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――最近になって「知的財産権と独占禁止法」の両方を重視する企業が増えてきているようですが,なぜでしょうか。 知的財産法は,知的財産権という情報を権利化とすることによって,新たな技術革新などを生み出す原動力となることを目指しています。一方,独占禁止法は,自由な競争を守ろうとするものです。経済発展という大きな目標では共通しているのですが,技術発展と競争制限の排除という違う側面を持っています。そこで,知的財産権の正当な範囲を逸脱する行為について,独占禁止法の違反ととらえることになります。社会としては,知的財産権と独占禁止法の運用とのどちらか一方を強化するだけでは不十分で,両方のバランスをとっていく必要があります。企業にとっては,“攻め”でも“守り”でも,知的財産権と独占禁止法の両方をうまく活用することが大事であると思います。 ――知的財産法と独占禁止法は,互いにけん制し合っているようにも見えますが,これまではどのような歴史をたどってきたのでしょうか。 どのように発達してきたかは,国や事業分野などによって異なります。例えば米国では,反トラスト法とは別に,特許権の濫用を認めないとする「特許ミスユース」という判例によって認められてきた考え方があります。一方,日本では,米国に比べて,特許権の保護が弱いということもあり,知的財産法において競争法的配慮をすべきであるという有力な主張はなされていましたが,競争法的配慮に基づく知的財産関係の判決例は見られなかったと思います。 ――実際には独占禁止法の違反かそうでないかの線引きが難しいのではないでしょうか。 確かにその判断は難しく,一概に言うことはできません。どのような事業者などが,どのような市場で,どのような行為をしたかなどによって異なり,ケース・バイ・ケースとなります。これに関して,ガイドラインとして日本の公正取引委員会が2007年に公表した「知的財産権の利用に関する独占禁止法上の指針」などがありますが,これらのガイドラインはライセンス契約,技術標準等の限定された問題に関するガイドラインです。日本の公正取引委員会は,実際上,米国とは異なり,競争制限効果にかかわらずライセンス契約の内容的制限を行っているのではないか,企業活動を萎縮させているのではないかという意見もあります。 ――独占禁止法の違反となる事例としてどのようなものがありますか。 ケース・バイ・ケースなので,一般論は難しいのですが,次のような例が想定されます。市場において支配的な地位を有する権利者が,取引先のパソコン・メーカーに対し,表計算ソフトを搭載・同梱するライセンスを与える際にワープロのソフトも一緒に入れさせたというような例などです。 ――日本企業は「独占禁止法」の被害者になるケースが多いようですね。 国際的な取り引きで,日本企業が強力な知的財産権を持つ企業からライセンスを受ける際に不当な契約を強いられる場合など,いわば「被害者」的なケースも少なくないといえます。そこで,ライセンス契約の交渉などで「独占禁止法」を活用していくようなことも考えられるでしょう。もちろん日本企業が技術的な競争力を有する場合には,いわば「加害者」になる可能性もあります。 ――企業は今後,どのような実務対応が必要になりますか。 公正取引委員会や裁判所の考え方は,事例の積み重ねで明らかになっていきます。企業はそれを踏まえ,独占禁止法に関するリスクを把握するとともに,そこで萎縮するだけではなく,多面的な分析を自発的に行なうことが重要です。公正取引委員会にも大きな意味での競争による技術発展ということをふまえた運用が期待されますが,企業の現実的対応としては,公正取引委員会への事前相談の実施も積極的に検討すべきです。 ――企業の知財部門と法務部門の連係も欠かせませんね。 その通りです。最近では知財部門と法務部門が連係することでうまくいった成功事例も出てきているようです。われわれのような法律事務所も知的財産法,独占禁止法の両方に精通することが不可欠といえます。当然,われわれもその体制はすでに整えています。 |
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