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「2011年の注目すべき裁判」の最終回は、「Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University vs. Roche Molecular Systems」裁判である。本件では、米Stanford大学に授与された米連邦政府基金を使った研究に関与したStanford大学の研究者が、権利譲渡について大学および民間企業の各々の同意書にサインしたため、その特許の所有権を巡って争われている。大学や中小企業の研究を支援する目的で制定されたバイドール法注)のもとでの特許権行使の優位関係を米最高裁判所がどのように解釈するのか、注目されている。米国で産学共同研究を行う日本企業にとっても、米最高裁のバイドール法に関する解釈は大いに影響してくると思われる。
Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University 本件で問題となった特許は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を利用して人血内のHIV(ヒト免疫不全ウィルス)を定量的に測定し、抗レトロウィルスの治療効果との相関を得る方法に関するものである。 同時期にStanford大学、Cetusおよび他の発明者は、Cetusにより供給されるPCR関連材料および情報をStanford大学が使用することを許可する材料移転同意書(Materials Transfer Agreement:MTA)にサインしていた。MTAには、Cetusにより供給されるPCR関連材料を用いることでStanford大学が得る技術に対して、“Cetusがライセンスを得る”と記載されていた。 CAFC(United States Court of Appeals for the Federal Circuit:米国連邦巡回控訴裁判所)は、CPAに記載されていた契約用語“譲渡することに同意する(agree to assign)”は、単に将来において権利を譲渡する約束を示しているに過ぎないとした。すなわち、Holodniy氏がCPAにサインしたことだけでは、発明に対する権利がHolodniy氏からStanford大学に譲渡されてはいなかったとみなした。 Barack Obama政権や大学、またバイドール法立案者の一人であるBirch Bayh元上院議員は、米連邦政府基金を使って開発された技術の特許所有権に関して、バイドール法の下では米連邦政府または大学が発明者より優位にあるので、発明者は自由に特許権を第3者に譲渡する権利を持たない、という意見を述べている。一方、米知的財産法協会(AIPLA)や産業界の意見としては、特許法の下では発明者が特許の所有権を第一に主張することができ、バイドール法は大学に自動的に特許権を与えるものではないとし、大学が特許権を得るためには、発明者と正規の譲渡契約を結ばなくてはならない、という意見を述べている。
< 著者紹介 >
前川有希子(まえかわゆきこ),米国ワシントンD.C.弁護士 日立製作所中央研究所で研究者として医用画像機器の研究開発に従事し,博士号を取得した後,米国に移住した。2002年にPatentAgent,2005年にワシントンD.C.弁護士の資格を取得。現在は,米国大手法律事務所を経て、現在 Snyder, Clark, Lesch &
Chung, LLP にて,主に,特許権取得業務,オピニオン(知的所有権に関する有効無効性や侵害に関するアドバイス)ならびにデュー・ディリジェンス(知的所有権,ライセンス,共同研究契約に関する様々な調査)を担当している。※著者の所属先・肩書きは、本コラム執筆時のものです。
2011年の注目すべき特許裁判
(1) Microsoft vs. i4i (2) Global-Tech Appliances and Pentalpha vs. SEB (3) Therasense and Abbott Laboratories vs. Becton, Dickinson and Nova Biomedical (4) Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University vs. Roche Molecular Systems |
<過去の連載>
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