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米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)のUniloc USA対 Microsoft事件における「25%ルール」の否定は、米国で製品の製造もしくは販売をする日本企業にとっては朗報といえる(関連記事)。特にハイテク産業では「25%ルール」は現実とかけ離れており、米国における特許侵害裁判での巨額損害賠償の根源と、多くの人が頭を悩ませていた。過去、米国特許侵害裁判において、特許侵害製品が生み出す税引き前利益の25〜33%を、特許所有者が損害賠償として要求することも珍しくなかった。特許所有者自身はそれだけの製造・販売能力を持たず、しかも当該侵害製品がほかにも何百何千という特許技術を使用しているハイテク製品であってもおかまいなしに、である。 われわれのような知財価値評価専門家にしてみれば、裁判で採用される「25%ルール」と、会計の観点から適切と思われる基準の間には乖離がある状況が続いていた。2007年の段階で米国会計規則を定める米国公認会計士協会(AICPA)は、知的財産権を価値評価する基本的な方法として「25%ルール」を支持していなかった。AICPAは特許を評価する方法として、伝統的なコスト・アプローチやマーケット・アプローチに加え、利益収入(incremental income)や余剰収入(excess earnings)に基づく評価アプローチを支持してきた。収入ベースの評価アプローチは世界的に見ても各国課税当局から認められているようだ。AICPAが提唱してきたアプローチは、特許の価値やロイヤルティ算出において裁判所でもこれまでに採用はされていた。ただ、今回のUniloc判決により、知的財産権の価値を適切に評価するアプローチについて、初めて裁判と会計との間で乖離が解消されたと言える。 AICPAが提唱する“余剰収入アプローチ”とは、問題の特許技術を採用した製品が生み出す利益と、旧製品・代替品あるいは別の技術を使用する後継品など当該特許技術を使用しない同種の製品が生み出す利益とを比較して、当該特許技術の価値を計る方法である。このアプローチの実施には当該製品や関係する製品の予測価格や実勢価格、売り上げ、コスト、事業計画、競合分析、利益予測といった、企業にとってセンシティブな情報の閲覧が必要になる。これとは対照的に「25%ルール」は詳細な財務情報を必要としなかった。今回のUniloc判決により、今後、“余剰収入アプローチ”が特許侵害損害賠償額の算定に多用されるようになると、訴訟当事者はより多くの財務関係情報を証拠開示手続きにて要求されることになる。 なお、「25%ルール」が否定されたからといって、ほかの計算アプローチで必ずしも「25%ルール」より低い値が算出されるわけではない。例えば、余剰収入アプローチを初めて採用したTWM Manufacturing Co. Inc.対 Dura Corp.の事件では、CAFCが30%というロイヤルティ・レートを容認した。Uniloc判決後、実際にどのようなレートのロイヤルティが算出されるかは、今後しばらく見守る必要があるだろう。
マイケル・ラシンスキ
284 Partners, LLC ,CEO ミシガン大学にて電子工学を専攻(最優等)、後に同大学にてMBAを取得(最優秀)。 公認会計士、AICPA認定のフィナンシャル・フォレンジック(CFF)、およびLES認定のライセンス・プロフェッショナル(CLP)であり、現在、Licensing Executives Society (LES)の米国・カナダ支部の会長および米国弁護士協会(ABA)の知的財産権部門経済委員会の委員長もつとめている。ワイヤレス、wi-fi、インターネット等の通信技術、半導体、コンピュータ・ソフトウェア、製薬、医療機器、自動車、消費財等の幅広い技術分野において知的財産権の価値評価、訴訟支援、知財戦略の立案、知財売買の支援等、知財に関わる分析や戦略的コンサルティング・サービスを提供している。訴訟支援においては裁判や仲裁において価値評価エキスパートとして証言を数多く提供している。
ケビン・アースト
284 Partners, LLC ,マネージング・ディレクター インディアナ大学にて経済学を専攻。 公認会計士、AICPA認定のフィナンシャル・フォレンジック(CFF)、およびLES認定のライセンス・プロフェッショナル(CLP)であり、LES米国・カナダ支部の価値評価・税務委員会の委員長をつとめた経験を有する。ワイヤレス通信、wi-fi、半導体、コンピュータ・ソフトウェア、ハードウェア、ディスクドライブ、光ドライブ、ディーゼルエンジン、インターネット、Eコマースなどの多岐にわたる技術分野において知的財産権価値評価、訴訟支援、知財戦略立案、知財売買支援等、知財にかかわるコンサルティング・サービスを提供。特許侵害損害賠償算定エキスパートとして法廷にて証言も提供している。284 Partners以前はOcean Tomo, LLCのマネージング・ディレクターとしてサンフランシスコ・オフィスの責任者をつとめた。 |
<過去の連載>
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