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柴田英寿のアントレプレナーシップ論 オープンスクール


アントレプレナーシップ論オープンスクール〜第11回〜
リーダーシップ

[2009/09/29]

 リーダーシップは誰もが持つべきものですが,リーダーはただ一人。そして,リーダーはメンバーのリーダーシップを最大限に発揮させられる人だと私は考えます。

 リーダーについてもリーダーシップについてもたくさんの考え方があり,似ているようで違いがあります。一口にリーダーといってもいろいろな状況があるので違っていて当然なのです。権力をつかみ,守っている立場にある人にはマキャベリズム(『君主論』)が合うでしょうし,1秒の判断の遅れが生死を分ける軍隊では軍隊式のリーダーシップが必要になります。ここでお話しするのは,ごく普通の人が集まって普通ではありえない新しい事業を作っていく際のリーダーシップです。

 受講生のチーム運営について私は口出ししません。リーダーを決めるチームもあれば,決めないチームもあります。リーダーが有能であればチームの生産性が高いことは事実です。しかし,リーダーを決めることは簡単なことではありません。誰かがリーダーになれば他のメンバーのモチベーションが下がる可能性があります。理想論ではありますが,メンバー全員のモチベーションが高い状態を目指すべきです。実現したら奇跡かもしれません。しかし,目指すのは理想であり奇跡です。「奇跡くらい起こせる」というくらいの漠とした自信がなくてはアントレプレナーシップを語れません。

 たった3ヶ月の間でもチームの中で求められるリーダーシップには変化があります。チームを立ち上げる時,目指す事業を決める時,計画を分担して仕上げていく時,中心になる人に必要な性格は少しずつ違います。この違いに合わせて自然にリーダーが変わっていくチームが理想ともいえます。

 メンバーのリーダーシップというのは,「この調査は私がやります」「この人へのヒアリングは私が行きます」と自分が積極的に動く意思を表明してどんどん実行していくことです。誰だって忙しいのですが,忙しさに負けないことがリーダーシップです。このとき,自分がやると言っても,他のメンバーを排除しないことも必要です。責任は自分が持ち,できるだけたくさんの人に関与してもらって進めるのが良いリーダーシップの発揮の仕方です。関与する人が多くなれば,コミュニケーションに費やす手間が増えるのですが,それをいとわないのがリーダーシップです。

 リーダーが発揮する能力がリーダーシップで,それ以外のメンバーが発揮するのは「フォロワーシップ」だとする定義の仕方もありますが,私は違うと考えています。ジョン・F・ケネディーの有名な大統領就任演説に「国家が自分のために何をしてくれるかではない。あなたが国家のために何をするかが重要なのだ」というのがあります。ケネディーは,混沌とした多くの人々の思いを言葉にして,多くの人の心に火をつけました。これはまさに卓越したリーダーの能力です。誰にでもできることではありません。しかし,ケネディーが語ったのは,「俺について来い」ではありません。「君が先頭に立つのだ」です。これはフォロワーシップではなくリーダーシップです。

 事業計画について学びたいという血気さかんな人達の集まりをリーダーとしてまとめていくのは簡単なことではありません。しかしそれを実現するのがチーム全員の課題なのです。実現のための一つの要素が「リーダーを一人決める」ということなのです。そこで決ったリーダーは大変ですが,意思決定をしなくてはなりません。それも,後ではなく「今」しなくてはなりません。その場で決めるのがリーダーなのです。

 受講生のチームのリーダーにはこんな人がいました。


≪うまくいった場合≫
・チームで1番年下の人(みんなにかわいがられ支えらて上手くいく)
・「この事業をやりたい」という強い思いがある人(ただしあまり指示をしない人)
・判断力,分析力が高く,チームのことを誰よりも考える人(リーダーの王道)


≪うまくいかなかった場合≫
・高圧的で回りに指示ばかりして自分は働かない人
・意思決定できない人(年下でも,あまりに能力を超えてしまうとうまくいかない)
・メンバーとあまり話をしない人(会話はとても大事)

などです。

 一人の人がなるべきリーダーと全員が発揮すべきリーダーシップの違いを考えるとよいと思います。

◇参考書籍
『リーダーシップの本質』(ジョン・ガートナー,ダイヤモンド社):組織の中で昇進していく人たちは学校時代から点取り虫でリーダーにふさわしくない人たちだということを主張しています。リーダーは自分がよく評価されることではなく以下に周りの人の潜在能力を発揮させるかにこころを配る人だとしています。そのためには,リーダーは一般教養(小説や映画など)を学び,プレゼンテーションの技術を磨かなくてはならないとしています。リーダーシップについての卓越した見解が書かれている本です。


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柴田英寿
柴田英寿氏 2002年から2006年まで日本知財学会理事。2002年から5年間,東京大学先端技術研究センターにて特任教員,非常勤講師としてアントレプレナーシップ論の前身講座を開講。知的財産権の研究会であるビジネスIPRとして韓国の同種団体IPMSとの交流や知財ゲームの普及などを展開。毎週水曜日朝に開催する朝食会(赤坂ブレックファーストクラブ)も有名。著書,寄稿多数。株式会社日立製作所勤務。著者ポータル




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