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企業倒産時の知財権保護の重要性高まる(中)
破産管財人が特許を第三者に売却する可能性
[2004/05/28]

 知的財産研究所主任研究員の石川文夫氏に,「知的財産に関するライセンス契約の適切な保護」に関する2003年度の調査研究の内容について聞いた。石川氏は,企業の倒産時におけるライセンシーの適切な保護のあり方に関して,破産管財人が特許を第三者に売却した場合に起きる課題を指摘した。2004年通常国会で5月25日に成立した破産法改正は,こうした課題を解決する方策の一環と位置付けられるが,なお課題は残るという。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)

破産管財人が特許を第三者に売却する可能性あり
 現行の破産法の規定によれば,「双方未履行の双務契約(例えば,ライセンス契約の契約当事者がお互いに債権,債務関係にある場合)」においては,破産管財人は,ライセンス契約を解除する権限が認められている。
 従って,ライセンサーが破産した場合に,破産債権者への配当の最大化を目指す破産管財人が,ライセンス契約の対象特許を高額で買い取る条件を提示した第三者(新しい権利者)に売却するために,ライセンス契約を解除する可能性がある(図1)。さらに,新しい権利者(特許権譲受人)は,ライセンシーに権利行使することも可能になる。
 一方,改正破産法の規定によれば,破産者の相手方が,対象となる権利について,登記,登録その他の第三者に対抗できる要件を備えている場合には,破産管財人による解除権を適用しないとしている。

図1:ライセンサー破産時のライセンス契約の解除の仕組み
「財団法人知的財産研究所 平成15年度の調査研究に関する成果報告会」資料の「知的財産に関するライセンス契約の適切な保護の調査研究,石川文夫」より抜粋
図1:ライセンサー破産時のライセンス契約の解除の仕組み

第三者対抗要件制度は活用が難しい
 現在,ライセンシーが第三者に対抗するための制度として,特許権の通常実施権(他人の特許発明を利用することができる権利)の設定登録制度という制度がある。改正破産法の施行により,問題は解決しつつあるが,現状の企業実務においては課題が残る。例えば,特許権の登録件数が数十万件(2002年は約12万件)あるのに対して,特許権の通常実施権の設定登録制度の利用件数は桁違いに少ない(2002年は169件)のが現状である。
 こうした通常実施権の設定登録制度がほとんど利用されていないのは,次のような理由がある。
(1) 登録費用は1件につき1万5,000円と高く,多数のライセンスを保有する企業にとって負担が大きい。
(2) ライセンサーには登録協力義務がなく,ライセンシーだけでは登録できない。
(3) 登録に際して原則として対価の登録を要求されているが,対価に関する情報は公開したくない企業が多い。
(4) ライセンス契約が存在していること自体,秘密にしておきたい場合がある。
(5) 特許番号ではなく,技術分野によって包括的に対象となる知的財産が特定されているようなライセンス契約では,登録制度を利用できない。
 このようなライセンス契約は,クロス・ライセンス契約や,それが広く利用されるエレクトロニクス業界では少なくない。


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