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企業倒産時の知財権保護の重要性高まる(下)
特許権譲受人がライセンシーを提訴する恐れ
[2004/05/31]

 知的財産研究所主任研究員の石川文夫氏に,「知的財産に関するライセンス契約の適切な保護」に関する2003年度の調査研究の内容について聞いた。石川氏は,企業の倒産時におけるライセンシーの適切な保護のあり方に関しての問題点を指摘し,利害関係者間でバランスの取れた制度の構築することの重要性を訴えた。2004年通常国会で5月25日に成立した破産法改正はこうした制度構築の一環と位置付けられるが,ライセンシーの保護についてはさらなる取り組みが提起されているという。
(まとめは村中敏彦=日経BP知財Awareness編集委員)

ライセンシーが提訴され事業断念に至る恐れも
 5月25日に成立した破産法改正の施行により,ライセンサーの破産時に,ライセンシーが新しい権利者に対抗することが可能になったが,依然としてライセンシーにとっては,次のように,新しい権利者(特許権譲受人)に訴えられ,事業継続の断念を余儀なくされるような事態が起きる恐れは残っている。
(1) ライセンシーは,ライセンサーからある特許権のライセンスを受け,特許発明を用いた製品の製造・販売事業を行っていたところ,ライセンス契約期間の途中で,ライセンサーが倒産し破産を申し立てた。
(2) 破産管財人は,ライセンシーに契約解除を通知し,その特許を高額にて買い取る第三者(特許権譲受人)に売却した。
(3) 特許権譲受人は,ライセンシーを被告として,特許発明を用いた製品の製造・販売の差し止めを請求し提訴した。
(4) ライセンシーは,その製品の既存の販売先が事態の早期解決を希望したため,その事業の拡大が期待できないような条件で,特許権譲受人と和解に応じざるを得なかった。
(5) 特許権譲受人が特許発明を用いた製品の製造・販売事業を拡大したのに対して,厳しい和解条件をのまされたライセンシーは事業競争力を失い,特許権譲受人に設備などの事業資産を安価に売却することを余儀なくされた。

 現在は,こうした事例はまだ表面化していないが,これは破産管財人が,対象特許の売却を検討する際に,まずはライセンシーに打診するため,第三者(特許権譲受人)が登場するに至らないためであると推察される。しかし,今後は事業再編などの活動が活発化することで,高額にて特許を買い取る第三者(特許権譲受人)が現れる可能性は高まりつつある。

ライセンシーを保護する4つの方策案
 そこで,改正破産法だけでは不十分な点を踏まえ,ライセンシー保護の方策案として,大別して(1)登録制度方式,(2)法定実施権方式,(3)破産法方式,(4)契約などによる保護方式,の4案が提起されている。
(1) 登録制度方式とは,登録手数料の値下げや開示事項の削減などにより現行登録制度を改良すること,あるいは簡易な登録制度を創設することである。
(2) 法定実施権方式とは,権利譲渡時または改正破産法の解除時に適用されるような,ライセンシーを保護する法定実施権制度を創設することである。
(3) 破産法方式とは,改正破産法に関して,ライセンシーを保護するための特例を創設したり,ライセンシー保護に通じるような判例を蓄積したりすることである。
(4) 契約などによる保護方式とは,「契約が書面化されている」,「公正証書にされている」,「確定日付が付与されている」,「契約をもとにライセンスが実施されている」など一定の条件のもとや,「契約書の預託制度」を創設することなどにより,ライセンシーを保護する方策案である。

「ライセンシー側の影響を優先考慮すべき」
 石川氏は,私見で「ライセンシー」と「知的財産権の譲受人たる第三者」と「破産債権者」の保護について,バランスが取れるような制度を構築すべきであるとしながらも,「契約解除に伴ってライセンシー側が受ける影響を優先に考慮すべきではないか」と,今後の制度設計に対して問題提起をしている。

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