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経産省,「電気電子産業における営業秘密保護に関する調査」を公表(下) 退職者による営業秘密の不正使用への処罰強化に強い要望 [2006/07/31]
経済産業省(情報政策企画官付)は,電気電子産業における営業秘密保護に関する調査を2006年3月から実施し,その結果を6月に公表した。2005年11月に施行された不正競争防止法の改正後,(a)新設された処罰規定に関する適用の検討,(b)従業員との秘密保持契約の締結状況,(c)営業秘密管理に関する企業内意識と対応状況,(d)退職者処罰規定の強化や善意取得後の不正使用者に対する処罰規定の整備の必要性,などに関する実態調査が目的であり,電子情報技術産業協会(JEITA),情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ),ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA),日本記録メディア工業会(JRIA)の会員企業471社を対象に行われ,このうち132社が回答した。 退職者に対する処罰規定については産業界の要望を反映する結果に 営業秘密に関する制度整備では,退職者を対象とした更なる処罰規定の必要性を指摘する声が産業界を中心に根強い。2005年の不正競争防止法の改正に先立つ議論では,「契約慣行が日本企業において十分に根付いていない」などを理由に,退職時に結んだ秘密保持契約に関し退職前に申し込み,または請託がなかった不正使用・開示には,刑事罰の適用が見送られた経緯がある(関連記事)。 今回の調査では,「(退職前に)申し込みや請託がない場合でも,秘密保持契約の期間内は対象となる営業秘密の使用や開示行為を処罰すべき」とする意見が回答全体の72%に及び,高い水準を示した。同様に,電子メールの誤送受信などによる偶然の情報入手など不正手段を使わずに取得(善意取得)した営業秘密についても,不正使用・開示した場合は在職者・退職者を問わず処罰する規定の策定を望む企業は全体の65%になった(図1)。 図1:退職者,善意取得者による営業秘密の不正使用・開示への処罰規定について ![]() ![]() 出所:経済産業省報告書「電気電子産業における営業秘密保護について」 調査結果についてJEITAがコメント 今回の調査結果についてJEITAの法務・知的財産権総合委員会経済法規専門委員会委員長の赤松耕治氏(富士通法務・知的財産権本部)は,「営業秘密の保護は,最近は企業内のガバナンス(内部統制)や情報セキュリティ管理の観点からも重要な課題になっており,社内規程の策定やコンプライアンス(法令遵守)の意識の拡大などが進んでいる。不正競争防止法の改正を踏まえた処罰規定の適用の検討などへの関心の高さはその表れ」と総括する。 その中で秘密保持契約に関する回答結果については,「保持すべき内容を限定した秘密保持契約の締結例は当初想定したよりも,むしろ多い。」(同氏)との感想を持ちつつも,「営業秘密の重要性を考えれば,必ずしも十分ではなく,さらに営業秘密の内容限定などに改善の余地が多くある」との考えを示した。ただ,秘密管理の問題は,基本的に各企業の問題であるため,JEITAでは契約のひな形などの策定などは行わず,会員企業に独自対応に委ねている。 経済産業省は,「今後は産業界全体に営業秘密の意義と重要性への認識を喚起し,制度の仕組みや不正競争防止法の改正内容について周知化を図る。秘密保持契約については保持すべき秘密の内容の限定など締結済みの契約の見直しも含め,従業員と企業の間の契約慣行の普及を促進する」(前・商務情報政策局情報政策企画官の藤原 豊氏)とする。 不正使用・開示行為への刑事罰適用で「在職者」と「退職者」の区分は妥当か 退職者の不正行為への処罰強化について,JEITAの赤松氏は「抑止的効果も期待できるため,総論として賛成」(同氏)との見解を示す。その前提としては,「個人と企業間の秘密保持契約は,企業として営業秘密を守るための方策として有効である。その実施にあたっては,従業員の研究開発意欲の維持に配慮しつつ,企業内での営業秘密を尊重する意識の醸成とそのための仕組み作りが重要だ」と指摘する。 一方,経済産業省の藤原氏は「今回の調査を通じて電気電子産業に根強い要望があることが浮き彫りになった。この結果を元に産業界全体において業種横断的な同様の調査を実施するなどの対処が必要だと見る,さらにそうした調査の結果に応じて将来的には,「秘密保持契約に違反した場合は,在職者や退職者といった区分なく刑事罰の対象にする新たな制度改正も視野に入れる」ことを表明した。 営業秘密に関する諸外国の制度ではそもそも「在職者」や「退職者」といった犯罪主体の区分がない場合が多く,制度調和の観点からも検討の余地がある(表1)。 表1:営業秘密の不正使用・開示に対する諸外国の罰則規定 ![]() 出所:経済産業省報告書「電気電子産業における営業秘密保護について」 「海外の製造拠点や現地法人などを含む情報管理体制の整備が必要」 営業秘密の保護において日本企業が注力すべき新たな課題として藤原氏は,「日本国外だけでなく海外の製造拠点や現地法人などを含む情報管理体制の整備」を挙げる。そのためには営業秘密の漏えい被害の実態の把握が急務だと指摘する。「例えば,“国内企業からの退職者による国内での漏えい”,“国内企業の退職者による海外での漏えい”,あるいは“海外現地法人からの退職者による海外での漏えい”といった類型を想定し,被害状況を認識しなくてはならない。その上で法的措置を含む具体的対応の検討が必要だ」(同氏)。 日本国内では就業規則や情報管理規定で情報管理体制を整えている企業が増える一方,中国などの現地法人において同様の体制を構築している企業はまだ少数といわれる。中国には不正競争防止法に類似した「反不当競争法」が制定されており,営業秘密の法的保護は可能だが,日本と同様に営業秘密の要件の1つである秘密管理性が維持されていない場合は,法的に保護されない恐れがある。こうした状況を踏まえ,経済産業省では2005年10月に改訂された「営業秘密管理指針」の「海外現地法人版(仮称)」の策定などを含む対策を積極的に検討していく予定である。 |
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