自分がいる大学の研究室でも,会社の部署でも,地域の集まりでも問題はたくさんあります。それぞれが抱える問題を「自分で直すこと」を「Entrepreneurship」と捉えています。

 そして,実は問題を解決していくときに必要になることは,起業するときに必要になることとほとんど変わりありません。講座に登場してもらった,ほとんどの社長も同じことを言っていました。

 それは,「大儀」と「チームワーク」です。詳しくことは,講座の中で述べていきます。

起業の前に必要なこと
 私が開催してきたアントレプレナーシップ論は2009年で8年(8回)目になっています。この間に講座で何をどう伝えるかについてたくさんのことを学びました。もちろん,最初の年の講座も練りに練って作りました。しかし,今から思うと頭で考えた部分が多い講座でした。当時の様子は『理系人間のための経営戦略入門』(2003年,実業之日本社)にまとめています。交渉学や小さな会社での組織運営を取り上げていた点などユニークな視点が含まれています。

 初年度の講座は,受講生が講座の後,すぐにでも起業を目指せるように設計していました。そのため,講座の後半には,「必要な資金は銀行に融資してもらうのがいいのか,投資家に出資してもらうのがいいのか」という課題を出して回答してもらっていました。しかし,これはほとんどの人にとって現実感のない課題でした。受講生が切実に必要としていたことは,資金をどうやって調達するかではなく,チームワークの仕方や,人前での発表の仕方など,もっともっと基本的なことでした。

 ほとんどの受講生は,必ずしも起業することをすぐに実現したいゴールとは考えていませんでした。起業して社長になることは「いつかはやってみたい」「できるならやってみたい」という憧れに近いものとして捉えられていました。そして,起業することは憧れであったとしても,一人ひとりが,自分が研究する技術や社会の問題,身の回りの問題に「熱い思い」をもっていることももう一方の側面としてありました。この思いこそ「大儀」の萌芽でした。

 その大儀を実現するために,「学校では教えていない」,「実際に直面する」ことを学ぶのがこの講座の特徴です。会計を学んだ,マーケティングを学んだ,リーダーシップを学んだとしても学んだことを実践していくことはなかなかできません。例えば,会議やミーティングの仕方についてはいろいろ研究されています。それは本を読めば知識としてはわかります。しかし,そのとおりやってもチームでの議論はなかなかうまくまとまりません。それには知識とは少し違う,「信念」や「正義」のような物事を成し遂げていく基本的なエネルギーが必要なのです。

 学んだことを実践するまでの過程に何が起こるのか,うまくいくときといかないときの違いは何かを体験してきたのがこの8年間でした。今回のWEB講座では,基本的な知識をお伝えするとともに,その知識を実践していくときに起こることにも重きを置いて進めたいと考えています。


参考書籍
シュンペーター『企業家とは何か』(東洋経済新報社)
柴田英寿『理系人間のための経営戦略入門』(実業之日本社)




柴田英寿
柴田英寿氏 2002年から2006年まで日本知財学会理事。2002年から5年間,東京大学先端技術研究センターにて特任教員,非常勤講師としてアントレプレナーシップ論の前身講座を開講。知的財産権の研究会であるビジネスIPRとして韓国の同種団体IPMSとの交流や知財ゲームの普及などを展開。毎週水曜日朝に開催する朝食会(赤坂ブレックファーストクラブ)も有名。著書,寄稿多数。株式会社日立製作所勤務。著者ポータル




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