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HP対ROT訴訟およびJazz Photo対Fuji Photo film訴訟 HP対ROT訴訟とJazz Photo対Fuji Photo film訴訟の場合,CAFCは,“使い捨て用”の表示とそれに関連する指示は特許権消尽を防ぐための制約条件とはならないと判断している(前回の連載)。 HPのインク・カートリッジのパッケージ添付書には(ア)カートリッジが空になったら廃棄すること,(イ)HPは詰め替え可能なカートリッジおよび詰め替え用インクを販売を販売していないこと,が書かれていた。また,Fuji Photo Filmのオリジナル製品の本体および本体が入っていた箱には,購入者がフィルムを取り除いてカメラを現像業者に渡さないよう指示が書いてあった。さらに,もし購入者がカメラを開けた場合に電気ショックの危険があるという注意書きがあり,現像された後,使い捨てカメラは購入者に返却されないという指示が書かれていた。 両事件においてCAFCは,これらの記載に関して,「販売者の意図は特許製品の購入者の使用,販売,あるいは変更する権利を制限するものでない」とした。特に,Jazz Photo対Fuji Photo Film訴訟において,「Fuji Photo Filmのオリジナル製品のパッケージに書かれた文は単なる指示および警告であって,販売契約における相互的約束をなすのものではない」とした。したがって,CAFCは,HPのオリジナル・インク・カートリッジおよびFuji Photo Filmのオリジナル製品の販売において,“使い捨ての用途のみ”(Single-Use Only)という制約条件は課せられてないので,特許権が消尽しているとしている。 Arizona Cartridge Remanufactures Association, Inc.対LexMark International, Inc.訴訟 一方,“Single-Use Only”の表示および指示方法が,合法的な制約条件として認められている場合もある。 Lexmarkは自社レーザー・プリンター用トナー・カートリッジを製造販売する際,“Prebate”プログラムというプログラムを実施することにより,使い捨て(Single-Use Only)の制約条件を付けた販売を行った。“Prebate”プログラムでは,トナー・カートリッジを購入使用した後に使用済みトナー・カートリッジをリサイクルのためにLexmarkに返却することに同意した購買者には,トナー・カートリッジをディスカウント価格で販売する。一方,同意しない購買者には,通常価格で販売するという選択肢を与えている。 北カリフォルニア地方裁判所は,“Prebate”プログラムは販売の際に消費者に選択の余地を与えて,それぞれの選択肢に妥当な対価を与えているので,独占禁止法違反にはならず,合法的な制約条件付きの販売と見なせるとした。しがたって,購買者が使用済みトナー・カートリッジをリサイクルのためにLexmarkに返却することに同意した場合は,特許権は消尽しないとされた。 Mallinckrodt, Inc.対Medipart, Inc.訴訟 また,製品の性質上,“使い捨て用のみ”(“Single Use Only”)の表示およびその指示が,制約条件として有効であるとされる場合もある。 Mallinkckrodtは霧状放射性物質を患者の肺に送る医用機器を病院に販売していた。パッケージには“使い捨て用”(“Single Use Only”)と書かれており,生物災害破棄物用の手順が指示されていた。Mallinkckrodt製品を購入し使用した病院は,使用済み製品をMediPartに送り,MediPartは放射線を照射した部品と新しい部品をプラスティック・バッグに詰め換えて病院に送り返していた。なお,その組立品はMallinkckrodtの商標と“使い捨て用”(“Single Use Only”)の文字は元のままであった。 1992年CAFCは,製品の再使用が潜在的に危険な場合,“使い捨て用のみ”(“Single Use Only”)という条件は,独占禁止法に違反するものではなく,合法的な制約条件と見なされるとした。CAFCは,MediPartの行為が“修理”はあるいは“再構成”のどちらに相当するかについて明確にしていないが,Mallinkckrodt製品の販売は使い捨て用のみという条件が付いているので,MediPartの行為が“修理”と見なされても,販売契約においてその修理は許されていないとし,Mallinkckrodtの特許権を侵害するとした。本事件では,インク・カートリッジやカメラと同様の“使い捨て用のみ”(”Single Use Only”)の表示およびその指示を添付しているが,製品の性質上,公益を重視して,制約条件の有効性を認めたといえる。 まとめ 上述したように,日本では,加工された特許製品に特許権を行使しても,特許権者が2重に利得を得ることにならない場合をある程度広く認めているといえる。さらに,日本高裁は,環境保全の理念を優先すべきであることを認めながらも,第3者が自由に特許発明を実施できるとすると短期的には製品の再使用が促進されるが長期的にみると新たな技術開発への意欲や投資を阻害しかねないとしており,特許権者の権利を重視しているといえる。 一方,米国特許法は,特許製品を販売するにあたり合法的な制約条件を付けていないと見なされれば,特許製品の購入者がその製品の所有者であることから,日本の場合よりもかなり広い意味での“修理”を特許製品の購入者に許しているといえる。 ※この連載は一般情報を提供することを目的としており,特定の事例に対する特定の法的アドバイスを行うためのものではありません。 ■ これまでの連載 ■ 特許権の消尽2−リサイクルにおける特許権侵害(1) 特許権の消尽2−リサイクルにおける特許権侵害(2) < 著者紹介 >
前川有希子(まえかわゆきこ),米国ワシントンD.C.弁護士 日立製作所中央研究所で研究者として医用画像機器の研究開発に従事し,博士号を取得した後,米国に移住した。2002年にPatentAgent,2005年にワシントンD.C.弁護士の資格を取得。現在は,米国大手法律事務所を経て、現在Terra Nova Patent Law, PLLC にて,主に,特許/商標権取得業務,オピニオン(知的所有権に関する有効無効性や侵害に関するアドバイス)ならびにデュー・ディリジェンス(知的所有権,ライセンス,共同研究契約に関する様々な調査)を担当している。
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