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経営的視点を備えた「知財プロフェッショナル」育成の重要性
東京理科大学・知的財産専門職大学院
[2006/05/30]

東京理科大学 研究科長・教授 石田正泰氏
東京理科大学 研究科長・教授
石田正泰氏
東京理科大学 専攻主任・教授 石井康之氏
東京理科大学 専攻主任・教授
石井康之氏
 2005年4月に,知的財産専門職大学院として東京理科大学は知的財産戦略専攻(MIP)を総合科学技術経営研究科の中に開設,さらに,同専攻は,特に知財戦略の構築に強みを持つ「知財プロフェッショナル」の育成を目標に掲げ,知財人材育成に向けた意欲的な活動を展開してきた。具体的には,2006年4月からは日本弁理士会と共同研究をスタートさせている(関連記事)。
 このような取り組みを進める,東京理科大学の研究科長・教授の石田正泰氏と専攻主任・教授の石井康之氏に「知財プロフェッショナル」に必要な素養と,知的財産経営時代における人材育成の在り方について聞いた。
(聞き手は牧野安与=日経BP知財Awareness編集)

東京理科大MIPの特徴は何か。


 法科大学院やビジネススクールにおけるMBA(経営学修士)プログラム,MOT(技術経営)大学院などの専門職大学院は,その名が示すように「高度で専門的な職業能力を持った実務家」を養成する場である。これに対し,本学の「知的財産戦略専攻」は,MIP(master of intellectual property)と称し,「知的財産」にかかる人材を育成する専門職大学院である。その中での「知的財産戦略専攻」という名称の「戦略」に本学の特徴が表れている。知的財産を核に,法学,経営学,工学,経済学,理学の融合教育により,知財経営の戦略・総合的判断を担える「知財プロフェッショナル」を育成する。本学の指導教員は民間企業経験者・実務家,弁理士,行政,民間,法曹界などの知的財産実務に長けたスペシャリストで構成され,その経験と知識のもと,レベルの高い専門教育と実務教育を実施している。
具体的にはどのような人材育成を理想としているのか。


 まず知的財産人材の像としてどのようなものがあるか。誤解を恐れずに言えば,3つに分けることができる。
 第1は,知的財産権に関わる専門家である。弁護士,弁理士,企業の知的財産部門責任者・担当者などを指す。
 第2は,企業などの経営者,経営戦略部門,研究開発部門など,知財財産を取り込んでより大きな戦略を構築する人材である。グローバルな経営活動やIT(情報技術)の進展などの社会背景を受けて,「知的財産を扱うのは企業の知的財産部門だけ」という状態では,知的財産を生かした経営戦略などの立案という企業経営の要請に対処できない。
 第3は,「国民すべてが知財人材」という広義の概念である。知財を重視する理念・観念を広く一般化し,知財民度を高め,他人の創造を尊重する文化を作る必要がある。
 本学は,特に,第2に挙げた人材を「知財プロフェッショナル」と位置付け,その育成に焦点を当てている。実際に,職域や専門分野を問わず幅広い層の院生が学んでおり,全体の属性としては,(a)理工系学部出身者と社会科学系学部出身者の比率はほぼ同じ,(b)約70%が社会人で約30%が大学の学部卒業者など,である。社会人は,弁護士,弁理士,公認会計士,行政官,会社員など,多様な職業を持っている。
「知財プロフェッショナル」に求められる能力とは何か。


 第1に,横断的な知識・情報・経験が必要だ。従来的な「知的財産に特化した専門能力」のみならず,「知的財産を核にしつつ,技術,経営,法律,国際関係など広い領域を考慮できる複合的な能力」が重要である。
 第2に,コミュニケーション能力,マネジメント能力が要求される。「経営戦略や事業戦略の中で知的財産をどのように位置付け,経営的成果に結び付けるか」,といった大局的な観点,判断力が不可欠だ。


 本学では,技術,経営,法律,国際関係を軸として,知的財産の創造サイクルを包括的に学べるカリキュラムを構成し,複合的な視点に基づく思考力と知財を重視した経営戦略の立案・実行能力の養成を目指している。
 戦略を立案し実行する能力とは,言い換えれば,「知的財産に関連して発生する課題を発見し,実行の過程で新たに直面する課題を解決していく力」である。本学は,この点を重視し,教員側からの一方通行的な講義に陥らないように,院生自身の視点や問題意識を教員が逐次確認しつつ指導していくインタラクティブな講義形式を志向している。これを特に象徴するのが,修士課程2年での「知財プロジェクト研究」である。これは,院生が自ら具体的なテーマを設定し,各指導教員の指導を受け,さらに他の院生と協力・協働しつつ,自らの課題を分析・解決していくカリキュラムである。
日本弁理士会との共同研究を2006年にスタートした(関連記事)。研究の目的と趣旨はどのようなものか。


 「知財プロフェッショナル」には複合的な視点が欠かせない。だが,その根幹には技術や特許などの知的財産権が存在する。その点で,弁理士は知的財産の形成の基本を担う,重要な知財の専門家である。こうした認識に基づいて,この共同研究を開始した。主な目標は知財人材の新たな育成手法の開発であり,日本弁理士会が派遣する第一線の弁理士と企業での実務経験を持つMIPの教員が,同じテーマについて,それぞれの立場・観点から問題点を論じる。加えて,院生の疑問や意見を聞き,3者のディスカッションを通じて立体的な講義を実現する。


 今回の共同研究では,各回の講義をすべて録画し,後日,MIPの研究会や日本弁理士会による弁理士研修プログラムにおいて,eラーニング教材として活用する予定だ。こうした二次的な活用を含め,大きな意味での知財人材育成へフィードバックしたい。
 本学と日本弁理士会の共同研究が「知的財産立国を担うべき知財人材はどうあるべきか」といった論議を考えていく上での一助になれば幸いである。知財人材の定義,あるいは理想型は市場(マーケット)の判断に依拠する部分が大きく,同時に,本学の院生を始めとする次世代の知財人材自身が創造していくものだと思う。その意味では「日本や国際社会は,今,どのような知財人材を求めているのか」といった現状認識がまず大切だ。


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