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成果主義とカンパニー制は知財戦略に不向き
産業界出身の知財の重鎮 丸島儀一氏に聞く(5)
[2004/05/26]

 「知財戦略による事業の成功」で先鞭をつけた,産業界の先駆者である丸島儀一氏に,わが国の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。丸島氏は,「突破するのは不可能」とされた米ゼロックスの複写機の特許を徹底的に調査して,闘いを挑み,キヤノンの複写機事業をグローバルな成功に導いた実績をもつ。
 丸島氏は,最近ブームとなっている成果主義とカンパニー制の安易な運用に警鐘を鳴らした。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)

2〜3年で事業化できるのは改良性の特許
 独創性の高い発明が,事業化に10年以上かかるのは普通だ。決して長いというスパンではない。キヤノンでも10年以上かかって実用化された製品が,多数ある。もし10年かからないで,2〜3年で事業化できるような発明は,だいたい独創性のない,改良性のものだろう。
 一方で,独創性の高い発明は,技術が完成したらすぐ市場に投入すればよいとも限らない。例えば,キヤノンは,レーザービーム・プリンタ(LBP)事業との共食いを考慮して,技術は完成していたが,インクジェット・プリンタの事業化のタイミングを見ていたため,競合他社より遅く参入した。もし事業化を急ぎたい場合は,その案件を研究所から早く事業部へ回すのがよいだろう。

短期指向の成果主義は知財や研究開発に不向き
 問題は,最近ブームとなっている成果主義である。短期指向の成果主義で間違った人事評価をすると,人間はいい仕事をしなくなる恐れがある。知財や研究開発の仕事は,成果が出るのに時間がかかる。短期指向の成果を求め過ぎると,小さな仕事,あるいはいい結果が出そうな易しい仕事をする傾向が強まる。
 例えば,特許出願件数を何件にしようとか,件数を増やせばいいという発想になる。成果を評価する基準が件数ということになれば,頭のいいスマートな若者は,それを意識して仕事をするようになる。
 こんなことでは,本当の成果は出ないし,本当の知財立国は実現しない。人事評価は長期的視点で,その人の考え方と行動のあり方を見るぐらいでないと,本当のいい仕事につながらないだろう。

知財スタッフをカンパニーに分散させるな
 もう一つ,ブームと言えば,カンパニー制という組織形態がある。カンパニー制とともに,知財スタッフがカンパニーに分散配置されることは,決してよいことではない。これは法務やデザインなどのスタッフも同様だ。コーポレート・スタッフとしての位置付けで,カンパニーという現場をどんどん支援していくのが,良い方法だと思う。本来コーポレートに所属すべきスタッフをカンパニーの社長が手元に置きたがるのは,自分の都合だけを考えている傾向があるのではないか。
 技術というものは,複数のカンパニーに渡って共通していたり,交錯していたりする。対外的な交渉をする場合も,コーポレートの知財部門が全カンパニーの知財を掌握していれば,全社的あるいはグループ企業全体の観点から,強い立場で交渉できる。
 しかし,カンパニーに知財スタッフを分散配置している企業では,特定カンパニーに所属する知財スタッフは,そのカンパニーのもつ知財だけを持ち駒として交渉に臨むことになり勝ちだ。そのような企業では,コーポレートに残っている知財スタッフが,事業を強くする観点での交渉を十分に行えるとは考えにくい。

※  この記事は,2004年3月に早稲田大学で開催された「産業創生のための知財戦略セミナー」における丸島儀一氏の基調講演「日本の知財戦略」の講演記録をベースとして,日経BP知財Awarenessが丸島氏への追加取材を元に大幅に加筆,再構成をし,まとめたものです。

丸島氏インタビュー | 第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 |
| 第6回 | 第7回 | 第8回 | 第9回 | 第10回 |


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