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松下電器産業IT教育研究所,
知財検定に対応したeラーニング・システムを開発

同社社員による大規模な実証実験を敢行
[2005/01/13]

 松下電器産業IT教育研究所は,知的財産検定に対応したeラーニング・システムを2004年から開発している。現在,診断ツールの体験版をインターネット上で一般公開する一方,松下電器産業グループの社員による大規模な実証実験を実施している。開発に際して知的財産検定を主催する中間法人・知的財産教育協会が同検定の模擬問題を提供しており,IT教育研究所によると「独自開発のeラーニング・システムは社員教育の有効なツールであり,そこに実践的な模擬問題を載せたことでより効果的な知財教育が可能になる」という。同研究所の所長である今中 武氏に,eラーニング・システムの可能性と知的財産検定について聞いた。
(聞き手は日経BP知財Awareness編集部)

グループ内における社員教育の概要とeラーニングの位置づけはどのようなものか。
 松下電器産業グループでは,社員教育を,(1)新規入社者の導入教育,(2)開発・製造・販売の各専門分野による全社研修,(3)経営幹部を中心とするマネジメント研修,の3段階で実施している。これに加えて,各事業ドメインがそれぞれに必要な能力開発と人材育成を計画的に実施している。
 これらの社員教育プログラムの一部では,IT教育研究所が開発した「eWBLCC(e-Web Based Learning System with Creative Collaboration)」というシステムが利用されている。「eWBLCC」はネットワークを通じて,学習者間のコミュニケーションと効果的な学習方法を支援するプラットフォームである。利用を通じてIT技術を活用した教育ノウハウを蓄積するとともに,社外における教育サービスの事業化を研究している。
知財関連ではどのような教育プログラムがあるのか。
 本社および各事業ドメインで法務・知財社員が中心となり「法務・知財教育」を実施している。主な対象者は営業・技術などの一般社員である。事例から学ぶ学習方法は効果が高いため,社内の実事例に基づく問題を作成して社員教育を実施してきた。こうした事例学習を効果的に進めるツールとして,eWBLCCを利用した「リーガルマインド診断ツール」を開発した。従来は,このツールに知財関連のコンテンツが含まれていた。
今中 武氏
今中 武氏
大阪大学大学院博士後期課程修了,松下電器産業中央研究所,本社経営企画室を経て,現在IT教育研究所において所長として勤務。工学博士。情報処理学会,電子情報通信学会,日本感性工学会会員。
知的財産検定に注目したきっかけは何か。
 知的財産検定は,複数の企業や専門家の協力を得て作成した約400件の実事例に基づいて問題発見能力と問題解決能力を測る試験問題が作成されている,と聞いた。われわれはこの点を高く評価して,eWBLCCに知的財産検定の模擬問題を搭載した「知財マインド診断ツール」を新たに開発した。15問の事例問題を解くことによって,知財に関して「どの分野に学習すべき課題があるか」を一目で解るレーダーチャートでフィードバックする仕組みである。現状では社内でこのツールを利用するとともに,一般の利用者に向けて同ツールの体験版をインターネット上で2004年11月から提供している。
 IT教育研究所では,「リーガルマインド診断ツール」について,すでに社外の教育サービスに対する提供を進めている。同様に,「知財マインド診断ツール」に関してもツールの完成度を高めて,各企業の法務・知財教育への提供を計画している。さらに,現在は,事例型ネット診断ツールで可視化された課題に対して,ネット上で学習するための新しい事例型eラーニングを開発中である。特に,診断を通じて個別課題を発見して重点課題を効果的に学習した後,検定で効果を認証する仕組みに注力している。
多数のグループ社員が実際に知的財産検定を受検して実証実験に参加したと聞く。
 IT教育研究所では,診断ツールの有効性と知的財産検定の学習効果に関する実証実験を計画した。松下電器産業グループにおいて知財社員のうち,約70名が2004年11月に実施された第3回の知的財産検定を団体受検した。より詳細に効果を検証するためにはまずは自分が受検するべきだと考え,私も2級検定を受検した。
 具体的な実験の内容は,(a)IT教育研究所を中心に2級検定の受検者に対してあらかじめ「知財マインド診断ツール」を通じて学習の課題点を抽出し,(b)検定受検後の結果と比較して効果を検証すること,である。今回の実験では,企業の知財教育における知的財産検定の有効性もあわせて検証したいと考える。
実際に知的財産検定を受検して,どのような感想を持ったか。
 私はR&D部門に在籍した経験がある。その時には自らの発明を特許出願していたので,出願実務についてはある程度の自信があった。しかし,知的財産検定の受検前に受けた「知財マインド診断ツール」において,特許の活用,意匠・商標・著作権分野に課題があることが分かり,この分野を重点的に勉強した。事前に重点課題が分っていたので,効率的に学習できた。結果として2級に認定された。
 実際の試験では,「やはり事例問題がよくできている」と感じた。事例に対する設問の選択肢が微妙に設定されており,正しく理解しているつもりでもよく考えないと間違えそうな問題がいくつかあった。
知的財産検定の有効性について,どのように評価するか。
 検定で出題される事例問題は,実際に起こった事例に基づき,教育工学インストラクショナル・デザインの手法に基づき作成されていると聞く。さらに,試験結果もIRT(項目応答理論)を用いて能力を測定できているかどうかを検証しているとのことで,この点が非常に評価できる。
 企業では,昨今,特に知的財産権の紛争リスクが増大・複雑化している。第一に,一般社員,技術社員が問題発生の早い段階から迅速に発見し,課題を正しく認識して知財・法務社員へつなぐことが重要である。それを受けた知財・法務社員は専門知識を活用し,幅広い選択肢から最適解を見つけ出して課題を解決する能力を問われている。こうした問題発見能力と問題解決能力は,企業の法務・知財教育について最重要事項の1つであり,それゆえに実事例から作成された知的財産検定はこれらの能力育成に効果的である。


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