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実際のアントレプレナーシップ論講座オープンスクールは3カ月間に二つの課題と自分達のチームの事業計画,合わせて三つのテーマに当たります。最初の2週間が自分達の事業計画,次の4週間が最初の課題,次の3週間が二つ目の課題,残りが再び自分達の事業計画の期間としています。 最初の2週間は,チーム・メンバーのお互いを知ってチームを立ち上げる時期になります。初回の講義では制限時間が厳しいチーム対抗のゲームをしてもらいます。時間に追われる中,メンバーの本当の姿が垣間見られます。 この時期には,チーム・メンバー一人ひとりのやりたいことを話し合ってもらいます。やりたいことが必ずしも大儀になるとは限りませんが,大儀に至る出発点になります。やりたいことは一人ひとり違うので,なかなかうまくまとまりません。誰か一人のやりたいことを受け入れてしまっても悪くはありません。しかし,他のメンバーがチームに主体的に参加できずに一歩引いた状態になってしまってはよくありません。チームが機能するには,全員が主体的に参加できることを目的にしなくてはなりません。話し合いの中で,表情などを見ながら全員が主体的に参加できることをチームが目指すものとして決めていきます。 余談になりますが,先進国の中で最も言葉以外のコミュニケーションを重視するのが日本,全く重視しないのがドイツと言われています。日本人にとっては,言葉として発せられない表情や場の雰囲気がとても重要です。ドイツ人にとっては言葉として発せられたこと以外は基本的に考慮されません。多民族社会の米国でもドイツに近い傾向があります。ドイツや米国でチームを成立させるためには,チームが目指すこと,チーム・メンバーがやらなくてはならないこと,やってはいけないことを契約書のように書くことでうまくチームが機能することもあるくらいです。 また,講座は講座であって,本当に自分が一生かけてやっていく事業ではないという点への対処も必要となります。これは講座に限ったことではなく,人生を生きていく中で日々直面することでもあります。「日々やらなくてはならないこと」は,「人生を通してやりたい大きな目標」からは程遠いことがほとんどです。しかし,日々やっていくことと人生を通してやっていくことを分けてしまっては,いつまでたっても大きな目標は達成できません。日々のことを人生を通してやりたいことに関係付けて一歩ずつ目標に近づいていくように道筋を作る必要があります。同じく講座で取り組むことを人生を通して取り組むことに関係付けていくのが良いやり方です。 最初の課題の期間に,チームワークが機能し始めるチームもでてきます。多くのチームはそこまで行きません。次の期間では脱落者が出て,軌道に乗らないチームも出てきます。ここであきらめてしまえばチームワークを体験することはできません。最初の課題を終えると“燃え尽き症候群”に見舞われるチームも出てきます。チームを再起動できないのです。脱落者に意気消沈したり,燃え尽きたりしながら,チームワークを作り上げていくことになります。 チームが機能しなかったり,ムードに浮き沈みがあったりすることは,どんな人の集まりでも起こることです。そういう状態を乗り越える経験を積むことでチームワークについての技術が身に付いていきます。ですから,ある目的を短期間で実現するための集まりへの参加をいくつも経験しておくことは,チームワークについての技量を高める良い方法だと考えられます。「チームがどんな状況になったときにはどうすればいいか」という対策が身に付いていくからです。 参加者はこの講座だけをやっているわけではないので,講座への取り組み方には優先順位がついてしまいます。もちろんそれは悪いことではありません。しかし,「かかわったことはベストを尽くしてやりきる」という接し方が,今を最大限に効率的に生きることになります。そしてそれが将来に向けても最も効果的な経験の積み方になります。講座でもそのように伝えています。 ◆ 参考書籍 ◆ 山本七平著『日本はなぜ敗れるのか』(角川書店) 第二次大戦での日本の敗戦の原因から精神を大事にする日本人が組織になると上下や横の人間関係を気遣い思考停止になりがちなことを指摘しています。日本人と組織の関係を考えることができます。
柴田英寿
2002年から2006年まで日本知財学会理事。2002年から5年間,東京大学先端技術研究センターにて特任教員,非常勤講師としてアントレプレナーシップ論の前身講座を開講。知的財産権の研究会であるビジネスIPRとして韓国の同種団体IPMSとの交流や知財ゲームの普及などを展開。毎週水曜日朝に開催する朝食会(赤坂ブレックファーストクラブ)も有名。著書,寄稿多数。株式会社日立製作所勤務。著者ポータル。 |
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