![]() |
![]() |
ビジネス・モデルはビジネスをモデル化したものです。つまり,ビジネスの構造を骨格の部分だけ描いたものです。モデル化にはレベルがあります。レベルがあるというのは実際のビジネスに限りなく近いレベルから骨格の構造に絞り込んでしまったレベルまであるということです。具体的に描くか抽象的に描くかと理解しても良いです。例えば,「お客様にモノを売って代金をもらうビジネス」としてしまうとほとんどのビジネスが当てはまってしまいます。あまりに具体的でも要点が分かりにくくなるので,ビジネスの構造が分かるようにうまく描くのがよいビジネス・モデルの描き方です。 ビジネス・モデルを描く際のいくつかのヒントを書いておきます。 本当にお金を払ってくれるのか 「市場規模がこれだけあって,シェアをこれだけ取るので,売れます」という仮定は,ほとんどの場合,実現できません。「これだけ売れる可能性がある」という仮定に過ぎません。理由は,お客さんは必ずしも自分たちから買う必要がないことがほとんどだからです。誰にでも困っていることはたくさんあります。しかし,お金を払ってまで困っていることを解決したいと思うことはそれほどありません。お客さんが買わざるを得ない理由があることはビジネス・モデルを考える上でもとても大事なことです。一番大事なことといっても良いかもしれません。 お客さんがお金を払うのは, ・必需品・・・衣食住や仕事の上でどうしても必要なもの ・欲望をかき立てるもの くらいです。 かつ,こういうものは今も何かで満たされているわけですから,それに勝る値段の安さや手に入れやすさ,さらに強い購買意欲の刺激などが必要になります。 取り引き形態から見たビジネス・モデルのパターン分け 1.売るものはモノか,モノでないか モノの場合,値段をお客さんに納得してもらいやすいですが,モノでない場合は,本当にお客さんがお金を払ってくれるほどのものなのか分かりにくい場合が多いです。 2.売る相手は企業か,個人か 企業が企業に売るモデルをBusiness to Business (BtoBまたはB2B)といいます。企業が個人に売るモデルをBusiness to Consumer (BtoCまたはB2C)といいます。 B2Bの場合,お客さんが1社でも事業が成り立つことがあります。もちろん1社に頼ってしまうと,その会社との事業がだめになったときの影響が大きいですが,継続的に取り引きできる関係になれれば安定した事業となります。B2Cは参入しやすい半面,同じようなことをやっている競合がいる可能性が高く,競争が激しいと考えるべきです。B2Bは取り引きを始めるためには信頼関係を築かなくてはなりませんが,一旦,取り引きが始まるとB2Cに比べて事業が安定する可能性が高いです。B2Cの場合,新規にお客さんを獲得するだけでなく,一度買ってもらったお客さんに再び買ってもあらう方策を考えることも重要です。 3.自分たちがやる仕事は何か? モノを売るにしてもサービスを売るにしても,立ち上げたばかりの企業が研究開発から商品開発,製造,販売,アフター・サービスまですべてやるのは大変です。多くの場合,何かに集中して始めることになります。何かに集中すると,売る相手は企業になることが多くなります。先ほど述べたB2Bです。研究開発に特化して技術を製造・販売する会社に売るなどです。製造には設備投資が必要なことが多く,販売やアフター・サービスには組織力が必要になるので,多くの場合,事業開始当初は,研究開発や商品開発に特化することになります。 子供っぽいビジネス・モデルと大人っぽいビジネス・モデル 子供っぽいというのは「夢見がちな」あるいは「世間知らずな」と読み替えることもできます。よく出てくるものに商売の協力者が信頼できることを前提にしているものです。意図して前提にしているのではなく,協力してもらうことが難しいことに気付いていないことがほとんどです。例えば, 1) 自分たちが考えたアイデアを有名企業(米Apple Inc.や米Google Inc.など)に売るという案 アイデアを買ってもらうというのは並み大抵のことではありません。ほとんどの場合,相手にもされませんし,話をしにいったらアイデアだけ取られてしまうこともあります。特許や営業秘密保護などで厳重にこちらのアイデアを防御した上でないと成り立ちません。 前述の新素材ベンチャー企業の課題で,あるチームがストッキングを作るというアイデアを出しました。そして,それをアパレルの大手企業に持ち込みました。その企業がストッキングのブランドをいくつか持っている企業だったからです。技術をこちらが抑えていればこの関係は魅力的です。自分たちが研究開発し,商品開発は協力関係で,製造・販売は大手企業でというビジネス・モデルです。 2) 代理店を使って全国に売るという案 販売地域を拡大するために販売代理店を使うという案がよく出てきます。しかし,販売代理店が売りたくなるような条件はなかなか出せるものではありません。売るものが何なのか,どうやって売ればいいのか,売った後の修理はどうするのかなどを代理店に説明して回らなくては成立しないものです。 大人のビジネス・プランとは,他人が簡単に手伝ってくれるものではないことを理解して作られたものを指します。 ネット・ビジネスのパターン ネット・ビジネスは身近にあるため,多くのチームが考えます。ネット・ビジネスにはおおむね以下のビジネス・モデルがあります。 1) 広告モデル・・・サービスを無料で提供する代わりに広告を見せて,お金はサービスの利用者ではなく広告主からもらうモデルです。Googleなど多くのネット・ビジネスが取っているビジネス・モデルです。 2) 会費モデル・・・サービスの提供を受けるために会員登録させて会費を払わせるモデルです。簡易サービスはまでは無料として,特別なサービスを受けるには会費を払わなければならないモデルが多いようです。Mixiなどがこれに当たります。 3) 販売モデル・・・モノやサービスを売って利益を出すモデルです。アマゾンやiTunesが典型です。 4) コンテンツ販売モデル・・・自分たちが作った情報を売るモデルです。 5) 電子商店街モデル・・・楽天が典型です。 こうしたネット・ビジネスのモデルは,ネットが登場する前から存在していて,ネットによってやりやすくなった場合がほとんどです。 特許庁のデータベースを活用する インターネットでの調査の節(参考コラム)で述べたように,特許庁の特許電子図書館には膨大なビジネス・モデルの出願特許が登録されています。何かのビジネス・モデルを考え付いたらこのデータベースを検索して類似のモデルを探すべきです。 (次ページへ)
柴田英寿
2002年から2006年まで日本知財学会理事。2002年から5年間,東京大学先端技術研究センターにて特任教員,非常勤講師としてアントレプレナーシップ論の前身講座を開講。知的財産権の研究会であるビジネスIPRとして韓国の同種団体IPMSとの交流や知財ゲームの普及などを展開。毎週水曜日朝に開催する朝食会(赤坂ブレックファーストクラブ)も有名。著書,寄稿多数。株式会社日立製作所勤務。著者ポータル。 |
<過去の連載>
![]()
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
企業戦略 | CIPO | 政策・法制 | 職務発明 | 訴訟 | 人材育成 | 産学連携 | 提言 | ニュースリリース | イベント・セミナー
| このサイトについて | 著作権・リンクについて | 情報提供 | 広告掲載について |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||