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「一太郎」特許侵害訴訟,松下が勝訴も今後に課題 ジャストシステムは東京高裁へ控訴 [2005/02/22]
ジャストシステムが製造・販売するワープロ・ソフト「一太郎」と画像処理ソフト「花子」に対して松下電器産業が特許侵害を理由に起こした訴訟で,2005年2月1日に東京地方裁判所(高部眞規子裁判長)は侵害の事実を認め,製造・販売を禁止し,製品の廃棄を命じる判決を下した。ジャストシステム側は同8日に東京高裁へ控訴しており,確定判決が下るまで同製品の販売・製造に影響はなく,同10日には問題となった機能を搭載した「一太郎2005」,「花子2005」が当初の予定通り発売された。 今回の判決結果は,あくまで日本の特許法に基づく2社間の係争に対する判断であるため,海外で発売されているソフトウェアあるいは他社製品はこの判決の影響を受けない。さらに,確定判決ではないため,直接的な影響が各方面へすぐに及ぶとは考えにくいが,一部でソフトウェアに関する特許のあり方に疑問を投げかけるものになった。 「アイコンが特許」は誤解 今回の訴訟について,「アイコン特許事件」などと表現している報道が目につくが,正確には,アイコン自体に特許が認められているわけではない。争点になった特許(第2803236号)は,以下の3つの請求項目から成り立つ「情報処理装置」である。
つまり,この特許は,「複数のアイコンを用いた情報処理装置と方法」について権利を認められている。「一太郎」と「花子」のヘルプ機能を示すマークが,「ボタン」あるいは「アイコン」かについて争われたのは,この範囲請求項に含まれる構成要件としてのアイコンに該当するか否か,ということである。この点について判決文には,「……『アイコン』という概念自体が公知であったことを前提にしても,キーボードのキーに関する引用例発明に対して,さらに『アイコン』という概念を導入し,これらを組み合わせて本件第1発明に想到することは,本件特許出願当時の当業者にとって容易であったとまでは認められない……」という表現があり,特許としての新規性はアイコンを組み合わせた表示方法,そしてその処理装置に認められていることが分かる。なお,この1文から分かるように,ジャストシステムが主張した特許自体の無効については認められなかった。 同じ特許をめぐっては,松下電器産業はジャストシステムが製造・販売する「ジャストホーム2家計簿パック」に対して侵害訴訟を2003年に起こした。裁判は,「一太郎」,「花子」訴訟と同じ高部裁判長が担当しており,2004年8月31日に松下電器の訴えを棄却する判決を下した(平成15年(ワ)18830等特許権民事訴訟事件)。裁判では「?」だけのマークが争点となり,「“?”マークだけではアイコンとして認められない」と判断された。これに対して,今回争点となった「一太郎」と「花子」のヘルプ機能を示すマークには,「?」に加えてマウスのイラストが入っており,その結果,「?+マウスのイラスト」は「アイコン」であり範囲請求項に抵触するとの判断が下されたのである。 「知財の世界ではよくあること」では済まされない 松下電器産業の訴えの内容は特許法に基づく「特許権侵害差止請求」であり-,裁判所は請求に基づき侵害の差し止め,具体的には製造・販売を禁ずる判決を下した。ただし,即刻命令の執行を命じる「仮執行宣言」を出すことは妥当ではないとしており,裁判所の配慮が伺える判決になっている。加えて,訴訟について「ライセンス交渉をめぐってこじれた結果に過ぎない」との見方もあり,和解,問題となった部分に関する修正ソフトウェアの配布,などによって早期に解決する可能性がある。 しかし,「製造・販売の禁止と廃棄」という命令がジャストシステムに与えた影響は大きく,判決翌日に同社の株価がストップ安になるなど,波紋は大きく広がった。「一太郎」,「花子」が基幹製品であることに依る部分が大きいが,主な要因としては裁判所を含め当事者による説明不足という点が指摘できる。当事者のこうした姿勢はユーザーを始めとした関係者の不安を増長する。さらに記者会見,発表などでも明確な説明がなされていない結果,冒頭で指摘した「アイコン特許」の誤解などが流布し,混乱に拍車をかけた感が強い。 今回の判決は,図らずも知財に関する社会的関心と訴訟リスクの大きさを改めて示した格好になった。「知財の世界ではよくあること」と切り捨てずに,企業は今一度,「説明責任」といった要素を含めて知財戦略のあり方を見直すべきである。同時に,消費者なども表層に惑わされないための一定の知財知識を身に付けることが必要である。 (河井貴之=日経BP知財Awareness編集)
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