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標準化された著作権管理技術でコンテンツの流通が活発化
日経BP知財Awareness特別対談〜デジタル・コンテンツの流通を促進する著作権法のあり方(2)
[2009/07/16]

 「標準化された著作権管理技術が普及すればデジタル・コンテンツの流通は活発化する」。三好内外国特許事務所の弁理士,小西恵氏が指摘した。日本は,政策としてアニメーションに代表されるデジタル・コンテンツ産業の発展を重視しており,各種施策を実行している。施策の一つとして話題になっているのが著作権法の改正である。コンテンツの2次利用に関しては,すべての関係者(権利者)から利用の許諾を得る(契約する)必要がある。許諾を得るのに必要な手間とコストがコンテンツの2次利用を阻害する大きな要因となっていた。この問題に関して「権利者の権利を若干制限して2次利用を促進させる」という意見や「権利を制限せずに契約で対応する」という意見が存在した。日経BP知財Awarenessでは,この問題に関する特別対談を企画した。
 出席者は,著作権特別法を提言するデジタル・コンテンツ利用促進協議会の事務局を務める弁護士の櫻井由章氏(西村あさひ法律事務所)と日本弁理士会の著作権委員長を務めた経歴を持つ弁理士の小西恵氏(三好内外国特許事務所)である。 今回は連載の第2回である。

(まとめは品田茂=日経BP知財Awareness編集)



小西氏:「コンテンツを流通させることによって得た利益を権利者に還元する」というのはビジネス・スキームであり,法律ではなく契約によって処理すべき問題だと思う。コンテンツ利用に関する契約実務の上ではどうなっているのか。
西村あさひ法律事務所 弁護士 櫻井由章氏
西村あさひ法律事務所
弁護士 櫻井由章氏

櫻井氏:“映画コンテンツ”の場合,著作権法は,著作者が映画製作者に対し映画の著作物の制作に参加することを約束している場合には,著作権が映画製作者に帰属するものと規定し権利の集中化を図っているが,脚本家,作詞家・作曲家などはこのような権利集中の対象外である。また,権利者のうち実演家については“ワンチャンス主義”によって2次利用に著作隣接権が及ばないが,人格権は有したままである。そのため,権利処理はかならずしも容易ではない。
 仮に権利処理ができた場合や,新しい法律が制定され或いは法改正がなされた場合を考えると,現在は各デジタル・コンテンツにIDを与えることによって,利用条件などを電子的に付与する技術があり,これを追跡・確認することが可能と言われている。例えば,2008年に国際標準となった“許諾コード方式”(IEC 62227)である。このようなシステムを利用すれば,権利者へ適正に利益が配分されるようになるだろう。
 今後は,コンテンツの2次利用を前提としたコンテンツの種類を横断した総合的なデータベースの整備が重要になるだろう。前回話題になったCDCは,音楽に特化したデータベースを構築するとのことである。コンテンツ・ポータルサイト運営協議会は,コンテンツ情報を発信するためのポータル・サイト「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」を運営している。しかし,これらはすべて個別の取り組みである。
 総合的なデータベースの構築には多額の費用がかかる。さらに単体で利益を生み出すことはないので,思ったように進んでいないのが現状である。そのため,データベースの構築には国の援助が不可欠であろう。基盤となるデータベースができれば,これを利用する権利者たちも増えるだろうし,新しいビジネス・モデルも誕生する可能性も増えるだろう。

小西氏:現在,国際標準化された許諾コード方式の項目には,“コンテンツID”,“権利者ID”,“配信事業者ID”,“許諾条件ID”,の四つがあるがこれを利用ないし拡張し,デジタル・コンテンツの利用の程度に応じた権利者への利益還元が行えるシステム構築も技術的には可能だろう。このようなシステムが構築できるのもデジタル・コンテンツならではの特徴であろう。このシステムがうまく普及すれば良いと思う。

司会:技術革新によってデジタル・コンテンツの正しい利用回数がカウントされ,権利者に利益が配分されるようになると,コンテンツの2次利用が活発化するのか。

櫻井氏:新しいデジタル・コンテンツについて,このシステムを利用したビジネスが軌道に乗れば,これを利用する権利者が増えるだろう。その場合でも,やはり大きく問題となってくるのは過去のコンテンツである。権利者のうち,一人でも2次利用を許諾しなければ,「2次利用禁止」とのデータがIDに付されるだろう。
三好内外国特許事務所 弁理士 小西恵氏
三好内外国特許事務所
弁理士 小西恵氏

小西氏:著作権法では,基本的に完成に複数の人間が関わった著作物は,それぞれが著作権を持つ。ただし,映画コンテンツだけは,著作権法上,映画製作者一人に権利を集中させている。これは,映画製作には多額の資金を投入しており,資金回収する必要性が高いことが理由の一つである。映画は,当初から資金回収の手法としてコンテンツの2次利用をビジネス・モデルに組み込んでいる。製作に多数の人間がかかわる映画コンテンツについて多数の権利者が存在すると権利処理が複雑になり,2次利用が難しくなってしまう。映画コンテンツの場合は,コンテンツの円滑な流通のための処置の必要性が予見され,著作権法に組み込まれたわけである。
 著作権法を改正するという議論では,この考えを放送コンテンツや音楽コンテンツなどにおし広げていくようになるのだろうか。

櫻井氏:放送コンテンツでも映画コンテンツに関する考えは参考になるだろう。テレビ番組の撮影に参加して,それがテレビで放送されたということは,「公開されて2次利用されることを前提として参加した」ということであり,合理性はあるとも考えられるだろう。「インターネットでは公開したくない」という権利者に対しては,権利者の名誉・声望を尊重することはもちろんであるが,その上で,「一度公開したものだから,2次利用して利益が生まれればそれでいいのではないか」という考え方もできるのではないか。

小西氏:映画コンテンツやテレビ番組のように多数の人間が権利者になる放送コンテンツと,音楽,映像や小説のように多くても数名の人間で完成するコンテンツは区別して考える必要があるだろう。放送コンテンツは,製作費がかかるという点で映画コンテンツと似ているので,映画の著作権に関する考えがなじませやすいかもしれない。
 一方で,デジタル化しただけの既存の文学や芸術などのコンテンツをどう取り扱うかは今後の課題といえるのではないか。

櫻井氏:「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」は,デジタル・コンテンツをネット上で2次利用しやすくするための著作権特別法を提言している。
 本特別法が雑誌出版業界まで広がることを望む声も上がっている。雑誌は,一般的に文章や写真,イラストなど複数の著作権が積み重なって存在している。例えば,カメラマンとの契約で「写真を雑誌に掲載する」許諾を得る場合でも,過去に掲載した写真についてはネット上での掲載の許諾までは得ていない場合が多い。これでは過去の記事のアーカイブをデジタル化してネット上で公開したり販売することができない。

小西氏:“クリエイティブ・コモンズ”という取り組みがある。これは,自ら創作したコンテンツを何とかして流通させたいと願いながら,コンテンツを流通させる力が不足している権利者たちが集まり,標準となる契約モデルを作り,コンテンツの流通を促進させる活動である。「過去のコンテンツをどうするか」という問題は依然として残るが,権利者たちの自主的な取り組みと法律面での取り組みとが相乗効果を生むようになれば素晴らしいことであろう。

第1回:コンテンツの流通促進のカギは法改正か標準契約モデルか
第2回:標準化された著作権管理技術でコンテンツの流通が活発化
第3回:まだ改善の余地がある著作権法〜特別法の制定も考慮すべき





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