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――国際標準化といっても,人によって何を指すか異なるようですね。 国際標準化は一般に(1)ルール,(2)試験・評価方法,(3)技術仕様の三つに分類できます。簡単に言うと,(1)はテロ対策などの安全確保策やISO9000などの品質保証といった,技術とはあまり関連性ない取り決めであり,(2)は電池や光触媒など技術関連製品に対して合否を判定する試験・評価方法の規格,(3)は放送や通信などインタフェースを介してさまざまな機器がつながる際にその互換性を得るための仕様の規格となります。 技術系企業にとって(2)と(3)は,ビジネスに大きくかかわるため,適切な対応策を取る必要があります。例えば,(2)の試験・評価方法でもし自社の製品が不合格と判定されてしまうと,その企業は製品を市場に出すことはできなくなります。(3)技術仕様では,製品を市場から排除するものではありませんが,その規格から外れることでほかの多くの機器と互換性が取れないことから使ってもらえなくなる可能性が高まります。
標準化の作業では,それを自分たちに有利となるように持っていこうとする世界中の人たちとの交渉しなければなりません。言語や教育の違いから日本人にとっては決して得意な領域とは言えないでしょう。企業側も標準化の活動は利益を生まないということから,あまり重視してこなかったようです。ただ,市場がグローバルに広がった現在では日本企業といえどもその認識を変えざるを得ません。最近では標準化作業の会合に積極的に出席したり,取りまとめ役の議長に就任したりする日本人が増えていると聞きます。 ――日本が標準化を主導するようなケースは今後,増えてくるのでしょうか。 少なくとも私が専門とする通信分野,特に次世代の携帯電話では日本が存在感を発揮するような状況となっています。そのほか,燃料電池に関する試験・評価方法がここへ来てIEC(国際電気標準会議)でいくつか採用されたという話も聞いています。 ――(3)の技術仕様は,知財戦略ともからんでくるのではないでしょうか。 携帯電話における米Qualcomm, Inc.のCDMA関連技術のように明らかにキーとなる技術を有しているケースであれば独自の特許として権利化した方が高い実施料を取れますが,現在では,特定の1社がキー技術を占有することは難しくなっています。一方で,複数の特許権者の特許を持ち寄って一元管理するパテント・プールに入れることにすれば,各権利者の実施料は少なくなりますが,その特許で確実に収入が得られます。自社の特許を単独とするか,パテント・プールに入れるかは企業の知財戦略上,企業にとって重要な判断となります。知財部門と研究開発部門が密にやり取りし,標準化を意識して特許を選別するといった対応策を取る必要があります。 ――パテント・プールに問題は生じていないのでしょうか。 例えば,次世代の携帯電話規格であるLTE(Long Term Evolution)では,パテント・プールで複数の団体があることから権利の一元管理が難しい状況となっており,その場合は必ずしもパテント・プールの特徴を生かせなくなる可能性があります。 ――最近の国際標準に関する海外の動きについては,いかがでしょうか。 特に中国の動きに注目する必要があります。政府,企業とも標準化に対する意識が高まり,LTEなど標準化技術に関連する中国企業の特許出願が増加しています。今後は,欧米だけでなく,中国の動向も踏まえながら,国際標準化戦略を考えていく必要があります。 ――標準化活動では交渉力が重要だと思いますが,日本では人材の育成は進んでいるのでしょうか。 総務省が2008年に「ICT標準化・知財センター」を設立したり,経済産業省が企業や大学に講師を派遣したりするなど,国が人材育成に取り組む活動はいくつかあります(関連記事)。ただ,交渉を有利に進めるには,基本的に皆が使いたいと思う技術を日本が提案できるかどうかにかかっています。例えば,あまりにも突飛なアイデアを主張すると,いかにも自社の利益のためではないか(特許を持っているのではないか)と敬遠されてしまいます。一方で“良いものを作る”という思想があれば,多くの人に受け入れられやすくなり,交渉以前に有利に立てます。日本は高い技術力を生かしてそこを前面に押し出せばよいのではないでしょうか。 ――日本は標準化に関して必ずしも悲観的になる必要ははないということですね。 そう思います。ただし,国際標準が取れたとしても,それはツールの一つにすぎません。そのツールを使って世界の中でビジネスを取れるかどうかは,それを生かす個別の企業の姿勢や特許を含む戦略にかかっています。また,日本のすべての企業で国際標準化に対して十分な戦略が取られているわけではありません。そこが不十分な企業は,国際標準を踏まえた戦略の強化を図るべきでしょう。 |
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