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米国知財レター

見直しの時期にきた米国知財マネジメント
−保守的な米国代理人の存在理由と米国代理人への指示形態の改善点−

第4回 米国代理人への指示形態の改善

[2009/10/14]

奈良先端科学技術大学院大学
産官学推進連携本部
客員准教授/弁理士 吉田 哲
POSZ LAW GROUP, PLC(現職)
客員准教授/弁理士 吉田 哲






 100年に1度といわれる世界的不況の中,日本企業の知財戦略も経済状況に応じた見直しが求められている。海外での知財戦略に注目すると,今後,確実に改善が必要とされる点の一つとして,弁護士や弁理士(代理人)の効果的な活用が挙げられる。特に,海外代理人の費用管理は,きわめて重要な課題である。一般的に日本企業は国内代理人への費用の支払いと比較して,海外代理人に対しては寛容な支払いを行ってきているといわれるからだ。
 そこで,米国特許事務所に勤務し,米国で知的財産制度を研究する一方,米国代理人の費用削減,業務改善など,実務上の問題も研究している弁理士の吉田哲氏に“米国代理人の効果的な活用法”として,実務における業務改善のポイントについて寄稿してもらった。4回に分けて連載する。
 最終回となる今回は,米国代理人に対する指示形態改善のポイントについて紹介する。

 最終回では,今後の日本側の対応として,指示形態の改善について提案する。現状の米国特許実務の問題点としては,「日本の代理人と同じように,米国の代理人は自分たちの要望(顧客ニーズ)を理解してくれて,それに沿って対応してくれるだろう」と日本側が期待している点にあると考える。しかし,本稿において紹介したように,日本の担当者と『場』を共有する機会のない多くの米国代理人には,顧客ニーズのほとんどが伝わっていないと考えられる。

顧客ニーズの伝達
 まず,米国代理人に積極的対応を期待するのであれば,国内の代理人に対するよりも明確にその期待(顧客ニーズ)を伝達する必要があるだろう。前述したように,形式知を重視する西洋人に対しては,何をすべきかについて,明確な指示を伝達する必要がある。日本の代理人に対するように「適当に処理してください」といっても,米国代理人は,その企業の知財戦略や商品展開を知らないため,何が適当か理解できないのである。積極的対応を米国代理人に求めるのであれば,まず,顧客ニーズを米国側に伝達する指示形態が必要と考える。

 顧客ニーズの伝達方法としては,必ずしも,常に正式な文面で説明する必要はないだろう。一例として,発明の重要度を伝えるのであれば,事前にルールを定めておけば,数字の1〜10,A〜Cといった記号を使う手法でも,十分に伝わるものと考える。 特に,積極的対応を期待する場合は,許容できる費用範囲も伝えておくことが望ましい。もし「この案件は重要である。より広い権利範囲となるようにクレームの修正を望む。ベストを尽くしてくれ」といった指示を送った場合,米国側ではベストを尽くすために,5000米ドルでも10000米ドルでも費用を請求してくるかもしれないからである。費用範囲については,案件によって大きく変動するものの,「2〜3時間程度」,「1500米ドルまでなら容認」といった伝達があれば,米国側も積極的対応を取りやすくなるものと考える。
 日本側の文化として,費用(お金)の指定をすることに抵抗があるかもしれない。しかし,代理人とのお金の話に遠慮は不要であろう。筆者の調査であるが,作業時間(その費用)を指定されることに米国代理人はあまり抵抗はない様子である。むしろ「作業時間をしてされたほうが,(迷わなくてよいので)作業しやすい」といった好意的意見が聞かれたぐらいである。

フィードバックの実施
 次に,米国代理人には何らかの形で日本側の満足度をフィードバックする必要がある。

(1)積極的対応の評価
 積極的対応を取ることは,米国代理人にとって負担が大きい。積極的対応を取った米国代理人については,高い評価がなされている点を明確に伝えることが必要と考える。フィードバックも,自由度の伝達と同様に,必ずしも文面で伝える必要はなく,数字や記号で十分だろう。

(2)保守的対応の評価
 保守的対応についても,今後の業務改善を願うのであれば,フィードバックする必要がある。費用とのバランスを重視するのであれば,「自分たちの指示通りの作業であれば,もっと低額で処理してほしかった」というフィードバックである。このようなフィードバックを繰り返すことにより,米国代理人も保守的対応をするのであれば,もっと低額で処理しなくてはならない,という点を理解できる。本稿の課題ではないが,米国側には「保守的対応だからといって安くする理由はない」と考えている代理人も多いのである。この点に関しては,回を改めて紹介する予定である。

(3)日本側の負担
 フィードバックすることは,日本側の負担となるだろう。しかし,顧客がサービスと費用のバランスでどの程度満足しているのか,を伝えなければ,米国代理人のサービスは永遠に向上しないだろう。むしろ,苦情になるまでその費用は高騰しかねないのである。よって,日本側の満足度が米国側に伝わっていない現状では,何らかの形でフィードバックをする必要はある。その形態としては,ある期間を限定して,すべての案件についてフィードバックすることも良いし,無作為に選んだ案件だけでも良いだろう。
 一旦,米国代理人が日本側のニーズや評価を理解してしまえば,頻繁にフィードバックをしたり,継続したりする必要性は少なくなる。


おわりに
 以上,米国代理人が保守的対応を取る理由について筆者の経験に基づいて分析した。その原因には,日本側の米国代理人に対する誤解(過度の期待)と,知識の伝達形態の違いが存在するものと考える。本稿が日本企業にとって米国特許実務の業務改善に役立てば幸いである。


※ 本調査報告は,TEPIA知的財産学術研究の一環として実施されたものです。



見直しの時期にきた米国知財マネジメント

第1回 米国代理人の対応(保守的,積極的)と自由度の定義
第2回 保守的対応の理由と日本側の誤解
第3回 保守的対応に対する日本側の留意事項
第4回 米国代理人への指示形態の改善






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