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デジタル化時代特有の知財問題として具体的にはどのようなものがあるか。 |
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荒 井 氏 |
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デジタル化の急速な進展は,ビジネスの慣行から個人の生活に至る社会の全域に多大な影響を及ぼしつつある。
例えば,先に挙げたIPマルチキャスト放送は魅力的なサービスだが,従来には存在しなかった仕組みであるため,制度面において,従来の有線放送などとの関係を整理し,新たな取り扱いの規定などを考えなくてはならない。また,デジタル・コンテンツは全般にマルチユース(1つの情報を複数の目的や場面で利用すること)が大きな利点であるが,複製(コピー)という点では権利範囲についていくつかの議論がある。現在の著作権法でいえば「私的使用複製」や「技術的保護手段」(編注:コピー・コントロールやアクセス・コントロールといった管理システム)などの考え方が関係する。こうした分野の技術開発・実用化は日進月歩で進んでおり,制度面をキャッチアップしていくだけでも大変だ。さらに,このような新しい考え方を従来の法制度の中だけで解釈したり解決したりすることは,新たな問題や摩擦生むおそれがある。それゆえ,将来の使用環境の変化を念頭に置き,新しいサービス形態や技術,それに伴う権利バランスの変化にフレキシブルに対応できる大局的な制度作りが要請されている。(関連記事)。
付け加えると,デジタル・コンテンツは複製が容易でありしかも内容の劣化がほとんどない。さらにパソコン(PC)やプリンタなどの個人向け機器の発達によって,海賊版・模倣品が容易に製造できる状況にあり,実際に被害が急増している。日本国内だけでなく海外での侵害も拡大していることから,「模倣品・海賊版拡散防止条約」のようなグローバルな協力体制の構築も欠かせない。 |
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| 問 |
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最近はコンテンツ産業が日本経済の牽引役として認識され始めた。その振興のためには,どのような施策を考えているのか。 |
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荒 井 氏 |
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コンテンツ産業に含まれる業種の多くは,従来,文化,芸術,エンターテイメントといった個別の領域で,どちらかといえば産業の傍流に位置付けられていた。しかし,米国でハリウッドを中心とする映画業界が産業界の重要な地位を占めているように,日本においても「文化や芸術とビジネスは両立しない」といった見方は過去の話になっている。
日本経済団体連合会(日本経団連)は2006年5月に「知的財産委員会」を新設し,コンテンツ産業やデジタル化の問題への取り組みを強化するという(関連記事)。日本経団連には吉本興業などが会員として参加しており,コンテンツ産業は日本経済の新たな柱になりつつある。さらに,将来のサービスのあり方やビジネス・モデルの進化を考慮すると,ハードウエア業界とソフトウエア業界といった従来の区分ではなく,両者を融合させた形での対応は不可避である。
知財政策としては,コンテンツの「ユーザー大国」,「クリエータ大国」,「ビジネス大国」を目指し,著作権制度の見直しに限定されない,幅広い領域でのミッションを掲げている。例えば,(a)映画,音楽配信,アニメーション,ゲーム・ソフトなどコンテンツ業界における契約や流通の慣行の見直し,(b)コンテンツの制作に対する投資促進などを通じた既存の業界構造の変革,(c)国,地域,民間によるコンテンツのアーカイブ化(情報を蓄積・保存すること)の促進と制度整備,などを進めていく。(a)に関しては,NPO法人のエンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク(理事長:弁護士・久保利英明氏)を中心に進行中のコンテンツの2次利用に関する契約自主基準や契約見本などの策定を推奨し,クリエータとコンテンツ事業者の双方に契約の書面化などをうながしていく。同ネットワークのようなクリエータ,事業者,法律家などの自主的な協働が増え,契約ルールやコンテンツに関する国内外制度の研究や意見交換が活発に行われることを期待している。 |
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| 問 |
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マクロ・レベルの産業政策の視点から,「高付加価値経営」や「ブランド化戦略」に改めて焦点が当てられている。知財戦略としてはどのように認識するべきか。 |
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荒 井 氏 |
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本連載の第1回で述べたように,知的財産を考える上で最も大切なことは,良いアイデアや発明を生み出すこと,あるいは芸術的な創作を尊重し,新たな次の創造へつなげていく姿勢である。その意味で,知財戦略とは決して難しいものではないし,知財自体も「高度で専門的な先端技術」などに限定的に定義すべきではない。顧客との信頼関係,品質,ネットワークなど,身近に蓄積してきた経営資源を自社の資産やブランドとして認識してアピールしたり権利化したりすることは,知財戦略の第1歩であると同時に本質だ(関連記事)。逆説的には,例えば不良製品のリコール,不法行為,企業不祥事などはブランドを傷つける深刻なリスク要因になるため,これらを防止するコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(内部統制)の促進も,広い意味では知財戦略の一環に位置付けられるだろう。
これは「日本ブランド」と「地域ブランド」の振興においても基本的な考え方である。2006年2月,農林水産省は知的財産戦略本部(本部長:農林水産副大臣)を設置した。従来の種苗法などに加え,最先端のDNA品種識別技術などを活用して農林水産物・食品の知財権を保護する一方,高い品質や安全性といったブランド効果を全面に打ち出した「攻めの農林水産業」を目指している(関連ページ)。これを受けて食品業界では財団法人食品産業センターが,各種団体による地域食品の地理的範囲や生産方法,品質などの自主的な基準の作成を促すため,地域食品ブランド表示基準認定制度を新たに整備した。
こうした新しい知財の活用場面が日本全国で続々と生まれ,そこで知的創造サイクルの新たな好循環が始動することに期待する。 |
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| 問 |
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知的財産推進計画に先立ち,「知財人材育成総合戦略2006」が策定された。知財人材の育成は,知財政策においてどのような位置付けにあるのか。 |
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荒 井 氏 |
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結局,知財を創造し,保護し,活用していくのは「人」であり,こうした人材の育成は知財立国を支える重要な柱の1本である。知財人材育成総合戦略と今回の推進計画を通じて,大きく2つの育成プランを掲げている。
第1に,弁護士,弁理士,企業の知財部門担当者など知財専門人材の育成と倍増である。理想的な知財専門人材のイメージとしては,(ア)国際的に戦える人材,(イ)先端技術を理解できる人材,(ウ)融合人材,(エ)知財競争を勝ち抜く経営人材,(オ)中小企業・地域で役立つ人材,を示した。
第2は国民1人1人を対象とするような知財の普及・啓発活動の展開である。特に,若年層に対する知財教育などにいっそう力を注ぐべきだと感じている。
2つのプランに共通する目標は,広い視野を持った人材の育成だ。知財人材とは「法律や高度な専門知識を備えた人材」を意味するではなく,先に指摘したデジタル著作権から医薬品に関する特許権に至る,新しい変化に柔軟に取り組んでいける人材であり,そうしたことが本当に「知財に目覚めていく」ためには必要だと思う。 |
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| 問 |
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最後に,第2期に入った知財立国への抱負を教えて欲しい。
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荒 井 氏 |
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国として知財戦略を実行する意義は,「イノベーションや革新の創造を促進するためのインセンティブやインフラを整えつつ,それらと公益の目標の間で適正なバランスを達成すること」にある。日本国内だけでなく世界各国との関係においても,このような意義を実現していきたい。
その過程では,可能な限り多くの人々が議論に参加し意見を交わすことが大切だ。そのための機会を設けたり問題を提起したりすることも,知的財産戦略推進事務局が果たすべき重要な役割の1つだと認識している。 |
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