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クラウド時代に合った知財権の整備が急務
[2011/02/16]

 「クラウド・コンピューティング」の拡大とともに、知的財産権の扱いで多くの問題が浮上している。2011年1月に、テレビ番組のインターネット配信サービスを提供する側に不利な最高裁判所の判決が立て続けに出た。そのほかにもインターネットを利用したサービスが現状の知的財産関連の法律では必ずしも対応できないケースが出てきている。知的財産権の最新事情に詳しい西村あさひ法律事務所弁護士の櫻井由章氏は、「インターネット技術の進化に合わせて早急にルール作りを進めるべき」と指摘する。
(聞き手は、テクノアソシエーツ 朝倉博史)


――「クラウド・コンピューティング」の拡大は、知的財産権にどのような影響を与えるのでしょうか。

 「クラウド・コンピューティング」でサービス提供する事業者側と、そのサービスを利用する利用者側の両方の視点で論点が分かれます。

――事業者側の論点として、どのようなものがありますか。

西村あさひ法律事務所 弁護士 櫻井由章氏
西村あさひ法律事務所
弁護士 櫻井由章氏

 特に注目すべき論点が二つあります。

 一つは、「著作権侵害の主体」に関するもので、「クラウド・コンピューティング」そのものではありませんが、インターネットを用いているという点で関連する裁判の最高裁判決が相次いでいます。例えば、日本のテレビ番組を海外など離れた場所でも見たいというニーズはあります。これに目をつけた事業者が、日本のテレビ番組のデジタル・データ化複製およびインターネット送信を行う親機を準備します。この親機とインターネットでデータをやり取りできる子機を使えば、利用者は離れていても日本のテレビ番組を見ることができるというわけです。しかし、こうしたサービスの提供が著作権法上の侵害にあたるとする判決が最近、最高裁判所で立て続けに出ました。2011年1月18日判決の「まねきTV事件」と、同月20日判決の「ロクラク事件」です。いずれも第二審の知財高裁による「違法性はない」とする判決を覆しています。
 「まねきTV事件」については、知財高裁が「親機と子機があらかじめ設定された1対1の関係で送信を行うに過ぎず、利用者は公衆ではない」としたのに対し、最高裁は「誰でも契約すればサービスを利用できる以上、利用者は公衆」とし、公衆送信の権利を侵害していると判断しました。「ロクラク事件」では、知財高裁が「事業者が親機を設置しているのは、サービス利用者が私的複製を容易にする環境を提供したに過ぎない」としたのに対し、最高裁は「サービス提供者は放送を受信して複製機器に対して放送番組に関する情報を入力するという、複製の実現における枢要な行為をしている」とし、事業者が複製の権利を侵害する主体であるとの判断を下しました。これらの最高裁判決は、物理的な直接の行為者以外による著作権侵害、いわゆる“間接侵害”の範囲を知財高裁よりも拡大したのではないかと考えられます。

 もう一つが、「データ消去・修正への対応」です。「クラウド・コンピューティング」のうちIaas(Infrastructure as a Service)では事業者側のサーバーに利用者のデータを保存することになります。そこで利用者が自分の著作物に関するデータを修正・消去する際にうまく保存できずに、修正等が反映できなかったり、他の利用者に送信したりすると、同一性保持権や公表権の侵害にあたる危険性が生じます。事業者側はこうした問題が起きないようなシステムの構築が求められます。

――利用者側の視点では、どのような論点がありますか。

 「営業秘密」の問題が挙げられます。たとえば「クラウド・コンピューティング」のうちIaasでは、利用者側の情報を事業者側のサーバーに保存することでコスト面などのメリットを享受できるわけですが、中には利用者が秘密にしたい情報もあります。秘密情報の漏洩に対して不正競争防止法で守られるためには、営業秘密であると認められる条件を利用者側が満たしておく必要があります。その条件のうち秘密管理性については、経済産業省が指針を出していますが、電磁的な記録による場合には、営業秘密を扱うコンピュータを外部ネットワークから遮断しておくことが重要とされています。そのため、営業秘密を保存する際には、外部ネットワークから遮断する、すなわち、インターネットを用いる「クラウド・コンピューティング」ではなく、利用者の所有するコンピュータのハードディスク等に保存することが考えられます。また、「クラウド・コンピューティング」を用いるのであれば、事業者等ではなく利用者が営業秘密の管理をコントロールしているという状態を構築するべきでしょう。

――最高裁の一連の判決で今後、日本では「クラウド・コンピューティング」を使ったサービスが制約を受けることになるのでしょうか。

 インターネットを使った様々なサービスが広がろうとしている中で、日本では知的財産権の扱いが必ずしも明確ではありません。技術の進化に現状の法体系が追いついていないのではないでしょうか。インターネット技術の進化に合わせて早急にルール作りを進めるべきだと考えます。



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