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技術標準化活動におけるパテント・プール普及の背景
日本弁理士会・技術標準委員会委員長/弁理士 加藤 恒 氏が指摘
[2005/09/27]

弁理士 加藤 恒 氏
日本弁理士会・技術標準委員会委員長
弁理士 加藤 恒 氏
 「技術標準化活動においてパテント・プールが注目される要因の1つには,実施料の積み上げ問題がある」。三菱電機知的財産渉外部次長で,日本弁理士会・技術標準委員会委員長を務める弁理士の加藤 恒 氏はこのように指摘した。
 一般に標準化技術に含まれる必須の特許については,「合理的かつ無差別」にライセンスする義務を標準化団体などが定めているが,その実施料は権利者単位で認められている。1つの標準化技術に含まれる特許や開発に関わった権利者が多数になる場合が増えており,その技術の利用に際して膨大な実施料が必要になる状況が生じている。
 本記事は,日本弁理士会・中央知的財産研究所が2005年7月1日に開催した公開フォーラムにおける,同氏の講演の要約である。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)


技術標準化活動におけるライセンスの問題
 近年,デジタル家電の開発において技術の標準化が大きな課題となっている。標準化された技術としては,第3世代(3G)の携帯電話方式などが有名である。現在の先端技術開発において技術の標準化は不可避であり,知財戦略上も重要な課題となっている。
 技術の標準化に関する最も大きな問題は,その標準化技術に含まれる特許の利用である。
 一般に,標準化技術に含まれる必須の特許は,「合理的かつ無差別(reasonable and non-discriminatory:RAND)」に実施許諾する義務を,標準化団体などがパテント・ポリシーとして定めている(以下「RAND方針」)。しかし,最近は,技術の標準化活動が大規模になり,1つの標準化技術に含まれる特許や開発に関わった権利者が多数になる傾向があり,その結果として,標準化技術の利用に際して膨大な実施料を要する場合が生じている。
 要因の1つは,RAND方針が権利者単位で義務付けられている点にある。例えば,標準化団体に参加していない者に対する実施料を「利益の1%」と定めた必須特許について,「1%」という実施料自体はRAND方針に適格であっても,複数の権利者が存在する場合,実施料は積み上げられてしまう。単純にいえば,権利者が10社の時の実施料は10%に,100社ならば100%である。この数字は極端な例であるが,高額な実施料が第三者の参入障壁になる場合が実際に生じている。

「収益性が高い点もパテント・プールの特徴である」
 以上のようなRAND方針における実施料の積み上げ問題が影響し,最近は標準化活動におけるパテント・プールの活用に対する関心が急速に高まっている。パテント・プールは原則的に標準化技術を単位としてライセンスすることを目的としているからだ(関連記事)。
 現在活動中のパテント・プールは,事業的にもおおむね成功を収めている。実際に参画している当社の経験からも,パテント・プールは,研究開発面・収益性面の両方において高い可能性を持つ事業活動だといえる。
 パテント・プールは,保護と活用の双方を目的としている点,そのバランス維持が重要な点において,根本的にオーソドックスな知的財産活動である。ただし,パテント・プールへの参加は任意が原則であって決定的な強制力がないこと,独占につながるような権利強化は法的に制限されることなど,特有の課題がある。

パテント・プールの活用が企業の知財戦略のカギに
 先述したようにパテント・プールは収益性が高い事業活動であり,今後は各企業の知財戦略において積極的に活用されると思われる。標準化活動との関連では,新たにバイオ産業などでパテント・プールの形成が必須になるだろう。従来のエレクトロニクス産業などにおいても,活用の機会が増えそうである。また,これまでは大企業の利用が中心だったが,将来は中小・ベンチャー企業,さらにジョイント・ベンチャーなどを通じた活用が期待できる。
 こうした新たなニーズに対応して,標準化技術やパテント・プールに関する既存制度を改善していくことが必要になる。RAND方針に関しては,標準化技術を単位にするパテント・ポリシーの確立など,パテント・プールに関しては,権利範囲を基準とする実施料設定の容認や独占禁止法上の取り扱いを明確化することなど,多様で柔軟な制度を整備することが肝要である。

 

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