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松下‐ジャスト訴訟の判決に見る新条項の影響 日本弁理士会が分析を発表 [2005/10/28]
この控訴審では,松下が「自社の特許を侵害された」としてジャストシステムのソフトウエア製品「一太郎」,「花子」の製造・販売の中止を求めていた。これに対し知財高裁は,東京地方裁判所の「侵害している」との原判決を取り消し,松下側のすべての請求を棄却した。この判決は,重要な争点について司法判断の統一が必要な場合に全裁判官5名が加わる大合議制によって行われた。 本記事は,日本弁理士会特許委員会委員長である千且和也氏の解説を要約したものである。 (まとめは品田 茂=日経BP知財Awareness編集) 松下の特許第2803236号は,(A)アイコンの機能説明を表示させるための第1のアイコン,(B)所定の情報処理を実行させるための第2のアイコン,(C)第1のアイコンおよび第2のアイコンを画面に表示させる手段,(D)画面上に表示されたアイコンを指定する手段,(E)第1のアイコンの指定によって第2のアイコンの機能説明を表示させる制御手段,の5つから構成されている。このうち,(E)が松下の特許の中核を成していた。松下が出願した1989年当時,プログラムそのものは特許権による保護の対象になっていなかった。そのため,「情報処理装置」と「情報処理方法」に関して権利を得ていた。 間接侵害を広く認める 今回の判決の第1のポイントである間接侵害については,松下が訴えたジャストシステムのソフトウエア製品「一太郎」,「花子」はプログラムであり,発明自体の実施または生産などといった直接侵害には当たらない。プログラムの販売差し止めは,特許権などを実質的に侵害したという間接侵害を理由に請求された。この間接侵害を,プログラムに対して適用する場合,従来の特許法101条1項では「その物の生産のみに使用する物」の「のみ」を厳格に解釈すると,特許権者を十分に保護できない問題があった。そこで2003年に新たに2項が加えられた(条文参照)。 東京地裁の第1審判決では,特許法101条2項によって「情報処理装置」に対する間接侵害に当たるとした松下の申し立てを認め,「一太郎」,「花子」の製造・販売の停止を言い渡した。ジャストシステムはこれに不服として控訴していた。 しかし,今回の知財高裁の判決も東京地裁の判断を支持し,間接侵害を認めている。今回の判決をはじめとして,近年,間接侵害範囲の拡大や均等論の採用といった権利範囲を広く認める法解釈の傾向が見えている。これは権利者にとって有利であり,動向を注視すべきである。
特許の有効性に関する裁判所の判断を重視 第2のポイントである特許の有効性に関する裁判所の判断については,今回の判決では松下の特許の「進歩性」についての判断が下った。知財高裁は,松下の特許について「従来の技術と比べて技術的な進歩性がない」と判断し,無効とした。特許権の効力は,特許庁の特許無効審判で判断する。ただし,特許に進歩性がないのが明らかであれば,特許法第104条の3(条文参照)に基づき,裁判所は特許権者の権利行使を否認できる。この条文は,1991年に提訴された富士通と米Texas Instruments Inc.(TI)との特許使用料支払いに関する裁判で,2000年の最高裁の「TIの特許は無効になる可能性が極めて高く,そのような特許権に基づき第三者に対して権利行使することは権利の濫用で許されない」との判決を受けて2004年に追加された。裁判所の判断に重みを持たせる条項となっている。 注意すべき点は,特許無効はあくまで個別の訴訟の当事者間だけの議論である点である。松下の特許権自体はまだ有効である。
また,裁判所の判断と特許庁の判断に食い違いが出た場合の対応は以下のようになる。まず,裁判所における侵害訴訟で特許を有効と認め,特許庁が無効審決を出した場合,民事訴訟法第338条1項8(条文参照)によって,特許権者は知財高裁に特許の有効を求めて審決取消訴訟ができる。次に,裁判所が無効とし,特許庁が特許を有効と認めた場合,特許権者以外が特許の無効を求め知財高裁に対し,審決取消訴訟を起こすことができる。いずれの場合も,審決についての再度の判断は知財高裁に委ねられており,原則的に特許庁より知財高裁の判断が優先される。
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