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米Microsoftが日本の外部機関との連携を進める狙い
加治佐 俊一氏(マイクロソフト業務執行役員・CTO)
[2008/01/21]

マイクロソフト(日本法人)の業務執行役員・CTO(chief technology officer:最高技術責任者)の加治佐俊一氏
マイクロソフト業務執行役員・CTO
加治佐 俊一氏
 米Microsoft Corp.(ワシントン州)は,東京工業大学と組織的な産学連携協定の締結に合意したと,2007年9月13日に発表した。Microsoftと東工大は2005年6月からマイクロソフト産学連携研究機構(IJARC)の連携研究プログラムの一環として研究者同士の連携を進めてきた。今回の東工大との組織的連携についてMicrosoftは,コンピュータ科学などの分野で連携を一層強めたり,Microsoftの色々な組織との共同研究の実施や研究者の交流などを進めたりすることにより,研究成果の早期実現を図るのが狙いという。すなわち、優れた外部組織との連携によって、将来の技術のタネを作ることを狙う。Microsoftが進める産学官連携や知的財産戦略について,マイクロソフト(日本法人)の業務執行役員・CTO(chief technology officer:最高技術責任者)の加治佐 俊一氏に聞いた。

今回の東工大との連携は何を目指すのですか。
 Microsoftが東工大との組織的連携の締結に合意したのは,「高性能計算法のデザイン」などの共同研究を東工大の教員・研究者と始めるという,具体的な目標を達成するためです。東工大学術国際情報センター教授の松岡 聡氏、同大学院情報理工学研究科計算工学専攻教授の秋山 泰氏、Microsoftの研究者の3者が高性能計算法デザインとタンパク質構造を基にした生命科学研究への応用をテーマとした共同研究を開始します。この共同研究に、マイクロソフト(日本法人)を含むMicrosoftは、専門技術や研究用ツール,研究助成資金などを提供します。
 今回の東工大との組織的連携は,2005年6月にアジア太平洋地域の基礎研究施設であるMicrosoft Research Asia(MSR Asia)とマイクロソフト(日本法人)が設立したマイクロソフト産学連携研究機構(IJARC)との連携が基盤になっています。このIJARCは,日本の大学や公的研究機関との相互交流によって,(1)先進的な高度な技術や日本市場に対応する技術の共同研究,(2)研究助成や研究者育成,などの産学官連携活動の実施を担当する組織です。このIJARCは,支援対象の研究プロジェクトを選定するアカデミックアドバイザリーコミュティ(顧問委員会)のディレクタに東京大学大学院情報学環教授の池内克史氏に就任していただき,運営しています。
 例えば2007年にも共同研究テーマの公募として,「第4回マイクロソフト産学連携研究機構Coreプロジェクト」への参加を2007年10月30日から12月5日まで公募しました。1人当たり100万〜200万円の研究費を1〜2年間支給する研究助成制度です。Microsoft Researchの研究者との綿密な連携の下で共同研究をしてもらい,日本の大学などの学術面での発展に貢献したいと考えています。
外部組織との産学官連携を推進する部署は。
 マイクロソフト(日本法人)は日本の産学官で独創的なアイデアを持つ“イノベータ”を支援する組織として「マイクロソフト イノベーション センター」をマイクロソフト調布技術センター内に2006年11月に設けました。2005年5月にMicrosoftが公表しました日本でのビジネス投資やパートナーシップ強化,イノベーション促進などをうたったMicrosoft の「Plan-J」に基づき,イノベーション創出を具体化するために設けた組織です。
 センターが連携したい独創的なイノベータとは,ソフトウエアやハードウエアなどのIT(情報技術研)分野での研究開発企業やシステムインテグレータなどに加えて,大学や起業家(イノベータ)個人なども対象と考えています。日本には先進的な技術や製品を持つ企業や大学,起業家が大勢います。こうしたイノベータ機関・個人と連携し,革新的な製品やサービスを世に送り出していきたいと考えています。
マイクロソフト イノベーション センターは,どんなことを始めているのですか。
 同センターは現在,5種類のプログラムを動かしています。「テクノロジー・イノベーション・プログラム」などです。マイクロソフトの技術や研究施設,ビジネスパートナーとの連携などを提供し,ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC),データマイニング,ロボット技術などの共同研究プロジェクトを進めています。
 ロボット技術を主な共同研究テーマとしているのは,日本はロボットの応用技術では世界の先頭を走る企業や大学・公的研究機関が多いロボット先進国だからです。すでにいくつかの企業と連携しています。例えば,テムザック(北九州市)やゼットエムピー(ZMP,東京都目黒区)などと連携しています。
 テムザックは受付・案内ロボットや警備ロボットを実用化しているロボットメーカーです。ゼットエムピーは,ロボット制御プログラムを効率的に開発するのを支援するモジュール群が整備されたMicrosoft の統合的な技術を利用した2足歩行ロボットを開発しています。ロボットが実社会で利用されるためには,例えば視覚センサーなどのパラレル処理などのさまざまな制御技術や周辺とのやりとりなどが必要になります。われわれはこうした一連の技術を迅速に整えるために,外部機関との産学官連携を積極的に進めています。
外部機関との連携の基となる知的財産ではどんなことを実行しているのですか。
 Microsoftが保有するIP(intellectual property:知的財産)を積極的に公開する「IPライセンス」を実施しています。MicrosoftのOS(operating system:基本ソフトウエア)やソフトウエアは当然,単独で使うものではありません。Windows以外のOSやアプリケーション,サーバやプリンタなどの製品などとの相互運用や各製品のプラットフォームへの対応など,様々な相互運用や製品との整合性などの“標準化”が不可欠です。ネットワークのプロトコルなど標準化が重要な部分は色々あります。
 このため,特許や著作権などの知的財産を公表し,その実施権ライセンスを提供しています。あるアイデアを考えた企業や個人から提案を受けると,マイクロソフト イノベーション センターの担当者が用途や条件などを調整し,IPの実施権ライセンスの契約を締結します。用途や条件などによっては,Microsoftの製品に使われているプロトコル仕様やライブラリなども提供する場合もあります。IPライセンスでは,「テクノロジIP」「コンポーネントIP」など多様な知的財産を提供する用意があります。
 こうしたIPライセンスを通して,新しいビジネスチャンスを獲得したり,新しい市場に参入したいと考えています。IPライセンスによって,イノベーションを創出し,産業振興による経済成長を図りたいと願っています。
大手企業との特許クロスライセンス契約もその一環ですか。
 大手企業とのIP相互運用や製品強化を目的として特許クロスライセンスを進めています。Microsoftは2008年1月16日に日本ビクターと特許クロスライセンス契約し,技術革新を相互に図る協力態勢を築きました。お互いのユーザーに使いやすい技術などを提供するためです。
 Microsoftはこれまでにも富士ゼロックス,ケンウッド,京セラミタ,NEC,オリンパス,セイコーエプソンなどの日本の有力企業と特許クロスライセンス契約を締結し,イノベーション創出を図っています。Microsoftが作成した特許ポートフォリオを基にした連携戦略です。われわれは,この特許ポートフォリオの“品質”に誇りを持っています。
CTOの役割は。
 将来の技術のタネを育てることです。私はマイクロソフト(日本法人)の3代目のCTOとして,当社にはない他の技術を持つ組織との連携する融合によってイノベーション創出ができないかなどを考えています。社内だけでは視野が狭くなりがちです。インキュベーションを産み出すプロデューサとして,新しい出会いによるビジネスチャンス創出を長期的な視点で考えています。

(聞き手は丸山正明=日経BP社産学連携事務局編集委員)




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