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日本企業のベトナム進出、その注意点は
国民性からビジネス習慣、知財事情についてまで聞く
[2012/02/14]

 長引く円高を背景に、有力な生産拠点としてベトナムへの進出に興味を示す日本企業が増えている。ベトナムの国民性や模倣品の実態、日本企業が進出する際の注意点などについて、ベトナムの知財事情に詳しい三好内外国特許事務所弁理士の岡田貴子氏に聞いた。
(聞き手は、テクノアソシエーツ 日経BP知財Awareness編集長 朝倉博史)

――ベトナムの国民性や風土について、どのように感じましたか。

 ベトナムの首都ハノイ市における滞在経験からは、日本人に比べるとベトナム人は“時間に緩い”という個人的な印象を受けました。時間を決めて会う約束をしても平気で遅れてきたり、キャンセルしたりします。仕事面でも厳しさを要求され責任を負わされるより、仕事はそこそこの範囲でこなし、家族と過ごす時間を大切にしようとする人が多いようです。日本でよく言われる「ベトナム人は勤勉」のイメージとは少し違うかもしれません。また、とにかく好奇心旺盛で、私のような外国人にも遠慮せずにどんどん話しかけ、年齢や家族構成など個人的なことを聞いてきます。年齢を自分と比較して相手の呼び方を変えることから、そこはどうしても聞きたいようです。住む環境としては、ハノイは日本のように四季があるので馴染みやすいのですが、冬が意外に寒いことに驚きます。食事は麺類など安くて日本人好みのメニューが多いと思います。ベトナム語は、文法はシンプルですが、声調があり、発音が難しいです。

――日本企業はベトナムに何社ぐらい進出しているのでしょうか。

 最近の調査では、現地の日本商工会に加入している企業が約900社、未加入の企業が約700社で合計1600社前後と推定されています。業種は製造業や建設業、サービス業など多岐にわたります。日本企業が安い人件費を求めて進出していることから、ベトナム人にとっても必ずしも高給を得る対象になってはいないと聞きます。労働条件の改善を求める行動も珍しくなく、特に旧正月前の生産数量を増やさなければならない時期を狙ったストライキは多いようです。

――ベトナムに行って分かったことで、企業が注意すべきことはありますか。

 ベトナムでは人を採用する際、基本的にコネを使う習慣があると聞いています。日本のように広く募集をかけ、応募した人の中から選別するという方法はあまりなじみがないようです。採用については、日本企業はそこを考慮する必要があります。また、電力供給が安定せず、停電が日常的にあります。特に夏場など電力需要が増大する時期には停電の計画表が出されます。しかも、その計画表どおりにいかないことも少なくありません。工業団地などにはバックアップ電源があるようですが、そのような設備がない場所では対策をする必要があります。

――ベトナムには模倣品も多いと聞きますが。

 実際にベトナムの街には、携帯電話、家電、バッグ、衣服、オートバイ、お菓子など様々な模倣品であふれています。例えば、携帯音楽プレーヤの「iPod」は、正規品にはない様々な種類が置いてあります。オートバイでは、店に持ち込んで部品を加工し“有名ブランド風”にカスタマイズするサービスもあります。こうした模倣品に対して行政当局はそれほど積極的に取り締りをしていないようです。たまに新聞で模倣品の行政処分に関する記事が載っていますが、それも食品やお酒など人体に影響のある物品に関するものが大半です。オートバイのヘルメットの模倣品に対する一斉取り締りもありましたが、ヘルメット着用を法律で義務付けたタイミングに合わせたもので、当局は場当たり的にしか対応していないように見えます。

――ベトナムにおける知的財産関連の法整備状況について教えてください。

 2006年7月に、それまで民法の一部分および複数の政府決議等に分散して規定されていた知的財産権の保護に関し、包括的に規定する知的財産法が施行されました。さらに、2010年1月にはその改正法が施行されました。改正により、知的財産侵害品に対する行政措置の適用において、侵害者に対する警告書の事前送付が不要になりました。

――特許出願・登録に関する実務上の注意点については、いかがでしょうか。

三好内外国特許事務所
弁理士 岡田貴子 氏

 例えば、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願において、ベトナムの国内手続に継続させる“国内移行手続”では、優先日(多くの場合、日本の出願日)から31カ月以内にベトナム語による翻訳文を提出しなければなりません。請求項の記載については、マルチクレーム(多項従属クレーム)、マルチのマルチクレーム(多項従属クレームを引用する多項従属クレーム)ともに認められます。この点は、日本の実務との共通点です。また、出願後の補正手続きについて、ベトナムの法規定では審査係中はいつでもできるとされていますが、実際は拒絶理由通知への応答期間中に、審査官に対し、応答期間経過後に補正する予定がある旨通知しなければならない、という現地ルールがあります。そのほか、特許出願料については、日本の場合は出願当たりですが、ベトナムはクレーム当たりとります。商標出願料については、日本では区分数に応じて算定しますが、ベトナムは区分数および各区分の指定商品の数に応じて算定するなど、費用面でもそれぞれ異なります。

――ベトナムへの進出を考える日本企業に、アドバイスがありましたらお願いします。

 ベトナムへ進出する際に、用地取得から始めようとすると、インフラ整備など、地域開発の負担を求められると聞いたことがあります。基礎的な条件の整った工業団地に入ることをお勧めします。さらに、先ほどお話した電力事情の問題もありますので、停電対策も必須です。また、公共交通があまり発達していないので、会社で自動車を手配するなど移動手段を準備しておくと良いでしょう。




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