 横浜国立大学大学院教授 岡田依里氏
横浜国立大学大学院国際社会科学研究科 教授。コロンビア大学経営大学院客員研究員などを経て,1999年に横浜国立大学大学院国際社会科学研究科助教授,2003年より現職。経営学博士(神戸大学)。産業構造審議会知的財産政策部会・新成長政策部会臨時委員,独立行政法人情報処理推進機構「知的財産研究会」座長,ものづくり政策懇談会委員など。主な著書に『知財戦略経営』(日本経済新聞社,2003年),“Strengthening Innovation Competencies through Concept Oriented Intellectual Property Rights Management”(OECD Policy Conference: Intellectual Assets and Innovation: Creating Value in the Knowledge Economy, Oct. 2005)など。 |
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ここに来て,「知的財産経営」への注目が急速に高まっている。日本における「知的財産立国」の実現に向けた制度が整備されるとともに,知的財産を重視する意識の醸成が進み,知的財産立国政策の第2期がスタートする2006年は,より高い次元での知的財産の価値創造が各企業と日本経済の新たなミッションとして浮上しているからだ。
日本において知的財産経営の重要性を早期から指摘し,企業活動の分析・調査を通じ実証的にその意義を「知財戦略経営」として提唱してきた横浜国立大学・大学院教授の岡田依里氏に,(1)知的財産経営の基本となる考え方と,(2)実践においてカギとなる要素,について聞いた。
(聞き手は河井貴之=日経BP知財Awareness編集)
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知的財産経営の広まりについて,世界と日本における現状をどう見るか。 |
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岡 田 氏 |
企業価値の向上を目指し,自社の持つ経営資源の中で知的財産などの無形資産を認識し,一定の仕組みの中で活用していこうとする動きは,世界的な趨勢になっている。こうした知的財産経営の「突き詰めた」実践と包括的な概念としての「知的資産経営」へのパラダイム・シフトは,グローバル経済の進展などの影響によって加速している。
経済開発協力機構(OECD)加盟国は,「知(knowledge)」,知的資産,知的財産の有効なマネジメントのあり方や新事業の創造とそれを支える基盤整備を巡り,議論を進めている。2005年10月にイタリア・フェラーラ大学で開催された「イノベーションと知的資産に関する会議」は,こうした取り組みの1例だ(関連記事)。
これまでの日本では,「知的財産経営」を,法的権利としての知的財産権,あるいは「出願かノウハウとしての秘匿かの判断」などに関するマネジメントを指す概念として使う場合が多かった。知的財産ないし知的財産権は,法的な裏付けによって競争政策や地域クラスターの形成と結合するため,法的な側面は不可欠である。ただ,経営という観点からは,法的な側面に注目するのではなく,広く経営資源の一部と認識しマネジメント(経営)の仕組みの中で動かしていくことが重要である。
2003年に発表した私の著書,「知財戦略経営」は,企業成長の方向性,機会や阻害要因を知的財産の観点から認識した上で,「プロセス」,「顧客との関係」,「人の知」などと組み合わせ,組織全体として組織学習の仕組みの中で活用していく経営モデルを,企業活動の実際に観察した中から導き出した。最近は,より多くの企業が知的財産経営について法的側面を超えたより広い意味を持つ考え方として位置付け,実践しつつある。
具体例としては,製造業を中心に導入が進む「アクティビティ・マネジメント」は,生産プロセスなどをワーク・フロー化して課題を抽出する点に関して,見方を少し変えると,知識を知的財産あるいは知的資産に変えて動かしていく手法といえ,知的財産経営,知的資産経営につながる活動と位置付けることが可能だ。 |
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