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社会のG20サミットへの注目に象徴されるとおり,今日では様々な局面で新興国の存在感が増している。特に,BRICsとして並び称されるブラジル,ロシア,インド,及び中国は今後も世界の成長センターとなることが期待されており,世界から注視されている。その中でもブラジルは右肩上がりの経済成長を続けており,リーマン・ショック発生直後の2008年第4四半期においても,底堅い内需などに支えられたプラス成長(実質GDP成長率1.3%)を維持している(図1)。こうした新興国で優位に事業展開を図りたい日本企業にとっては,戦略的な知的財産活動が求められる。そんな中,日本の特許庁では,ブラジルをはじめメキシコ,アルゼンチン,ロシア,インド,インドネシアの特許庁長官や専門家を一同に集めた大規模な新興国知的財産制度シンポジウムを,12月に初めて開催する。 特許庁総務部国際課課長補佐の大熊靖夫氏に,ブラジルの知的財産制度の現状,各国の特許出願動向などについて解説してもらう。
ブラジルの知的財産制度の整備状況 新興国は知的財産法令の整備が不十分という印象を持たれる向きもあるものの,多くの新興国は基本的な知的財産法制度は備えている。ブラジルもその例外ではなく,パリ条約やPCT条約,WTO協定には加盟しており,特許,実用新案,意匠,及び商標の各産業財産権法も有している。特に,ブラジル初の特許法は1830年に制定されており,我が国における特許法の制定より50年以上も遡る。また,現在のブラジル特許法には,3年間の審査請求期間や出願から18ヶ月での出願公開,存続期間が20年であることなど,我が国と共通する部分も多く存在する。 他方において,ブラジルの特許法には我が国に存在しない制度や異なる制度も存在する。例えば,医薬品の製品や方法に関する特許の付与について,国家衛生監督庁による事前の同意を必要とするような仕組みは,我が国には存在しない。また,いわゆる特許出願の拡大された先願の地位において ,発明者や出願人が同一である場合の扱いについて,これを例外とする我が国に対して,ブラジルでは後願を排除するなど,細部には相違も散在している。 ブラジルの知的財産制度には我が国の制度と共通する部分と異なる部分が存在しており,特許出願や権利化などを行う際には,このような制度の特徴を十分に把握することが求められる。 増加する外国からの特許出願 ブラジルの特許出願は増加傾向にある。2001年と比較して2006年の出願件数は約4割増加し,特に非居住者による出願の増加率が高くなっている(図2)。このことは,外国からブラジルへの特許出願が特に増加していることを示している。 ここで,我が国からブラジルへの特許出願を見ると,出願件数は2001年の933件から2006年の1239件へ3割強増加している(図3)。しかしながら,その増加率は非居住者全体の増加率(46%)を下回っており,結果として非居住者の出願件数に占める我が国のシェアはやや減少している(6.7%→6.1%)。他方において,我が国と競合する企業を多く擁する韓国は,その出願シェアを着実に伸ばしている(1.4%→3.1%)。 新興国への特許出願に際しては,費用対効果を踏まえたグローバルな知財ポートフォリオのより戦略的な構築が求められる。出願シェアの僅かな増減が直ちに対象国における我が国のプレゼンスに影響するとは考えられないが,有望な市場を将来に渡り取りこぼさないためにも,我が国企業にはブラジル等の新興国を含めたグローバルな特許出願戦略を定常的に見直すことが望まれる。
存在感を増すブラジル産業財産庁 ブラジル産業財産庁は1970年に設立された官庁であり,2009年8月からは世界で唯一のポルトガル語による国際特許出願(PCT出願)の国際調査機関・国際予備審査機関として稼働し始めている。 また,本年9月にはアルゼンチン,チリ,コロンビア,エクアドル,パラグアイ,ペルー,ウルグアイ,及びスリナムの各国特許庁と共に特許情報等の共通化を協議する会議を開催した。そして,今後特許情報等を含むデータベースを共有するシステムを構築し,将来的には審査協力等を目指す方針を示している。さらに,ブラジル産業財産庁は,南米諸国のみならずメキシコ産業財産庁との間においても,同様にデータベースの相互利用に向けた協議を行っている旨もホームページを通じて公表している。 このように,近年のブラジル産業財産庁は国境を越えて活動の幅を広げつつあり,南米地域を中心としてそのプレゼンスを高めている。 我が国特許庁は,ブラジル産業財産庁との間で,人材交流を中心とした30年に渡る協力関係を築いてきた。これまでに,我が国特許庁は審査官をはじめ多くの職員を研修生として受け入れており,現在も商標分野の審査官が長期研修生として我が国に滞在している。 また,今年の2月と9月に開催された日伯貿易投資促進合同委員会・知的財産ワーキンググループには両庁から担当者が出席し,両庁の知的財産分野における更なる協力の可能性について協議を行った。さらに,9月にジュネーブで行われた我が国特許庁とブラジル産業財産庁の両庁長官による会談においても,実務者派遣や知財研修などの人材育成分野における協力,知財制度に関する情報や統計データ等の情報の交換,両庁の政策や管理体制についての情報を交換することなどを含む両庁の協力関係を進めることを確認した。 我が国特許庁とブラジル産業財産庁は,このような長い歴史に裏打ちされた協力関係を今後も維持,発展させると共に,両国が共に裨益するための両庁協力のあり方を定常的に見直していく。
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