日経BP知財Awareness

日経BP知財Awareness トップページへ 企業経営関連記事へ CIPO関連記事へ 政策・法制関連記事へ 訴訟関連記事へ 職務発明関連記事へ

人材育成関連記事へ 産学連携関連記事へ 提言関連記事へ 技術&事業シーズ ニュースリリース イベント・セミナー情報




ソフトウエア特許に関する現状とその行方
弁理士・土生 哲也氏に聞く(上)

[2005/09/29]

 近年,情報技術(IT)業界は知的財産権に対する認識を急速に高めており,特にソフトウエアなどを保護する動きが活発になっている。従来の著作権を通じた保護に加え,特許権による保護が進んでいる。こうした「ソフトウエア特許」に関しては侵害訴訟などの事例も増えており,ジャストシステムが製造・販売する文書作成ソフトウエア「一太郎」と画像処理ソフトウエア「花子」に対し,松下電器産業が起こした侵害訴訟などは記憶に新しい(この9月30日に知的財産高等裁判所が控訴審判決を下す)。
 本連載は弁理士の土生哲也氏が,(1)ソフトウエア特許の定義と基本的な考え方,(2)ソフトウエア特許をめぐる現状の課題と今後の方向性,(3)ソフトウエア特許に関する実務上の留意点と活用方法,を解説する。全3回の連載で,今回はその第1回である。
 なお,本連載は2005年9月1日に実施された「最新ソフトウエア特許セミナー」(主催:日本IT特許組合)における同氏の講演と,後日のインタビュー取材を基に日経BP知財Awareness編集部がまとめたものである。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

「ソフトウエア特許」とは何か
 ソフトウエア特許は一般に,「その発明の実施にソフトウエア,つまりコンピュータの動作に関するプログラムを必要とするもの」に対して付与される権利である。
 発明の分野によって,(1)プログラムや記録媒体に関する狭義のソフトウエア特許,(2)業務系システムや電子商取引などの事業に関連したいわゆる「システム特許」,「ビジネスモデル特許」,の2種類に区分できる。(2)は,「装置」,「システム」,「方法」に関する発明に対して認められる。
弁理士 土生哲也氏
土生哲也氏のプロフィール
弁理士。1989年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行,主としてベンチャーファイナンスに携わった後,2000年弁理士登録,2001年に独立して土生特許事務所を開業。現在は,「企業価値を向上させる知的財産業務」をコンセプトに,ITベンチャーや金融機関を対象に,特許出願・商標登録出願から知財戦略の立案・ディスクローズまで幅広い業務を手掛けている。主な著書に「知的財産の分析手法」(中央経済社)など。
事務所URL http://www.ipv.jp/

コンピュータ・プログラムを保護するソフトウエア特許と著作権
 ソフトウエア特許の中でも,数年前には「ビジネスモデル特許」に関心が集中した感があるが,最近はコンピュータ・プログラムにも注目が集まっている。国内外を問わず,ITの普及に加えて大規模な企業間の侵害訴訟なども現れており,一般消費者の関心も高まってきた。
 コンピュータ・プログラムを保護する知財権としては,現在,著作権と特許が主な手段となっている。特許権はアイデアやアルゴリズムといった動作の仕組みを保護し,著作権はソース・コードやオブジェクト・コードなどの表現を保護することが原則である。これらの権利関係と保護状況は以下のとおりである(図1)。

図1:コンピュータ・プログラムとソフトウエア特許

図1:コンピュータ・プログラムとソフトウエア特許

※ソフトウエアAには特許の対象であるアルゴリズムが含まれることを前提とする。
出所:土生哲也氏による作成。

「ソフトウエア特許を出願する際はその特性に留意すべきだ」
 ソフトウエア特許が成立するための前提となる条件,つまり発明性を認められる条件とは,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現されていること」である。例えばある計算用のソフトウエアを想定してみると,そのソフトウエアの発明成立性は,ハードウエアにおける動作の処理方法について認められる可能性があるが,そこに含まれる計算式そのものを対象にすることは,認められない。つまり,コンピュータ内の中央演算ユニット(CPU)などの演算装置,メモリなどの記憶・制御装置,プリンタなどの出力装置,ハード・ディスクなど,これら装置間における動作の関係を明確に定義することが求められる。

ソフトウエア特許の「発明性」はどこにあるのか
 ソフトウエア特許の出願を検討する企業は,その性質や定義を理解することに加え,自社の知財戦略との関連性から出願すべきか否かを見極める必要がある。
 第1に,特許出願の対象は,実現手段のポイントを明確に定義できるものであることが前提になる。どんなに優れたソフトウエアであっても,細かなノウハウの塊であって,工夫したポイントを明確に定義できないような場合は,出願対象を特定することができない。第2に,製品をリリースした場合に,簡単に「種明かし」をされて模倣されてしまう可能性について考慮しなくてはならない。そのような可能性がある発明の場合は,早期に出願すべきである。製品をリリースしても模倣される可能性が低いと思われる場合は,出願公開が種明かしの機会となり,結果的に出願が拒絶されると最悪の事態となってしまう。そのため,特許を出願せずノウハウとして秘匿する方法がある。この際は,営業秘密としての保護要件を満たすように,秘密管理を実施することに留意しなくてはならない。 (次回へ続く


 

求む、即戦力!特許翻訳者募集

サイト内検索

広告欄

CIPO
CIPO
【特別座談会】 特別座談会
環境技術移転に有効な「WIPO-Green」が始動
〜このままでは日本企業は勝ち残れない

知財ナビ

知財パーソン 知財パーソンの履歴書
知的財産管理技能士から,
知財人材の様々な人物像に迫る


佐原雅史氏(株式会社ブライナ 代表) 知財で働く
第20回
「特許業界への憧れと転職」


米国知財レター

前川有希子の米国特許Insight

永澤亜希子のパリ発・フランス知財戦略
<過去の連載>
シリーズ:新規事業開拓と知的財産

藤森涼恵の知財show me the money

日高賢治の中国知財最前線

柴田英寿のアントレプレナーシップ論 オープンスクール



日経BP社 TechnoAssociates, Inc.