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真の「知財立国」に向けて
知財戦略の本質は「協調と競争」
キヤノン顧問・丸島儀一氏インタビュー(3)
[2005/01/17]

キヤノン顧問 丸島儀一氏  2004年は知的財産に関して大きな動きが続出した。職務発明,企業間で繰り広げられた侵害訴訟,発展する知財戦略,人材育成,制度整備……。こうした動きを受けて,企業における知財経営の先駆的存在であるキヤノン顧問・丸島儀一氏に2004年の総括と2005年に向けた提言を聞いた。全7回に分けて掲載する。第3回は,企業が採るべき知財戦略のあり方とその本質,についてである。
(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)

企業間の提携は知財戦略の「王道」
 2004年は企業間の侵害訴訟に注目が集まった一方で,競合他社との包括的な提携戦略も注目を集めた。例えば,大手電気メーカーが韓国の大手電気メーカーとの間で締結した特許相互利用の包括提携などだ。最近の係争が急増する状況と照らし合わせると,斬新な手法に見えたかもしれないが,実はこのような提携は従来の知財戦略において非常にオーソドックスな手法であり,かつ「王道」である。実務的に見ても,技術と特許が複雑・複合化する中では,包括的なクロスライセンスは合理的な選択と言える。

「協調と競争」−−知財戦略の本質は変わらない
 本連載の第2回において述べたように,私は知財業務に就いていた当時,競合他社との間に生じた問題は交渉による解決を重視しており,その結果としてクロスライセンスを数多く締結してきた。もちろん開放するのは汎用的な特許であり,コア技術は守る。このとき,ライセンスの目的はライセンス料の収益ではなく事業を強くするための技術力強化にあった。
 知財とは,突き詰めれば,技術,事業と一体であることを意味する。それゆえ,知財戦略には,技術と事業を第一に尊重する姿勢が不可欠である。その上で,知財戦略の核は長期的視点に立った「協調と競争」だと私は考える。協調できる部分は協調して,技術の創造・革新,事業展開で競い合うのだ。最近,一種の「知財ブーム」の中でさまざまな経営手法,考え方が登場してきたことを受けて,こうしたスタンスを「古い考え方だ」とする向きがある。しかし,知財と知財戦略は本質的に昔と今で何も変わっていないと私は確信する。知財を保護,活用する環境が変化しただけである。

産学連携でも「協調と競争」が必要
 「協調と競争」という考え方は,企業間だけでなく産学連携にも当てはまる。企業と教育機関の間の連携には大きな可能性があるが,現状では両者がかみ合わず四苦八苦している場合も多いと聞く。
 企業ニーズの面から言えば,必要な技術あるいは開発したい技術とは,事業化が前提になって生み出されるものである。企業にとって,たとえ基礎研究であっても最終的に事業化につながらないものは重要とは言えないが,大学などはどちらかと言えば「まず研究ありき」の姿勢が強い。同様に,技術移転に関する契約などにおいても,大学側の姿勢は企業活動の実体に即していないケースがあると聞く。例えば,産学連携での技術移転契約は文部科学省が策定したガイドラインに従って締結されることが多い。そのため,ガイドライン通りに技術の独占について認めないケースが多々ある。企業側から見ると,技術を特許で十分にガードし,独占できなければ事業化のメリットを失う恐れがあるため,案件ごとにフレキシブルに対応してもらいたいという強い要望がある。
 研究者は,事業化に主眼を置いた研究を進めるとともに事業活動へ理解と関心を持って欲しい。そして企業は,基礎研究の委託や共同研究を通じて資金面で教育機関を支援する。このように両者が協力しつつ,技術開発では切磋琢磨して良い発明を生み出していくことが,産学連携の理想型である。(次回へ続く

第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | 第6回 | 第7回(最終回)


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