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LSI・FPDメーカーの知財活用戦略が進化
解析サービス企業のヴァン・パートナーズが指摘
[2007/08/21]

柳舘太郎氏
ヴァン・パートナーズ社長
柳舘太郎氏
 東芝と韓国Hynix Semiconductor, Inc.のNAND型フラッシュ・メモリーに関する特許訴訟。韓国FPD業界の大同団結による特許の共有化。次世代光ディスクに関する標準化競争やパテント・プール創設。LSIやFPDなどの先端エレクトロニクス分野で,新しい形の知的財産活用が活発化している。従来は開発した技術を特許化して自社製品に活用という社内に閉じた知財活用だったが,ここへ来て特許侵害で競合メーカーを訴えたり自社特許を核に標準化活動やライセンシング戦略を展開したりするといった外部の企業を巻き込む形の知財活用を展開する企業が増えている。このような新しい形の知財活用の活発化に対し,日本のLSIメーカーはどのように対応しようとしているのか。LSI特許訴訟における対象技術の解析などを手掛け,LSIメーカーの知財戦略動向に詳しいヴァン・パートナーズ社長の柳舘太郎氏に,LSIメーカーの最新動向と同社の取り組みを聞いた。

日本で唯一の独立系LSI構造・回路解析サービス企業であるヴァン・パートナーズは,日本LSIメーカーが関わる知財訴訟などの情報が集まってくる立場にある。最近のLSIメーカーの動向について教えて欲しい。
 個別のLSIメーカーの動きに関しては顧客情報であるため,当然のことながら開示できない。しかし,一般的な傾向としては以下のことが言える。
 まず,われわれのビジネスは故障解析ビジネスと,特許侵害などを特定するための解析を含む非故障解析ビジネスに大別できるが,このうち非故障解析ビジネスの件数がここ数年急増している。具体的には,ユーザーから依頼件数が2005年度に比べて2006年度は2倍になり,さらに2007年度は4〜6月の実績で2005年度通年と同数になった。単純計算でいけば,2007年度も2005年度の4倍,すなわち2006年度の2倍に達する勢いである。このように,ここ2〜3年は倍々ゲームのように依頼件数が急増している。
 さらに,当初の大手LSIメーカーに限られていた依頼元が,最近では中堅LSIメーカーやセット・メーカーまで広がっており,製品分野も,コンピュータ関係ばかりではなく,携帯電話,AV(オーディオ・ビジュアル)機器,車載電子部品関連など多岐に渡るようになっている。このように,件数,依頼元,分野のあらゆる面で,知財関連のビジネスが大きくなっている。また業界全体としても,われわれほどではないかも知れないが,伸びていることは間違いないだろう。日本だけではなく世界的に知財関連のビジネスが拡大している。
 次に,LSIメーカーの多くで特許活用に関するトップの意識が大きく変化していることを肌で感じている。自社の特許を,製品開発や事業展開に使うだけではなく,ライセンシングや訴訟まで視野にいれつつ,戦略的に知財を活用していこうとする姿勢が顕著になってきた。特許の取得や維持に関する費用対効果にも気を配るようになっており,LSIメーカーの知財戦略が進化している様子が見受けられる。
シャープと韓国Samsung Electronics Co., Ltd.の液晶ディスプレイに関する特許訴訟など,近年は日本メーカーがアジアのメーカーを訴える知財訴訟が増えている。この傾向についてどのように見ているか。
 1つには,すでに述べたように,トップの意識を含めて日本メーカーが自社の知財を戦略的に活用していこうとする姿勢が強まったことがある。競合メーカーの製品に使われている技術の分析に力を入れるようになり,その結果として特許侵害提訴やライセンス料請求などにつながっているのだろう。
 例えば,競合他社の製品の機能や特許の明細を詳しく調べるようになった。その上で,例えば競合メーカーの製品に自社で保有している特許を使えば実現可能な機能が搭載され,その機能を実現するための代替技術を存在しないと思われる場合に,われわれに解析を依頼する。解析の結果,自社特許を使っていることを確認できれば,ライセンス料請求や特許侵害訴訟などに動く。また特許明細では,自社が構築した特許ポートフォリオに関連性が深い特許を,競合他社が保有している場合,明細を分析した上で最後にはその特許を使っているLSIなどの解析をわれわれに依頼してくる。同様にLSIを分析して,訴訟やライセンス請求を目指している。
 もう1つは,台湾や中国のメーカーの多くは,特許の蓄積がないためにクロスライセンスが成立しないことがある。この場合,日本メーカーが一方的にライセンス料を請求する形になる。請求側と請求された側の間で妥協点が見付からず,特許訴訟に至る場合がふえているのだろう。
このようなLSIメーカーの知財活動において,ヴァン・パートナーズのようなLSI回路・構造解析サービス企業の役割はどのようなものになるのか。
 LSIメーカーでは,上述のような特許侵害を調査する,さらには競合メーカーの個別要素技術レベルや技術ロードマップ動向などを探る,といった目的のために競合メーカーのLSIの回路や構造を分析するニーズを持っている。その際,技術面の理由からLSIメーカーの開発部門から解析の依頼を受ける場合もあれば,特許面の調査のために知的財産部門から依頼を受ける場合もある。さらに最近ではLSIメーカーの依頼を受けた弁理士や弁護士からわれわれに分析の依頼が持ち込まれる場合も見られる。これら各種のルートからの依頼に対し,われわれのような回路・構造解析サービス企業は,回路の解析結果やそれを基にした技術的な分析レポートなどを提供し,依頼元の技術的な要求に答えるのが仕事である。具体的には,設計ルール・配線層構成・各種膜厚・材料・加工形状などの調査,特定部分の回路構成調査,特定部分の回路動作や機能の調査,単体素子特性の調査,メモリー種類や容量などの調査,ブロック構成の概要調査,部品の構成調査などを実施する。
LSI回路・構造解析サービス企業の中でヴァン・パートナーズの特徴はどこにあるのか。
 われわれの最大の特徴は,日本で唯一のLSI回路・構造解析サービス企業として,日本LSIメーカーに対してコスト面でリーズナブルかつきめ細かいサービスを提供できる点である。回路・構造解析サービスでは,顧客によって何を調べたいかが多岐に渡り,チップ表面をはがしてみないと,その要求に合った解析方法が決まらない場合がある。このため,解析のための見積もりを提出するだけで数日かかり,綿密な打ち合わせなどによって解析方法を最適化しないと,解析期間が長くなり解析サービス費用も増えてしまう。実際われわれの事例でも,最初に顧客が要求した解析手法に対し,綿密な打ち合わせによってわれわれが必要最小限の解析に留める手法を提案したところ,顧客の要求内容を満たしながら期間や費用を半減できた場合さえあった。解析業務は手法や作業範囲を特定する段階が非常に重要であり,顧客の技術者とわれわれの担当技術者が膝を突き合わせて直接会話しないと作業内容を最適化することが難しくなる場合が少なくない。
 また回路・構造解析サービス企業は提供する情報の性格上,依頼主の情報などに関する高度な守秘性と中立性が重要になる。この点についても,われわれは回路・構造解析サービス企業として,当然整えるべき体制を高度なレベルで確立している。特定のLSIメーカーとの資本関係を持たず,高い中立性を保っている。さらに技術面でも,NTT出身者などLSI解析の経験を豊富に持つ技術者を抱えている。解析装置についても,社内リソースだけではなく,提携している東京大学VDEC(VLSI Design and Education Center)のリソースを活用でき,幅広い解析サービスを提供できる体制を整えた。
最後に今後の展開を教えて欲しい。
 知財関係のサービス提供能力を高めたい。現在もエレクトロニクス分野で高い実績と定評を持つ弁護士・弁理士の鮫島正洋氏の在籍する内田・鮫島法律事務所とアドバイザリ契約を結び,われわれの解析結果を基に,クレーム・チャートやパテント・マップの作成,さらに知財ポートフォリオや法務に関するアドバイスを提供できる体制を整えている。さらに,今後は社内で知財関係の人材を育成するなどし,技術と知財の両面からLSIメーカーをサポートできるサービス体制を整えて行きたい。具体的には特許明細内容と解析結果を組み合わせた分析レポートの提供,特許動向調査と解析結果を組み合わせた技術開発戦略アドバイス,などである。このようなサービスを通じて,日本を中心にLSIメーカーの知財戦略を国内でサポートしていくのがわれわれのミッションと考えている。



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