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“i4i vs. Microsoft判決”から学ぶこと
[2010/02/16]


Charles R. Macedo
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP,パートナー,ニューヨーク州弁護士
藤森涼惠
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP,ニューヨーク州弁護士

「i4i v. Microsoft」判決とは:
 ソフトウェア・コンサルティング会社であるカナダi4i, Inc.は1998年に登録された米国特許5,787,449を所有していた。この特許は電子文書の構造に関する情報の処理および保存に関する技術を権利化したものである。i4iはこの技術を米Microsoft Corp.の「Word」がカスタムXMLを含む文書でも使用できるよう機能拡張するアドオン・ソフトとして商品化した。 2003年以降のMicrosoft「Word」はXML編集機能を有していたが,2007年になってi4iはテキサス東部地裁においてMicrosoftを特許侵害で訴えた。陪審員はMicrosoftによるi4i特許の侵害および2億9000万米ドルの損害賠償を認めた。さらに,裁判所は侵害技術であるXML処理機能を持つ「Word」の今後の販売を禁止する永久差し止めを決定した。差し止めはすでに「Word」を保持している顧客に対しては適用せず,2009年8月11日の判決日から60日後に発効されるよう制限が付けられた。この地裁判決は連邦巡回控訴裁判所に控訴され,連邦巡回控訴裁判所は差し止めの開始日を2010年1月11日に延期することを除き,地裁の決定を支持した。


【レッスン1】
侵害を提訴された技術部分を取り外し可能なモジュラーとして再設計しておけば,製品全体の差し止めを防ぐことができる

 「Word」のXML編集機能はモジュール化されていたため,容易に取り除けるものであった。XML編集機能のみを取り除けば「Word」は非侵害製品となり,差し止め発効後もXML編集機能を取り除いた「Word」は問題なく販売できるのだ。  ある自社製品のある機能に対して特許侵害を提訴され,その製品に対する差し止め可能性が懸念される場合,問題の機能をモジュール化できないか検討してはどうだろう。もしモジュール化できるのであれば,万一,差し止めが決定された場合でも当該モジュールのみを取り外して非侵害製品とし,差し止め後も販売を継続することができる。


【レッスン2】
差し止め発効日を先延ばしにすることを正当化する証拠を提出すれば,万一差し止めが決定されても,より対応しやすいタイミングで発効させることができる

 Microsoftは,「Word」からXML機能を取り除くことの難しさを示す証拠として,「差し止めに対応するには5カ月かかる」という自社従業員の証言を提出した。そして,これは裁判の中で差し止めに従うために必要な期間を争った唯一の証拠であった。そのため,連邦巡回控訴裁判所はこの証拠に基づき地裁判決日から5カ月後に差し止めが発効されるよう変更したのである。
 特許侵害を提訴された機能部分がモジュールであり,その取り外しによって製品を非侵害製品にできる,という前提で言うならば,裁判過程で差し止め対応に必要な時間に関する証拠を提出しておけば,最悪差し止めが発効されたとしても,より対応しやすいタイミングで発効させることができる可能性がある。


【レッスン3】
差し止めの影響を正しく理解するために,連邦裁判所が発効する差し止めと国際貿易委員会(ITC)が発効する差し止めの違いを知っておく

 連邦裁判所は差し止めを求めるには必ずしも理想的な場所ではなく,むしろITCのほうが差し止めを求める場所としては人気があるようだ。しかし,今回のi4i vs. Microsoftの判決は,連邦裁判所も差し止めを求めるには効果的な場所であることを示した。大切なことは,それぞれの差し止めの違いを理解しておくことだ。
ITCは米国市場への「輸入」を差し止めるための場所であり,特許侵害品の米国での「販売」を差し止めることができない。「輸入」ではなく「販売」を差し止めるためには連邦裁判所で争わなくてはならない。そして,広く知られているように,連邦裁判所は損害賠償金を認めることができる一方,金銭的回復はITCの権限外だ。



Charles R. Macedo
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP ,パートナー,ニューヨーク州弁護士

1986年The Catholic University of Americaを優等で卒業,修士号を取得(物理学専攻)。1989年コロンビア大学ロースクールを卒業。在学中はロー・レビューのエディターを務める。ロー・スクールを卒業と同時に連邦巡回控訴裁判所にてロー・クラークとして勤務,その後,知的財産権を専門とする弁護士活動を開始。以降,特許,商標,著作権等のすべての知的財産権分野においてリーガルアドバイスを提供しつつ,精力的に訴訟対応にも取り組む。これら知的財産権の組み合わせによる理想的なポートフォリオ構築についてもアドバイスを提供すると同時にその構築に必要なリーガルサービスを提供している。米国知的財産権に関する情報提供にも力を入れており,2009年には「The Corporate Insider’s Guide to U.S. Patent Practice」をOxford University Pressから上梓。


藤森涼惠
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP ,ニューヨーク州弁護士
1992年京都大学法学部卒業。1999年New York UniversityのロースクールでLLM(Master of Laws)を取得。1992年松下電器産業株式会社に入社,法務部門にて米国知財侵害訴訟,知財ライセンス案件,技術提携案件,技術規格設立案件などを担当。松下電器在職中にニューヨークのWeil, Gotshal & Manges, LLPに外国人インターンとして勤務,訴訟案件を担当。2002年に経営コンサルティングのMcKinsey & Company, Inc.に移り,様々な業界におけるマーケティング立案,製品開発立案,リテール戦略立案などのコンサルティングを提供後,Ocean Tomoにて知財ポートフォリオの定量的評価,知財棚卸支援,知財売買支援,研究開発戦略立案,知財活用・管理戦略立案などを提供。現在はAmster, Rothstein & Ebenstein, LLPにて弁護士として勤務,従来の知財コンサルティングに加えて発明の権利化,知財関連交渉代理,訴訟代理まで一貫したサービスの提供を目指して活動中。




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