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「環境技術を基にベンチャー企業を創業しました」
ユーグレナ 出雲充 代表取締役社長
[2009/06/22]
ユーグレナ 出雲充 代表取締役社長
ユーグレナ
出雲充
代表取締役社長

 2009年6月13日土曜日の午前10時から日本知財学会の第7回年次学術研究発表会が東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)で開催された。冒頭の13日午前の企画セッション「環境・エネルギーと知財」に,大学発ベンチャー企業であるユーグレナ(東京都渋谷区)代表取締役社長の出雲充氏がパネリストの一人として登場した。同社は微細藻類のユーグレナ(euglena)を機能性食料などに事業化しているベンチャー企業だ。事業対象のユーグレナは,動物と植物の中間的な原生生物という独特の生物で,体内の葉緑体が光合成によって二酸化炭素(CO2)から有用物質をつくり出すため,二酸化炭素の固定化手段として環境対策面でも注目を集めている。日本知財学会の今回の総合テーマは「今あるべき知的財産戦略 環境パラダイムへの対応とバランスに向けて」だった。そのテーマを反映した地球環境への対応に向けて,知的財産戦略がどうあるべきなのかを考えるための企画セッションに,環境技術を事業化している新進気鋭の若手経営者として出雲氏が登場した。事業対象である微細藻類のユーグレナの名前を社名にそのまま使って,同社がユーグレナの事業化にかけている熱意を示す出雲氏に,環境技術を基にベンチャー企業を創業した経緯を聞いた。


――ユーグレナを創業した経緯は。
出雲氏: 当社のCTO(最高技術責任者)・取締役を務める鈴木健吾氏が,東京大学農学部でユーグレナの研究を続けていたことから,有名なクロレラ以上に近未来の食料などとしての可能性が大きいことを知りました。私は当時,農学部の同級生として農業経営を学んでいる学生でした。鈴木氏は大学院に進んでユーグレナなどの研究を続け,いくつかの研究成果を得たことから,事業化できる可能性が高いと判断しました。
 2002年3月に私は東大を卒業して東京三菱銀行(現,東京三菱UFJ銀行)に就職し,ビジネスのやり方の基礎を学びました。仕事に真面目に励みながらも,いずれはベンチャー企業を創業したいと思い,土・日曜日は事業・経営の基礎勉強に費やし,起業準備を精力的にしました。そして,大学院でユーグレナを研究していた鈴木取締役がこれまでは難しいとみられてきたユーグレナの大量培養にメドをつけたと判断した段階で,銀行を辞めて創業準備に入りました。資本金1000万円をなんとか集めて,平成17年(2005年)8月に,ユーグレナを設立しました。創業当初は鈴木氏などの4人(監査役を除く)で起業し,会社を東京都港区に構えました。


――ベンチャー企業を創業したいと思った動機は。
出雲氏: 発展途上国の人々などの生活向上に貢献したいと考えたことがきっかけです。東大に入学した18歳の時に,バングラディシュに行きました。高校生までに海外旅行に行った経験がなかったので,夏休みに日本人があまり行っていない国に行ってみようと考えました。あまり深く考えずに,バングラディシュを選びました。観光旅行先として日本人があまり候補に挙げない国だったからです。たぶん,最貧国の一つだったバングラディシュ向けのパック旅行などは無かったと思います。
 実際に行って,空港から外に出て日本との違いに驚きました。日本はきれいな水,豊かな食料,安全な社会に恵まれた環境でしたが,バングラディシュはその当たり前と思うものがありませんでした。貧しさの実態を肌で知りました。
 近くのバングラディシュUniversity of Dhaka(ダッカ大学)に飛び込みで行って,学生に頼んで図書館の本の整理などを手伝うボランティアをしながら,自分は将来何をしたいのかを考えました。この約3週間の原体験が,「地球環境に関係する仕事をしたい」との思いになりました。そして,同級生だった鈴木氏が「ミドリムシ」とも呼ばれる微細藻類のユーグレナを研究していたことから,その事業化を考えるようになりました。将来の人類の食料としての可能性を感じたからです。学生時代には,米国Stanford Universityアジア太平洋学生起業家会議の日本代表を務めるなど,起業についても勉強しました。


――事業計画は。
出雲氏: 当社は事業対象を「バイオマスの5F」と説明しています。最初のFはFuel(燃料)で,Fertllizer(肥料),Feed(飼料),Fiber(繊維),Food(食料)と続きます。後の方が付加価値が高いので,当社はまず,機能性食品としてサプリメントの販売する事業をOEM(相手先ブランドによる生産)とテレビの通信販売で始めました。ユーグレナはパラミロンと呼ばれる天然高分子のβ-1.3-グルカンを主成分として合成し貯蔵します。この天然高分子はユーグレナの乾燥質量の約50%まで蓄えられます。パラミロンが持つ効果を機能性食品として製品化しました。
 2005年12月にユーグレナをある規模で量産するメドをつけました。鈴木氏がユーグレナの大量培養条件を見いだすのに成功したからです。現在,ユーグレナの野外での大量培養は沖縄県石垣島で行っています。平均気温23.8℃や太陽光などの環境がユーグレナの培養に適しているからです。培養はクロレラなどの培養で実績を持つ八重興産(沖縄県石垣市)に委託しています。機能性食品は販売経路などを拡充し,2006年4月から事業を本格化しました。化粧品としての事業も展開し始めました。
 高付加価値な機能性食品の「Food」で事業基盤を築き,量産技術を高めることで低価格化技術を確立し,将来は燃料の「Fuel」まで事業化したいと考えています


――ベンチャー企業の事業を進展させるのに重要なことは。
出雲氏: まず,最適な経営陣が集まったことです。当社創業時は,COE(最高経営責任者)である私とCTOである鈴木氏に加えて,中国などで機能性食品事業を手がけていた福本拓元氏が取締役として参加しました。機能性食品を中核事業に育てる目標を掲げる当社にとってたくましい存在となりました。
 経営陣に加えて,技術顧問陣にそうそうたる方々が参画していただいたことも事業進展を支えました。例えば,日本でユーグレナ研究の第一人者である大阪府立大学名誉教授の中野長久氏に技術顧問に就任していただくなど,事業計画に有効な助言をいただく仕組みを築きました。
 中野氏との関係から,大阪府大とは栄養学面での共同研究を実施しています。さらに,東大とは「油糧微生物に関する遺伝子解析」,近畿大学とは「ユーグレナの有用物質の効率的生産」,東京薬科大学とは「微細藻類を用いたCO2固定の生物学研究」などと,産学連携による共同研究態勢をつくりました。当社はユーグレナの事業化に特化し,スピード感を重視して事業化を促進するためです。
 現在の機能性食品事業を中核に,今後はエンジニアリング企業と共同でユーグレナの大量培養と分離技術,そして利用しやすいように粉末(パウダー)化する技術などを確立し,飼料メーカーなどとユーグレナの飼料化事業を推進していきます。同時に,CO2を固定化していることから,CO2排出権を企業や商社に販売する事業モデルを推進します。将来は,発展途上国にユーグレナの大量培養技術などを技術移転し,CO2排出権の販売事業につなげることも考えています。


――CO2排出権の販売事業まで想定しているのですか。
出雲氏: 当社は,ユーグレナのCO2固定化技術を地球環境の負荷低減技術として重視し,この点を電力企業や大手の製造業企業などにも伝えています。機能性食品事業に留まらない環境技術まで視点に入れた当社の事業モデルが高く評価され,ベンチャーキャピタル(VC)数社から投資をいただいています。このCO2固定技術の可能性はかなり大きく,社会的な意義も大きいため,当社の存在価値を高めると考えています。
 2007年に,東大本郷キャンパスにある東京大学アントレプレナープラザに研究所を入居させ,研究開発環境を整え,事業化を支える態勢固めを実施しました。その一方で,若手経営者として,2007年に「第一回日中韓若手経済人コンテスト」に参加して新人賞を獲得するなど,経営陣としての経営技術の向上に努めています。ベンチャー企業として,新産業起こしに務め,日本に新しい環境技術ベースの事業を育成します。

(丸山正明=日経BPプロデューサー)



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