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「アントレプレナーシップ論」講座の中で確実に受講生たちを進化させられるのがプレゼンテーション(発表)です。 私が,「発表のトレーニングが必要だ」と強く思った動機は,受講生たちが一生懸命考えてきているのに,それを発表する時に伝え切れていなかいことが多かったことです。しどろもどろの発表をした受講生でも,後で個別に話を聞くとよく調べてあり,よく考えてあることがしばしばありました。それで,「伝え方でとても損をしている」と思ったのです。 講座では,毎回,数分の発表をする機会を設けています。その様子をビデオ録画機に撮って受講生に見せています。自分で自分を見ることほど納得できることはありません。最初は投影画面やパソコンの画面しか見ていなかった発表者が,2回目,3回目の発表の時には堂々と聴衆を見ながら話すようになります。ビデオを撮って受講生が自分で見ることができるようにインターネットにアップロードするには少し手間がかかりますが,効果から考えれば手間を惜しまず,是非やるべきです。 発表の様子は10項目からなるチェックリストで毎回,数人の聴衆に評価してもらいます。それと合わせてビデオを見ることでかなりの改善があります。最初の発表の時には事前に練習してこない受講生が多いのですが,2回目の時には練習してくることが多くなります。あまりにひどい自分の発表を見て(ショックを受けて),練習する気になったのだと思います。自分で必要性を認識することは学習の唯一にして最大のきっかけです。いくらまわりが言っても,本人がショックを受けて,これはダメだと思わなければ練習もしないし,改善もしません。ビデオはそれを解決するとても有効な手段です。 ≪プレゼンテーションチェックリストサンプル≫ 「聴衆を見ずに話してしまうこと」の次に気になるのは,「伝えようという意志が感じられないこと」です。言葉を発すればいいというわけではなく,相手を見て,伝えたいという意志を持ってしゃべらないと,何も伝わってきません。発表をするのは相手に伝えるためなのですから。 また,素人なので仕方ありませんが,文章と文章の間に「え〜」というつなぎの言葉が入りがちです。相手に伝えるプロであるアナウンサーでもつなぎの言葉が出てしまうことがあるのですから素人から出るのは当然です。しかし,少なくなるように気を付けることで聞き手がプレゼンを理解しやすくなります もう一つ,姿勢(立ち姿)も気を付けるとよいです。足を肩幅に開いて手は体の横,背筋を伸ばして,自然体でいるのが基本です。基本なのですがなかなかできません。ポケットに手を入れたり,手を組んだり,足を交差させたりしてしまうことが多いです。そういうスタイルが絶対悪いわけではありません。伝えたいことが伝わっていればいいのですが,崩れた姿勢だと聴衆がその姿勢に気を取られてしまって,プレゼンの内容を理解してくれなくなることが多いです。ですから,基本は自然体(講座ではレディーポジションと呼んでいます)であるのがよいです。 細かいことですが,発表者は投影画面に向かって左側に立つことが多いです。その場合,マイクを右手で持ち,レーザーポインターを左手に持つようにします。反対に持つと体が投影画面に向きがちで,聴衆の方を向きづらくなってしまうからです。右利きの人が多いので,レーザーポインターを右手で持ちたくなりますが,左手に持つように習慣にしておくと良いです。 日本の学校はプレゼンのトレーニングをほとんどしません。特別に上手になる必要はないにしても,ある程度のトレーニングはしておくべきです。学校ではトレーニングされませんが,ビデオ録画機(カムコーダー)があれば,家でも会社でもできるので,ちょっと恥ずかしいですが意を決してやってみましょう。効果は絶大です。 ◆参考◆ 2005年6月12日,Steve Jobs氏が米Stanford Universityの卒業式で話したスピーチは大変有名です。熱くも激しくもないスピーチですが,伝わってくるものがあります。Youtubeなど動画投稿サイトで見ることができるので参考のために見ておくと良いでしょう。 エレベータ・テスト (次ページへ)
柴田英寿
2002年から2006年まで日本知財学会理事。2002年から5年間,東京大学先端技術研究センターにて特任教員,非常勤講師としてアントレプレナーシップ論の前身講座を開講。知的財産権の研究会であるビジネスIPRとして韓国の同種団体IPMSとの交流や知財ゲームの普及などを展開。毎週水曜日朝に開催する朝食会(赤坂ブレックファーストクラブ)も有名。著書,寄稿多数。株式会社日立製作所勤務。著者ポータル。 |
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