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真の「知財立国」に向けて 知的財産立国・日本が目指すべき目標とは キヤノン顧問・丸島儀一氏インタビュー(最終回) [2005/01/31]
2004年は知的財産に関して大きな動きが続出した。職務発明,企業間で繰り広げられた侵害訴訟,発展する知財戦略,人材育成,制度整備……。こうした動きを受けて,企業における知財経営の先駆的存在であるキヤノン顧問・丸島儀一氏に2004年の総括と2005年に向けた提言を聞いた。全7回の最終回は,真の知的財産立国はどうあるべきか,そして取り組むべき課題について,丸島氏が語った。(まとめは河井貴之=日経BP知財Awareness編集)
重要性を増す「国際標準化」 これからの日本の知的財産戦略を考える上で,私が最も重視するものは「国際標準化」である。デジタル化が進む産業構造の下で,標準化という言葉の意味は変容している。かつては平準化や大量生産といった文脈の中で考えられており,「特許権を行使できない分野」として知財とは逆方向にあった。しかし,現代では市場における優位性を確保するための要素として重視されている。 国際的な市場で技術の標準化を獲得することは,国際競争力を非常に高める。なぜならば,自分たちが開発した技術が採用されることによって,(1)その後の事業化あるいは改良時における技術的アドバンテージ,(2)再研究・開発の費用が不要だというコスト的アドバンテージ,の両面で優位に立てるからだ。権利化しておけば,莫大なロイヤルティ収入も得られる。 逆に言えば,どんなに優れた技術であっても他に標準化された技術が存在していると,その価値は無に帰してしまう,ということである。国際標準化の問題は,低いレベルの技術が基準になってしまう場合も脅威になる。こうした状況の下では,日本のような技術国は高度な競争力を発揮できず,コスト一辺倒の不利な競争に巻き込まれかねない。 「国を挙げた知的財産戦略で国際標準の獲得を」 国家戦略として知的財産を考える上で,国を挙げた国際標準の獲得を重要目標として掲げるべきだと私は思う。日本という枠組みに基づいて産,学,官が連携,協調するのである。WTO(世界貿易機関)加盟国の間ではTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)に基づいて,国際標準が優先となる。言い換えれば,国際標準以外の各国の国内標準によっては阻止されないのである。米国は新たな経済大国の台頭を念頭に置いてこうした姿勢に転換しつつあり,欧州は欧州連合(EU)の枠組みで同様の動きがある。 国際標準化について,日本企業の多くは「フォーラム(グループ)標準」に則って欧米企業と提携して,それぞれ陣営を形成して標準の獲得を競い合っているのが現状である。これを越えて,日本として勝ちに行くべき技術分野では各企業は協調し,国際標準を獲得した後に競争すればよいのである。総合科学技術会議で国家戦略として決定された重点研究開発項目について必要な国際標準化活動も,国家戦略として真剣に取り組むべきである。 人材面では,今後は標準化に従事できる専門人材を積極的に育成する必要がある。「知的財産業務に長けていて技術も分かり,事業もわかり,語学が得意でかつ長期的な視点を持った人材」となると,限られた人しかいないだろう。こうした人材の育成と確保は,各企業に任せるだけでなく,国家戦略として取り組むべきである。 真の知的財産立国を目指して この数年間における「知的財産立国」へ向けた取り組みを通じて,制度整備が進み,社会的にも知的財産を重視する風潮が強まってきた。ただ,「知的創造サイクル」から見ると「活用」に重心が置かれ,研究開発など「形成」への対策が不足しているように思う。技術の創造・革新こそが知的財産形成の根源であり,知的創造サイクルの起点である。国は科学技術振興の重点4分野として,「ライフサイエンス」,「情報通信」,「環境」,「ナノテクノロジー・材料」を挙げて24兆円を投入している。しかしながら,実務上は各分野あるいは各省庁によって縦割り的に執行されており,横断的に全体を見渡しながら日本としての研究開発を運営・監督する姿勢が必要である。国際標準化活動も含め今後の対応を強く期待したい領域である。 日本国内の市場規模は限られている。主な戦いの場はやはり海外市場である。国内企業間で勝ち負けを競っていてはいけない理由はここにある。1980年代以降,米国が採ったプロパテント政策は保護主義的な性格を持っていたが,それは自国内に巨大な市場があったからである。輸出中心の日本が同様の政策を採っても,米国のような成果を期待することは難しい。それゆえに,日本の知的財産戦略は積極的に世界に目を向けなくてはならない。知的財産に関する国内環境が整備された現在が,まさにその時である。真の知的財産立国を実現する上で,2005年は大切な年になると思う。 国際的な市場の中で日本が競争力を発揮するために何が必要か ― その答が知的財産であり,技術である。そして,国家戦略として知的財産立国を推進する意義はここに存在すると思う。 |
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