![]() |
![]() |
![]()
2011年2月に「2011年の注目すべき裁判」として、四つの裁判を採り上げた。(1)「Global-Tech Appliances, Inc. v. SEB S.A.」裁判、(2)「Therasense, Inc. and Abbott Laboratories v. Becton, Dickson and Company et al.」裁判、(3)「Microsoft Corp. v. i4i, LP」裁判、(4)「Board of Trustees of the Leland Stanford Junior University v. Roche Molecular Systems, Inc. et al.」裁判である。この5月から6月にかけて、米国最高裁判所および米連邦巡回控訴裁判所(CAFC)において、立て続けにこれらの裁判の興味深い判決が下されたので、各判決について解説する。
「Microsoft v. i4i」裁判 〜米最高裁の基本姿勢は覆されず〜 「2011年の注目すべき裁判」の一つとして解説したように、「Microsoft v. i4i」裁判の争点は、米国特許法282条の下で特許の無効性を判断するための証拠基準をどう設定すべきかという点であった。米最高裁判所の判決次第では、特許の無効性を立証しやすくなり、特許制度自体を弱体化させる可能性があるとして、知財関係者の間で大きく注目されていた。2011年6月、米最高裁は米Microsoft社の主張を退け、特許の無効性を判断するための証拠基準は“明白かつ確信を抱くに足る証拠(Clear and Convincing Evidence)”とする、と判決を下した。今回は、この米最高裁の判決について解説する。 1. 本裁判の背景
問題となっているi4iの特許は、XMLのようなマークアップ言語を含む電子文書の編集方法に関する特許である。その特許は、メタコードマップとマップ化された文書コンテンツを作成することにより、文書コンテンツとメタコードを分離して保存することを特徴としている。CAFCでの裁判では、Microsoftの「MS Word」が、i4iの特許クレームに記載された電子文書の編集方法を使用しており、i4i特許を侵害していると判断された。 Microsoftに対する反論として、「S4」の開発者でもあるi4i特許の発明者たちは、「S4」はSGMLタグを付加、また編集し、電子文書をSGML文書に分割するが、メタコードマップを作成していないので、「S4」は「i4i特許のクレームに記載された方法を実施していなかった」と証言した。一方、Microsoftは、「S4」のソースコードがSEMIのプロジェクト完了後に破棄されていたため、「S4」がi4i特許のクレームに記載された方法を実施していたことを立証するための“明白かつ確信を抱くに足る証拠”を提出することができなかった。 2. 米国特許法282条の解釈
Microsoftは、特許の無効性を判断するための証拠基準に関して、次の2通りの主張を行った。一つは、特許侵害訴訟において抗弁として特許の無効性を主張する際、被告は“証拠の優越性(Preponderance of Evidence)”によって陪審員に特許の無効性を確信させればよい、と主張した。もう一つは代案として、少なくとも特許審査の過程において考慮されなかった証拠を根拠として特許の無効性が主張される場合には、その証拠基準として“証拠の優越性(Preponderance of Evidence)”を適用しなければならない、と主張した。 なお、米最高裁は、米国特許庁の特許性を判断する審査過程において重要な情報のすべてが考慮されていないことが指摘された場合、“特許は有効である”という推定の度合いが弱められるかもしれない、と指摘している。米最高裁は、このような場合は、“明白かつ確信を抱くに足る証拠”という証拠基準を用いても、特許が無効であると陪審員を説得しやすくなるかもしれないと、述べている。 まとめ
●関連記事 < 著者紹介 >
前川有希子(まえかわゆきこ),米国ワシントンD.C.弁護士 日立製作所中央研究所で研究者として医用画像機器の研究開発に従事し,博士号を取得した後,米国に移住した。2002年にPatentAgent,2005年にワシントンD.C.弁護士の資格を取得。現在は,米国大手法律事務所を経て、現在 Snyder, Clark, Lesch &
Chung, LLP にて,主に,特許権取得業務,オピニオン(知的所有権に関する有効無効性や侵害に関するアドバイス)ならびにデュー・ディリジェンス(知的所有権,ライセンス,共同研究契約に関する様々な調査)を担当している。※著者の所属先・肩書きは、本コラム執筆時のものです。
|
<過去の連載>
![]()
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
企業戦略 | CIPO | 政策・法制 | 職務発明 | 訴訟 | 人材育成 | 産学連携 | 提言 | ニュースリリース | イベント・セミナー
| このサイトについて | 著作権・リンクについて | 情報提供 | 広告掲載について |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||