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基本特許に安住すると事業化はおぼつかない
産業界出身の知財の重鎮 丸島儀一氏に聞く(7)
[2004/05/28]

 「知財戦略による事業の成功」で先鞭をつけた,産業界の先駆者である丸島儀一氏に,わが国の知財戦略に対する問題意識について尋ねた。丸島氏は,「突破するのは不可能」とされた米ゼロックスの複写機の特許を徹底的に調査して,闘いを挑み,キヤノンの複写機事業をグローバルな成功に導いた実績をもつ。
 丸島氏は,発明者が事業化にまい進する必要性,事業化を怠った場合の危険性について警告を発した。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)

特許権は正しくは独占実施権ではない
 特許については,こんな誤解がよくある。特許には,独占実施権があると思われがちだが,そうではない。正しくいうと排他独占権である。従って,特許を取ったことにより,その特許権者の承諾がないと,第三者がその発明を実施できないというのは事実だ。しかし,特許権者に独占実施権があるわけではないので,特許権者自身もそれを実施するという保証は何も与えられていない。このことが十分に理解されていない。

発明者は事業化の道を怠ると自分の発明を使えない
 技術は,連続して進化するものだ。つまり,特許を取ったということは,技術のある時点での発明に過ぎない。基本的な発明が生まれて,それが単なる発明で終わっていたのでは,産業には何の役にも立たない。基本的な発明は事業化に結びつけていかなければならない。
 発明がノーベル賞級の基本的なものであればあるほど,事業化に向けての作業は大変だ。関連技術をどんどん開発していかないと,事業化に結びつかない。ノーベル賞級の発明であったとしても,発明者が事業化の道を怠り,第三者がその先の特許を取ってしまうと,発明者が自分の発明を実施できなくなり,事業できなくなる。こんな恐れは十分にある。
 基本的な発明1件を特許出願して,広い権利の基本特許を取った場合,発明者はこれで全部カバーしていると思いがちだ。しかし,技術はどんどん進化して,実用化に向かって改良されているのに,ほかの特許を取っていないのであれば,事業化は本当にできるのかという不安が生じる。

特許の継続で事業を独占する
 企業は,基本的には独占を志向できる事業を期待する。そのためには,事業は特許で守られていなければいけない。つまり,基本発明が出たら,事業化に向かった研究開発や特許申請について,先手を打ってやっていかないと,本当の事業独占はできない。
 産学連携のスキームにおいて,大学が大学の中で,一生懸命インキュベーションを行うときに,知財上の手当てをしておくことが非常に大事になる。

※  この記事は,2004年3月に早稲田大学で開催された「産業創生のための知財戦略セミナー」における丸島儀一氏の基調講演「日本の知財戦略」の講演記録をベースとして,日経BP知財Awarenessが丸島氏への追加取材を元に大幅に加筆,再構成をし,まとめたものです。

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