

米国Bilski判決が示す米国司法界の選択(下)
[2010/09/16]
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ビジネス方法は特許の保護対象に含まれるのか? 方法発明の特許適格性の判断基準は? この特許制度の根幹に関わる問題について、2010年6月に米国連邦最高裁判所がその判断を下した(Bilski判決)( 関連記事)。米国の特許事務所Posz Law Groupに所属し、米国知財制度を研究する吉田哲氏は、この判決を米国産業構造の変革に対応するための司法界の判断と捉える。
連載最終回の今回は、Bilski判決と同様に、司法界が米国社会のあり方を選択した過去の知財分野の重要判決を事例に出し、ビジネスモデル特許に基づく米国社会の行方について言及し、今回のBilski判決のポイントをまとめる。
7.過去の重要判決からみる“米国社会の選択”− ソニーβマックス判決
Bilski判決と同様に、司法界が米国社会のあり方を選択した判決としてはホームビデオ機の著作権侵害が問題となった1983年のソニーβマックス判決が挙げられる(判決、関連資料13)。
この事件は、ホームビデオ機が市場に普及しはじめた時代に、映画会社がホームビデオ機を販売するソニー社を相手に「ホームビデオ機は家庭における著作物の不正複製を生じさせている」として著作権侵害を訴えた事件である。
地裁は家庭内の複製行為に著作権侵害はないとして著作権侵害を否定した(Fair Use)。しかし、控訴審では一転し著作権侵害が認められた(寄与侵害:Contributory Infringement)。これを不服とするソニー社が最高裁判所に上告した。
この事件においても、審理当初は、著作権侵害を認定する裁判官が多数であったといわれている。しかし、審理の中で意見を覆す裁判官があらわれ、最終的に非侵害5人対侵害4人の僅差で、ホームビデオ機の非侵害が認められた。
この事件においても、ホームビデオ機の販売を著作権の侵害行為とみなす合法的理由は十分にあったであろう。少なくとも、法解釈として控訴裁判所が侵害を認定しているのである。さらに、映画会社を筆頭に産業界からは著作権侵害を支持する多くの意見が寄せられており、社会としてもホームビデオ機に対する批判は高まっていたといえる。
しかし、最高裁判所は、著作権の侵害行為はないとの判断を行った。この判断なども、どちらの判断が正しいかというよりも、最高裁判所は、米国社会としてホームビデオ機が安価に普及する社会を選択したと考えることができるであろう。
では、この選択は正しかったといえるのであろうか。判決当時は、映画会社を筆頭に様々な批判があったといわれる。しかし、この判決のおかげで、安価なホームビデオ機は家庭に普及し、家庭で録画したテレビ番組を楽しむという新しい娯楽が社会に提供されることとなった。映画会社自身も家庭用ビデオ販売といった新しい販路の恩恵を得る結果となったのである。さらに、ホームビデオ機の普及は、テレビの大型化やレンタル・ビデオ店の成功といった新しいビジネスの刺激にもなったといえる。結果として、このソニーβマックス判決などは、米国司法界がホームビデオ機を合法として認める社会を選択し、その選択を契機に米国社会が発展した事例といえるであろう。
8.Bislki判決の是非(判決の影響)
Bilski判決が示す米国司法界の選択について、その是非は、今すぐには判断できない。今後、時間を経て米国社会がどのように変化するのかを見て判断すべきものと考える。もし、ビジネスモデル特許に基づく市場の独占が行われ、健全な競争が損なわれるような事態となれば、この判決は間違ったものと評価され、いずれかの時点で覆されるものと考える。
このような事態を招かないためにも、筆者の予想として、ビジネスモデルの特許適格性が今後緩和される可能性は少なく、むしろ厳しく判断される方向に進むものと考える。予想できる事態としては、ビジネスモデルに関する特許出願の多くが、「単なる抽象的アイデアにすぎない」として拒絶されるケースではないであろうか。このような拒絶を回避するためには、請求項の記載方法に配慮が必要であろう。請求項の留意事項については、機会を別に紹介したいと考える。
9.まとめ
以上、米国最高裁判所によるBilski判決を紹介した。本判決のポイントは次の点と考える。
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米国司法界は、ビジネスモデルを特許制度で保護する社会を選択した。その理由は、情報
化社会において未知なる技術に柔軟に対応できる特許制度を維持するためである。
- Bilski判決の是非は現時点では不明である。今後、ビジネスモデル特許がどのように扱わ
れるか、ビジネスモデル特許により社会がどのように発展するのかによってその評価が決まる。
10.おわりに
本稿では、米国最高裁判決によるBilski判決から読み取れる米国司法界が選択した米国社会を紹介した。日本においても、ゲームソフトの中古販売(関連資料14)やP2Pソフト(Winny)の開発者の責任問題(関連資料15)のように、知的財産に関連した重要な判決がなされている。これらは米国同様に情報化社会に日本が変革したことを示す一端を考える。Bilski判決は、日本の知財制度の方向を考える上でも重要な示唆を含んでいるといえるであろう。
【関連資料】
このBilski判決に対するUSPTOの取り扱いについては、ガイドラインが公表されている(関連資料16)。
以 上

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