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知財で収益を上げることを考えるな産業界出身の知財の重鎮 丸島儀一氏に聞く(2) [2004/05/21]
「知財戦略による事業の成功」で先鞭をつけた,産業界の先駆者である丸島儀一氏に,わが国の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。丸島氏は,「突破するのは不可能」とされた米ゼロックスの複写機の特許を徹底的に調査して,闘いを挑み,キヤノンの複写機事業をグローバルな成功に導いた実績をもつ。 丸島氏は,知財を事業に活用することの重要性,そして知財で短期的に収益を上げようとすることの危険性について強調した。 (まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)
知財で収益を上げるな 米国ベンチャーの中には,「研究開発成果たる知財を売却するのが事業目的だ」という特殊な企業もある。こうした例外を除けば,多くの企業は,知財が本来の事業活動と遊離してはいけない。 そもそも「知財で収益を上げる」という考え方はおかしい。知財収益事業と,本来の事業を実行する事業部とが競争するようではダメだ。知財は事業を伸ばすためにある。知財立国を実現するには,企業が創造性豊かな研究開発と知財によって,事業を強くしていくことが基本となる。 社長が「知財で儲けろ」などと号令をかけると,知財部長は知財の売却やライセンスをあせる恐れがある。事業を強くする観点からは,他社に本来手渡すべきでない知財を,あせって手渡したりするのは本末転倒だろう。 そのためには,経営の中枢が知財の経営的意義を理解する必要がある。経営者が知財部長に「お前,頼むぞ」と丸投げしているようでは機能しない。経営の中に知財があり,事業の中に知財があり,研究開発の中に知財がある。逆に,知財部門は事業や経営を考える必要がある。知財と研究開発と事業は三位一体である。 お金の勘定だけでよいのか 現在の日本企業の知財部門を見渡したときに,心配になるのは,「出費の抑制」と「収入の増加」というお金の勘定にばかり関心が集中しているように見えることだ。ある知財部長に「出費を抑制したいならば,いっそ特許の出願件数をゼロにすればよい」と提案すると,「ゼロだと格好がつかない」などと中途半端なことを言う。収入の増加を知財部門だけに閉じた話にすると,売るべきではない知財を売ってしまうことも起きる。 ブーメラン効果で日本の業界全体が困ることも 知財をライセンスして収益を上げようという企業は,事業競争力がない企業だと言っても過言ではない。競争力がないならば,事業を継続すべきかどうかが問われる。ある事業から脱落した日本企業が,一時の金稼ぎのために外国企業に知財を売却すれば,その分野を手がける日本企業全体が,ブーメラン効果で痛めつけられることも起きかねない。知財をクロス・ライセンスした先の企業が倒産などした時に,その知財がどのように承継されているのかも問題である。 今や,業界の1位,2位の企業でなければ,事業ができないような時代だ。知財のブーメラン効果で,日本の業界全体が弱くなることを防ぐために,企業戦略と国家戦略のバランスをとるべきである。
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