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「日本がスマートグリッドの標準化で主導権を」
三好内外国特許事務所 弁理士 伊藤市太郎氏に聞く
[2010/12/21]

 「標準化は重要」とされながら具体的な成果に乏しい中、日本企業にとって「今がチャンス」と国際技術標準の動向に詳しい三好内外国特許事務所の伊藤市太郎氏は力説する。スマートグリッドや電気自動車など、日本が強みを発揮できそうな環境/エネルギー分野の技術開発が盛り上がってきており、それがまだ混沌としているところに狙い目があると同氏は指摘する。
(聞き手は、テクノアソシエーツ 朝倉博史)


――日本の企業の多くは、技術の標準化が重要であると認識しているようですが、なかなか具体的な行動に移せないように見受けられます。

三好内外国特許事務所
弁理士 伊藤市太郎 氏

 私は「今がチャンス」だと思っています。スマートグリッドやエネルギー・マネジメント、電気自動車など、環境/エネルギー関連の技術開発が活発になっており、世界の産業界全体がそこに注目しています。この分野は成長が期待されながらも、様々な業種が関与し、どこが主導権を取るか分からない混沌とした状態です。これを機に、日本が技術力を武器に標準化を取りに動けば、良いポジションにつける可能性があります。

――これまで日本企業は標準化が苦手とされてきました。具体的にどう動けば良いか、戸惑っているのではないでしょうか。

 すべてを自社でやろうとせずに、ある部分で割り切ることが必要です。今や世界市場を狙うしかない状況下で、1社の技術で完結するには無理があります。それぞれが自社の強みとなるキー・テクノロジを特定し、それを他社の技術と組み合わせられるようにします。その際に相互につなぐ部分が必要であり、そこを誰でも使えるようにするというわけです。実際に携帯電話など通信業界では、これを実現することで市場が拡大してきました。キー・テクノロジは独自のものとして「クローズ化」する一方で、相互接続性は「オープン化」するという考え方です。

――標準化は企業の競争力と反対のイメージがありませんか。

 日本弁理士会でも「技術標準委員会」を10年前に立ち上げたときに、「特許を減らすことにつながるのではないか」という理由で一部から反対意見がありました。しかし、実際は違います。まず、企業がキー・テクノロジを持っていても、それを誰も使わなかったら意味がありません。技術を生かすためには普及させる努力も必要です。そこが標準化(オープン化)の役割です。ただし、その標準化技術を実現するために必ず用いられる特許(所謂、必須特許)や標準化技術の周辺特許も押さえる必要があります。そこの権利を持っていれば、その技術で使用料を取るか、無償で提供するか、自分の都合の良いようにコントロールできます。それでなくても周りから「仲間に入らないか」と声がかかるようになります。概して必須特許や周辺特許は技術レベルが低いと軽視されがちですが、むしろ積極的に特許を取るようにすべきです。

――日本企業はこれまでのような日本市場優先の考え方を根本的に変える必要がありますね。


 最初に世界市場をターゲットにして技術戦略を考え、必要に応じて日本など各地域の仕様にカスタマイズするという、これまでとは逆の発想が求められます。環境/エネルギー分野は様々な産業領域がかかわっており、波及効果も大きいといえます。その分野で世界に誇る技術を持っている日本企業にはなんとか果敢に攻めてほしいですね。このまま何もしないで海外勢に標準化を取られてしまうと、日本企業はそこでも仕切られる立場となり残念なことになってしまいます。

――「オープン化」を進める上で重要なことは何でしょうか。

 やはり他社、それも海外企業といかに組めるかということではないでしょうか。海外企業の場合、どのようなメリットを相手に与えられるかをはっきりさせなければなりません。そこでは標準化で使えそうな特許を持っていることも重要な要素となります。

――「クローズ化」と「オープン化」をうまく使い分けた日本企業の成功例はあるのでしょうか。

 例えば、三菱化学の事例があります。DVDメディアはその互換性を保つために、レーザーの発光パターンやタイミングなど書き込みの情報を既定しています。そこで三菱化学が開発した「AZO色素」を用いたDVDメディアだけがその要求を満たすように標準化されました。他の色素を使うとコストがかかってしまうために、ほとんどのメーカーがAZO色素の使用を受け入れたということです。もしかしたら、スマートグリッドや電気自動車、蓄電池でも、このように日本の技術力を発揮できる部分があるかもしれません。

――標準化は、企業にとって事業戦略の根幹にかかわることといえますね。

 知的財産の観点から言っても外せないところです。企業の知財部門としても自社の特許の位置づけを示す「パテント・マップ」を活用すれば、どの技術を「クローズ化」し、どの技術を「オープン化」すれば良いか、分析することができます。それが会社全体の技術戦略を大きく変えるかもしれません。われわれにも最近、そのような相談が増えてきています。




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