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藤森涼恵の知財show me the money


知財Show me the money
第5回 産官学連携で稼ぐ

[2009/10/26]

(藤森涼恵=Ocean Tomo, LLC. Director)


 今回は大学などの研究機関が技術移転やライセンス活動によって稼ぐ方法を考える。
 大学が独立行政法人となり,産官学連携による技術売却・ライセンスによる利益獲得が大学にとって死活問題となりつつある。技術売却・ライセンス活動を成功させるためには三つの課題の克服が必要だ。(1)成果技術の性質,(2)権利化された技術の品質,(3)市場への情報発信方法について順に解説する。

成果技術の性質
 1件の特許が劇的な権利確保効果や巨額の技術移転を実現することは稀である。対象技術全体をうまくカバーするような複数の特許の束を構築し,この束,つまりポートフォリオ単位で取り扱う方が成功率は高い。ところが,大学の研究開発活動の成果は単独特許のことが多く,ポートフォリオが構築されていることが稀だ。これが「成果技術の性質」の問題である。
 大学に研究開発成果をもたらす所属教授の研究開発目的は,特許ポートフォリオを構築することではない。よってこの問題は,教授以外の人物,つまり大学の「技術移転・ライセンス・マネージャー」によって克服される必要がある。

権利化された技術の品質
 次に技術の品質の問題を考えてみる。大学研究機関により生み出された技術は,ノウハウとして維持あるいは特許権として権利化されると思われるが,ここでは権利化した場合を考える。
 大学機関は,予算も限られていることから海外特許を取得していないことが多い。ところが,今日現在,大学からの権利取得に積極的なのは海外企業だ。例えば米国企業は,やり手の米国大学との交渉に嫌気がさし,日本の大学発技術の導入を検討し始めている。市場は海外にあるのだ。
 しかし,市場に出せる弾,すなわち外国特許が少ないために機会を喪失している日本の大学が多い。また,外国特許があっても,請求項の書き方が悪く,良い特許に仕上がっていない。請求項が日本特許の単なる「翻訳」であり,不自然かつ不明瞭な英語の日本発特許は数多い。加えて,日本には請求項を広くしておく方が良いという通説があるのか,請求項の表現が一般的な日本発特許も多い。一般的な表現は具体的製品に結びつきにくく,「この特許の請求項をこの製品は使用していない」と主張しやすくなり,権利行使には適さないことが多い。このような特許では技術を無償公開したに過ぎず,使われ放題だ。高品質の米国特許を取得するなら「この技術を特許化したい。どうすれば強い特許になるか」と,英語を母国語とする米国特許弁護士に直接請求項をドラフトさせるほうが良い。

市場への情報発信方法
 最後は市場への情報発信の問題だ。いまだに技術移転やライセンス活動の技術プレゼンテーションを開発者である教授に任せるケースが多いようだが直ちにやめるべきだ。教授陣は聞き手に「技術を欲しい」と思わせるマーケティング・プレゼンテーションのトレーニングを受けた人ではない。いくら良い技術でも,聞き手に理解してもらえず,「それでいくら儲かる?」ということがピンと来ないようなプレゼンテーションをされては誰も欲しがらない。ここでも必要なのは企業に「欲しい」と思わせるプレゼンテーションを行える技術移転・ライセンス・マネージャーだ。
 産学連携を成功裏に進める方法は,実はこのコラム1回ではカバーしきれない。原則は,良い技術を教授が開発し,そこから強い権利を獲得し,技術移転・ライセンス・マネージャーが所有権利リストを俯瞰し,ポートフォリオとして構築できる束を同定し,その束単位で企業に「欲しい」と思わせるプレゼンテーションをすることだ。
 まずチェックしてみよう。今,存在する技術を,これまでやってきたプレゼンテーションで披露したとき,あなたならお金を出して取得したいと思うか。あなたがこの技術をベースに事業計画を描くに足る情報が提供されているか。技術を,そしてプレゼンテーションを見て,あなたが私財を投じてでも自分で事業化したい,取得したい,と思えないのであれば,あなたの聞き手も同じ思いを抱くに違いない。



藤森涼恵(ふじもりすずえ)
藤森涼恵氏Ocean Tomo, LLC. Director,ニューヨーク州弁護士

 1992年京都大学法学部卒業。1999年New York UniversityのロースクールでLLM(Master of Laws)を取得。1992年松下電器産業株式会社に入社,法務部門にて米国知財侵害訴訟,知財ライセンス案件,技術提携案件,技術規格設立案件などを担当。松下電器在職中にニューヨークのWeil, Gotshal & Manges, LLPに外国人インターンとして勤務,訴訟案件を担当。2002年に経営コンサルティングのMcKinsey & Company, Inc.に移り,様々な業界におけるマーケティング立案,製品開発立案,リテール戦略立案などのコンサルティングを提供。現在,Ocean Tomoのシカゴ本社にて日本市場のニーズに合わせてサービスを提供するジャパン・サービスを担当すると同時にアジア市場全体を総括。知財ポートフォリオの定量的評価,知財棚卸支援,知財売買支援,研究開発戦略立案,知財活用・管理戦略立案などを提供している。




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