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米CAFC、知財価値の「25%ルール」は欠陥があると決定
[2011/01/13]

ジョセフ・カシーノ
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP,パートナー,ニューヨーク州弁護士
マイケル・カズダン
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP,パートナー,ニューヨーク州弁護士
藤森涼惠
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP,ニューヨーク州弁護士

 米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は1月4日、米Uniloc USA Inc.と米Microsoft Corp.の事件(Fed. Cir. January 4, 2011)において、特許侵害裁判の損害賠償基準として多く使用される「25%ルール」が基本的に瑕疵(法的に欠陥)がある算定ツールであるとの決定を下した。

 「25%ルール」は、製品の知的財産権の価値が、その製品に期待される利益の25%とする基準である。特許の使用を希望する者が仮想的交渉(hypothetical negotiation)において特許所有者に支払っても良いと考える合理的ロイヤルティ概算のベースとして使用されてきた。
 このルールを擁護する側は、この「25%ルール」が業界横断的に集められた利益・ロイヤルティ情報を基に生み出されており正確である、と主張していた。しかしながら、今回CAFCも述べたように「25%ルール」には以下のような批判もあった。(1)特許と問題の製品に特有の関係性が考慮されていない、(2)特許所有者と問題の製品の製造者に特有の関係性が考慮されていない、(3)本質的に恣意的な数値であり、仮想的交渉におけるベースとしてはそぐわない。

 Uniloc事件において、CAFC長官であるRandall Rader判事を含む判事合議体(パネル)は、「25%ルール」は各事件に特有の事実に無関係、恣意的かつ一般的なルールにすぎないとし、その証拠能力を退けた。さらに、パネルは損害賠償算定に使用する証拠には当該事件の事実・状況、そしてそれら事実・状況、タイミングにおいて行われたであろう仮想的交渉との関連性が必須であることを強調した。
 今回の決定の根拠として、「合理的ロイヤルティ決定にあたり、仮想的交渉において参照される契約と著しく異なる既存ライセンス契約内容に依拠してはならない」としたCAFCの近年の判例である米Lucent Technologies事件および米ResQNet.com, Inc.事件が引用された。「25%ルール」に依拠することは、「Lucent Technologies事件やResQNet 事件で否定した無関係の既存ライセンス契約への依存よりも、さらに信頼性・関係性を欠く」とパネルは結論づけた。今回の決定は損害賠償の立証に使用する証拠の性質を厳格にしつつある近年のCAFCの傾向に沿ったものである。

 なお、Microsoftによる「故意侵害に関する陪審評決と異なる判決の申し立て(the motion for judgment as a matter of law (JMOL) of no-willful infringement)」を認めた地方裁判所判決をCAFCが支持したこともUniloc事件のポイントである。
 過去、Seagate Technologyの事件で、故意侵害を認定するには、特許侵害者が有効な特許を侵害する可能性が客観的にみて高いにもかかわらず問題の行為をしたことを明白かつ確信を持つに足る証拠を使って特許所有者が立証しなくてはならない、という客観性テストが確立された。CAFCは、Uniloc事件の場合、この客観性テストが満たされていないとした。Microsoftの侵害行為の開始時点において、その製品がUnilocの特許に当たらないと合理的に判断し得なかった理由が、公判および控訴審においても特許所有者であるUnilocにより示されなかったと判断した。Unilocが提示した証拠に基づき、合理的な陪審が客観的に見てMicrosoftが無謀な行いをしたと判断したであろうことが示されなかったため、CAFCは地裁による故意侵害に関するJMOLを支持したのである。
 今回の判決が「侵害行為開始時点において」客観的無謀性を判断していることから、今後、製品の市場投入する際には、故意侵害認定リスクを軽減するためにすでに認識している特許の侵害性・有効性を検討しておくことが望まれる。


ジョセフ・カシーノ
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP ,パートナー,ニューヨーク州弁護士

1991年ブルックリン大学にてコンピューターサイエンスを専攻、優等で卒業後、1996年にブルックリン・ロースクールを卒業。ロースクール在学中はロー・レビューの編集員をつとめる。コンピューター、電気自動車、半導体、光ファイバー、携帯電話、テレビ、DVDなどのハイテク産業における知的財産権を多く取り扱い、訴訟からライセンス、鑑定、権利取得まで幅広く担当している。特に複雑なライセンス契約交渉を多数経験しており、巨大ポートフォリオにかかわるクロスライセンス契約にも精通している。特許消尽、特許ライセンス契約、特許侵害損害賠償算定、特許リスク分析、請求項解釈、均等法等のトピックについて講演経験多数。松下電器産業株式会社(現パナソニック)の社内弁護士として日本に駐在経験を有し、現在もパナソニック他多数の日本企業にサービスを提供している。


マイケル・カズダン
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP ,パートナー,ニューヨーク州弁護士

1996年ペンシルバニア大学にて電子工学を専攻、優等で卒業後、1996年にニューヨーク大学ロースクールを優等で卒業。ロースクール在学中はロー・レビューの編集員及び知的財産・エンタテイメント法ソサエティの会長をつとめる。ロースクール卒業後、連邦デラウェア地裁のRoderick R. McKelvie判事の法律助手(ロー・クラーク)をつとめる。家電からコンピューター・アーキテクチャ、ネットワーク、半導体、ワイヤレス機器、医療機器まで幅広い技術について、特許侵害訴訟、仲裁、調停、交渉等を担当、戦略的特許権利取得、ポートフォリオ構築、特許侵害鑑定(侵害性・有効性・権利行使可能性判断を含む)など多岐にわたる法律サービスを提供している。パナソニックの社内弁護士として日本に駐在経験を持つ。2004年秋に現事務所に移籍以前はKirkland & Ellis LLPの知財部門に勤務、また、技術コンサルタントとして活動した経験も有する。


藤森涼惠
Amster, Rothstein & Ebenstein, LLP ,ニューヨーク州弁護士

1992年京都大学法学部卒業。1999年New York UniversityのロースクールでLLM(Master of Laws)を取得。1992年松下電器産業株式会社に入社,法務部門にて米国知財侵害訴訟,知財ライセンス案件,技術提携案件,技術規格設立案件などを担当。松下電器在職中にニューヨークのWeil, Gotshal & Manges, LLPに外国人インターンとして勤務,訴訟案件を担当。2002年に経営コンサルティングのMcKinsey & Company, Inc.に移り,様々な業界におけるマーケティング立案,製品開発立案,リテール戦略立案などのコンサルティングを提供後,Ocean Tomoにて知財ポートフォリオの定量的評価,知財棚卸支援,知財売買支援,研究開発戦略立案,知財活用・管理戦略立案などを提供。現在はAmster, Rothstein & Ebenstein, LLPにて弁護士として勤務,従来の知財コンサルティングに加えて発明の権利化,知財関連交渉代理,訴訟代理まで一貫したサービスの提供を目指して活動中。





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